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(ss)090

作品情報

作者2-805氏初出060809
題名朝倉さんとMMR 

「朝倉」
 帰りのホームルームが終わるなり、キョンくんが声をかけてきた。
「今日鶴屋さんが南米のめがっさ珍しい食虫果物ってのをSOS団におすそわけしてくれるらしいんだが、
おまえもどうだ?」
「えっと、ごめんね、放課後は用事があるの」
「そうか。じゃあ朝倉の分は長門に持たせるから、家で食ってくれ」
「うん。ありがと」
 キョンくんが部室に向かい、教室にはわたしひとり。
 ほんとは一緒に南米のめがっさ珍しい食虫果物っていうのを食べたかったんだけど、今日は悩ましい懸案事項がある。
 わたしは鞄にしまっていた手紙を取り出した。
 朝、靴箱に入っていた差出人の名前も無い無地の封筒の中に入っていたそれには、
今日の放課後体育館の裏に来て欲しいとだけ書いてあった。
 なんだか前に、同じようなことを自分でしたことがある気がするけど。
 これってやっぱり、ラブレターの一種なのかしら。
 普通そうよね。手紙で呼び出しなんて、ラブレターか果し合いの申し込み意外に考えられない。
 前にキョンくんに出したのは、一応果し合いの挑戦状だったんだけど、うーん、やっぱり女の子の字で書いてあったら勘違いするかな。
キョンくんには悪いことしたかも。トラウマにならなきゃいいけど。
 まあいいわ。とにかくこの手紙にどう対処するかが今の重要課題なんだから。
 いっておくけど、わたしに誰かとつきあうつもりは毛頭ない。だってわたしには長門さん(はぁと)っていう大事なパートナーがいるんだもの。
 でも……せっかくこうして手紙まで出してくれてる人を無碍にするのも、ちょっと気が引けるのよね。いちおう真面目な委員長って立場だし。
 なので、わたしは手紙の差出人と会うだけあってみる事にした。

 指定された時間に体育館の裏にいったら、あれ? おかしいな、誰もいない。
 なんだろう。間違えたのかな? わたしは手紙の内容をもう一度確認して、日付も時間も場所もあっていることを確認して、
もしかしていたずら? と首をかしげたところで、
「――!」
 頭上から降ってきたそれをまともに食らって、わたしは押しつぶされるように膝を突いた。
「っ……なにこれ、ネット!?」
 金属製らしい網に潰されて、まともに身動きが取れない。何事かわからないけど、少なくとも告白だとかそんな甘い話じゃないみたいね。
 わたしはネットの分子結合情報を改竄しようとして――驚愕した。
 物質の情報が高度に暗号化されている。なんの金属なのかもクラックしないと分からない。
 ありえない。少なくとも、地球に自然に存在している分子結合ではない。
 わたしは急いで情報の解析を試みる。ぐずぐず驚いている暇は無い。
 相手は間違いなくこちらの正体を知っていて、ピンポイントで狙い撃ちしてきてるんだから。
「よし! 宇宙人の捕獲に成功したぞ!」
 その声にはっと顔を上げる。
 茂みの中から出てきたのは、
     ,ィ, (fー--─‐- 、、
.    ,イ/〃        ヾ= 、
   N {                \
  ト.l ヽ               l
 、ゝ丶         ,..ィ从    |
  \`.、_    _,. _彡'ノリ__,.ゝ、  |
   `ゞf‐>n;ハ二r^ァnj< y=レヽ
.    |fjl、 ` ̄リj^ヾ)  ̄´ ノ レ リ
    ヾl.`ー- べl,- ` ー-‐'  ,ン
      l     r─‐-、   /:|
       ト、  `二¨´  ,.イ |
     _亅::ヽ、    ./ i :ト、
  -‐''「 F′::  `:ー '´  ,.'  フ >ー、
    ト、ヾ;、..__     , '_,./ /l
   ヽl \\‐二ニ二三/ / /


