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(ss)657

作品情報

作者39-247氏初出090815
題名無題

 ある晴れた日の朝。
 最近はハルヒのSOS団なるもののおかげで、少し疲れ気味の脳みそを叩き起こしながら、今日も強制ハイキングコースを上っていた。
 その途中で、見慣れたロングヘアーの女子生徒が、屈んで何かをしていた。
「あら、おはよう」
 女子生徒は委員長の朝倉だった。みると、縞模様の子猫と戯れている所だった。
「ああ、チビ猫か。かわいいな」
「にゃー」
 俺がしゃがむと、気がついた子猫はこっちにもすり寄って来た。
「あはは、人懐っこい奴だな」
「あっ、こっちこっち」
 こんどはまた朝倉の所にすりよる。なんとも可愛い。
「へえ、こんなに小さいのに、何か考えてるみたい。動くし、あったかいわ」
「そりゃ、生きてるからな。ほら、そろそろ行かないと遅刻しちまうぞ」
「そうね。バイバイ」
「にゃー」
 それから、少し早足で教室に向かった。
 何とか間に合ってたどり着くと、ハルヒが後ろの席で何故かムッとしてたわけだが。


 で、その日の帰り。
 団活なるものが終わって坂道を下っていると、今朝と同じ場所で朝倉がまたもかがんでいた。
「また、猫か?」
「うん」
 朝倉はいつもの笑顔で俺の方を見上げて来た。その足下には、今朝のチビ猫がごろんと転がっていた。
 俺もまた遊んでやろうとその場にしゃがむ。だが、なにか様子がおかしかった。
 動かない。
「なにか、変なの。触っても動かないし、鳴かない。ねえ、すりすりしないの?」
 つつきながら、声をかける朝倉。
「おい、それって」
「おっかしいなあ。さっきね、車にぽんと接触して、飛ばされたの。そのあとしばらくは、撫でて上げたら反応したんだけどなあ」
「うーん、残念だけど、死んじゃったみたいだ」
「死ん、だ? よくわからない」
「そりゃあ、まあ、あんなに元気で可愛かったから、しんじられないかも。でも、しょうがないよ。せめて、埋めてやろう」
「埋める??」
「そうさ。ちっちゃいお墓を作ってやろうぜ。時間はあるか?」
「え、うん。時間ならあるけど」
 それから、俺たちはその子猫の亡骸を、校庭の隅っこに埋めてやった。余程ショックだったのか、朝倉は終止何だか分からないような態度だった。


「ねえ、死ぬって怖いの? 悲しいの?」
 帰り道、朝倉は聞いて来た。
「もちろんさ。死んじまう側も、死ぬのを見送る側もな。死んじまったら、遊ぶ事も、学校に来る事も出来ない。ああ、ナンダ、女の子と喋る事も出来なくなるじゃないか」
 何言ってんだ,俺。
「ふーん。それで、終わり」
「ああ、終わり。ジ・エンドだ。朝倉も、ちょっと遊んだだけの猫が死んだだけで、寂しかったんだろ?」
「寂しい……これが、寂しい気持ち……」
 何言ってんだ?
「おっかしいなあ、なんで心拍がおかしいし、手が震えるんだろ。猫が動かなくなっただけなのに」
 慣れない事なのか、相当ショックなんだなあ。まあ、俺もちょっと、いや結構悲しいけど。
「ねえ、もう少し話がしたいわ」
「ああ、いいよ。こんなときは、いろいろ喋ってスッキリしよう。それもまた、弔いになるかも」
「弔い……」


 それから数週間。
 あの帰りに某喫茶店で朝倉と喋っている所を谷口に見られ、でもって言いふらされ、なぜか古泉が過労死寸前になったりした。ハルヒはあいかわらず後ろの席で俺の事をつっついて来るわけだが。
 そういえば、最近長門の家で、とても電波な事を聞かされたってのもある。
 で、これまたいつものようにグダグダと団活をして帰ろうとすると、靴しか入っていない下駄箱に、手紙が入っているのを見つけた。
 おおお、これはまたもしかして、ラブレタ―か?
 いやいや、俺がそんなにモテるわけがない。
 何か怪しい、と思いつつも、手紙に指定された場所、イコール教室に向かったわけだ。扉を開け、俺はそこにいた人物にかなり意表をつかれた。
 そして、やって後悔するか否かなんて話をされ、そして上は頭がカタイから現状を打開するとかなんて事を言って来た。
「だから、貴方を殺して、涼宮ハルヒの出方を見る」
 突然、ごっついナイフを構えて襲って来た。俺はなんとかそれを避けたが、マジヤバい。
「死ぬのは怖い? あたしには、有期生命体の死の概念がよくわからないの」
 こいつは、長門と同類、いや同類というのは危険な存在だったのか!
 いや……しかし。
「本当に、分からないのか?」
「うん」
「……猫」
「ねこ?」
「ああ、猫だ」
「ねこ……あ、あれれっ?」
 からん。
 ナイフが落ち、朝倉の目から泪が溢れ出して来た。
「あたし、『死』を知ってた」
 そこに、メガネをかけた小さな女子生徒の姿が現れた。長門だ。
「TFEI朝倉涼子の暴走を確認。凍結を申請した」
「ま、待って、長門さん。今、とても大切な事を理解した気がしたの!」
「我々の任務は、涼宮ハルヒの観察。貴方の行為は、それを大きく逸脱した」
「ま、まっ――――」
 
 気がつくと、俺は血まみれの長門を抱きかかえていた。
 そうだ、朝倉に殺されかけた所を、こんなになって救ってくれたんだ。

以下、本編に続く。

Last modified:2018/01/15 08:36:06
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References:[新作収録ページ(一覧その7)] [作品集]