 一見ただの人間にしか見えないけど……油断できないわ。
 機関に敵対する組織が動いているって話も聞いてるし、そいつらが広域帯宇宙存在と結託してる可能性もある。
 こんなふざけた罠を用意できるのも、そういった連中しか思いつかないしね。
 その男に続いて、仲間らしい連中がぞろぞろと姿を見せた。
 はいつくばっているわたしを見下ろして、なぜか戸惑っているようにも見える。
「おいキバヤシ、これ……宇宙人なのか?」
「どう見てもただの女子高生ですけど」
 ……外見に騙されてくれるってのはありがたいわね。
 そうして油断してなさい、すぐに脱出して八つ裂きにしてあげるから。
  ヽ、.三 ミニ、_ ___ _,. ‐'´//-─=====-、ヾ       /ヽ
        ,.‐'´ `''‐- 、._ヽ   /.i ∠,. -─;==:- 、ゝ‐;----// ヾ.、
       [ |、!  /' ̄r'bゝ}二. {`´ '´__ (_Y_),. |.r-'‐┬‐l l⌒ | }
        ゙l |`} ..:ヽ--゙‐´リ ̄ヽd、 ''''   ̄ ̄  |l   !ニ! !⌒ //
.         i.! l .:::::     ソ;;:..  ヽ、._     _,ノ'     ゞ)ノ./
         ` ー==--‐'´(__,.   ..、  ̄ ̄ ̄      i/‐'/
          i       .:::ト、  ̄ ´            l、_/::|
          !                           |:    |
             ヽ     ー‐==:ニニニ⊃          !::   ト、
俺たちはとんでもない思い違いをしていたようだ。これを見てみろ。
まずエイリアンという言葉を漢字であらわす。
『江委里庵』
このうち江と里はノイズだから消去する。
すると残った文字は委と庵。
庵というのは倉に通じる。
こうして出来上がるのは、委員長の朝倉。
つまり、エイリアンとは朝倉涼子のことだったんだよ!

         ナ ゝ   ナ ゝ /    十_"    ー;=‐         |! |!
          cト    cト /^、_ノ  | 、.__ つ  (.__    ̄ ̄ ̄ ̄   ・ ・
ミミ:::;,!      u       `゙"~´   ヾ彡::l/VvVw、 ,yvヾNヽ  ゞヾ  ,. ,. ,. 、、ヾゝヽr=ヾ
ミ::::;/   ゙̄`ー-.、     u  ;,,;   j   ヾk'! ' l / 'レ ^ヽヘ\   ,r゙ゞ゙-"、ノ / l! !ヽ 、、 |
ミ/    J   ゙`ー、   " ;, ;;; ,;; ゙  u ヾi    ,,./ , ,、ヾヾ   | '-- 、..,,ヽ  j  ! | Nヾ|
'"       _,,.. -─ゝ.、   ;, " ;;   _,,..._ゞイ__//〃 i.! ilヾゞヽ  | 、  .r. ヾ-、;;ノ,.:-一'"i
  j    /   ,.- 、  ヾヽ、 ;; ;; _,-<  //_,,\' "' !| :l ゙i !_,,ヽ.l `ー─--  エィ' (. 7 /
      :    ' ・丿   ̄≠Ξイ´,-、 ヽ /イ´ r. `ー-'メ ,.-´、  i     u  ヾ``ー' イ
       \_    _,,......::   ´゙i、 `¨ / i ヽ.__,,... '  u ゙l´.i・j.冫,イ゙l  / ``-、..- ノ :u l
   u      ̄ ̄  彡"   、ヾ ̄``ミ::.l  u   j  i、`ー' .i / /、._    `'y   /
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        ./__        ー7    /、 l   '゙ ヽ/  ,. '"  \`ー--- ",.::く、
       /;;;''"  ̄ ̄ ───/  ゙  ,::'  \ヾニ==='"/ `- 、   ゙ー┬ '´ / \..,,__
、      .i:⌒`─-、_,....    l   /     `ー┬一'      ヽ    :l  /  , ' `ソヽ
ヾヽ     l      `  `ヽ、 l  ./  ヽ      l         )  ,; /   ,'    '^i


 ……。
 はっ。いけない、あまりのバカバカしさにあしゃくらさんになってしまっていたわ。
 落ち着いて。まさかこの人たち、ただのバカなんじゃないでしょうね。
 とても背後に組織だのなんだのを抱えているようには見えないわ。
 でもこの不可思議なネットのこともあるし……
「俺の作った宇宙人捕獲ネットは完璧のようだな」
 ……。
 まさかこの男も涼宮ハルヒに選ばれた超能力者?
 っていうか、もう、どうでもよくなってきたわ。
 とりあえずさっさと脱出しないと……
「そうか、これが宇宙人なのか……まるで本物の女子高生みたいだぜ」
「どこまで女子高生そっくりなのか調べてみないといけませんね」
「よし、まずスカートをめくってみよう」
 はぁっ!?
 ちょ、ちょっとあなたたち何してんのよ!?
 ちょ、ま、ちょ、ま、ちょ、ま、なにスカートつまんでん、ストップ! ロープ! ロープ! ってこれネットじゃないのよ!
「お、白」
 ぎゃああああああああ!
「しかもなんだこのふとももは! 女子高生っぽい生々しいむっちりふともも! けしからん! 非常にけしからん!」
「キバヤシさん、キャラが変わってますよ。あと鼻血でてます」
 ううう……しくしくしく。
 もうお嫁にいけない……長門さんのお嫁さんになれなくなっちゃった……。
「よし、次はおっぱいの確認だ」
 ひいいいいいいいいい!?
 ちょっと、それはさすがに犯罪でしょお!
 いくら宇宙人だからって、やっていいことと悪いことがあるの分からないの!?
 あわわわわ、せっ、セーラーの裾がまくられるっ、ひ、必死でブロック! ブロック! ブラのはしが見えるっ!


「おまちなさい!」
「なに!?」
 凛とした声。あたしも男たちもいっせいにそちらを向いた。
 体育館の上に、夕日をバックにすらりと立つ細身の影。
 あれは――
「喜緑さん!?」
「神聖なる学び舎で不埒な悪行三昧、たとえレジデントオブサンが許しても、この生徒会書記が許しません! とう!」
 飛んだ――!
 喜緑さんは空中で一回転、大きく広げた両の手にはごっついトンファー!
 そのトンファーで一体どんな技を!?
「トンファーキーーーーーック!」ドゴォ!!!「おぶぅ!」
 蹴ったああああああああああああ!?
「トンファービーム!」
 目からビーム!?
「トンファータックル!」
 てつやまなんとか!?
「トンファーおきっぱなしブレーンバスター!」
 ジャーマン!?
「「「ぐわあああああああああああああああああああ!!!!」」」

「くっ、今日のところは撤退だ! だが! 俺たちは!」
  、ー'´         \                /''⌒ヽ-─‐- 、
  >       ,       !               ゝ ,、.___,  \
   ≧  , ,ィ/ハヽ\   |              「 ./        \  |
   .1 イ/./ ! lvヾ,.ゞ、 !               |./        ヽ |
   _レ「゙f.:jヽ ーT'f.:j'7`h              r|´゙>n-、ヽ-rj='^vヽ
  {t|!v ̄" }  ` ̄  !リ              :|r|  ー "j `ー ′ h゙リ
  ヾl   ヾ_    /'               ヾ!   ヾ   v イ‐'
    ト  ヾー-' ` /.|                 ト.、  ー―  , ' |
    | :\    /,' ト、_     ∧∧∧       ⊥:`ヽ. __ / ,' |
 ,、.._ノ ::  `ー '   /,.イ   <    >   / ̄\ ::       , '/ ̄\
ヘ<  _::   _,. イ/ |     < な あ >
                 < い き >   イ   , ,ィ ハ i 、 .   |
 /   , ,ィ ハ i、 、     ! < ! ら >   .| ,ィ/l/ l/ uハlヽトiヽ. |
 /イ  ,ィ/l/ |/ リuヽlヽト、 | <  め >   .|/゙>r;ヘ '-‐ァr;j<`K
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 ……。
 …………。
「た、助かったわ喜緑さん」
 喜緑さんにネットをどかしてもらって、わたしはようやく復活した。
「いえ。お友達じゃないですか」
 その笑顔がちょっぴり怖いんだけどね。
 長門さんは無表情なりに感情が読めるけど、あなたは絶対に内面を外に出したりしないもの。
 なんて、怖くて口には出せないんだけど。
「それじゃあわたしはまだ、生徒会の仕事が残っていますので」
 にこやかに立ち去る喜緑さんの背中を見送って、わたしはとぼとぼと自宅のマンションへ帰ることにした。
 なにやってるんだろう、わたし。ちょっとは期待してたんだけどな……。

 その夜。
「めがっさ果物」
 長門さんがビニール袋から取り出したそれは、なんとも形容しがたい凄まじい形で。さすが食虫果物。
「これ……食べれるの?」
「めがっさおいしい」
 うわ。本当に食べてる。
 じゃ、じゃあとりあえず一口だけ……あ、おいしい。
「涼宮ハルヒは恐れなく食べていた。朝比奈みくるの反応は面白かった。彼はかなり迷った末食べていた」
「うんうん」
 長門さんの今日のSOS団の活動を楽しく聞きながら、へんてこな果実をほうばる。
 長門さん、幸せそう。高校に入学するまでは、ずっと部屋に一人っきりだったのに。
 こういう長門さんを見ていると、わたしも幸せな気分になってくるわ。
「今度は部室に来て」
「え?」
 幸せに浸っていると、長門さんがふいにそんなことを言った。
「あなたも一緒の方が楽しい」
 言った後、微妙に視線を揺らした。照れてるのかもしれない。
 わたしはくすりと笑って、力強く頷いた。

Last modified:2007/01/06 00:29:34
Keyword(s):[雪村]
References:[旧作一覧その1]