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(ss)006

作品情報

作者1-263氏初出060517
題名無題

それから、ひとしきりSOS団のレゾンデートルとやらと切々と説いたハルヒは、
委員長だから、と一方的に朝倉を書記として任命した。
歩く突然変異、涼宮ハルヒにしては解りやすいと言うか、どこか安直な理由である。
古泉がぼそっと、
「書記って何をするんでしょうね」
俺が知るか。
そして、長門が本を閉じる合図で、今日の会合はお開きとなった。
用事があるというハルヒと古泉は真っ先に部室を後にし、着替えていなかった朝比奈さんもペコリと一礼してそれに続いた。

部屋には、俺と長門、朝倉だけが残った。
「……まあ、朝倉がここに居る理由なんてもんはどうでもいいんだ」
どうせ俺の理解が及ぶ範疇では無いだろうし、下手に理解したいとも思わん。
「私が思うところは何も変わってないよ」
朝倉は、どこまでも朝倉らしく、優しく笑った。
バックアップであった朝倉が暴走したせいで、統合思念体内での立場に変動があった。そのせいで朝倉の一派は無理が利かないのだと言う。
「けれど急進派として、あなた――キョン君を通し、涼宮ハルヒのリアクションを引き出すという行動理念は、そのまま」
「どうする気だ」
「顔が怖いよ、キョン君」
何て科白だ。怖いなんて感情があるのか?
「もちろん。……長門さんに聞いたでしょう? 今の私は、攻撃しようという意志すら独断では発生させられないの」
朝倉はゆっくりと歩み寄ってくる。
俺がその場から動かなくて済んだのは、長門の視線が朝倉を捉えていたからだ。それでも唾を飲み込んでしまうのは、仕方ないだろう?
「それどころか」
努めて平静を貫いたものの、一瞬震えたのは間違いなく伝わっただろう。
朝倉の白い手が、俺の手に重なる。そして、導くように胸元――いや、細い首に俺の手を当てた。
「キョン君が私の事を殺そうと思ったって、抵抗すら許されないの」
――だから、安心して?
朝倉はそう言って、聖母のような笑みを浮かべた。

「……いい。わかった」
辛うじてそう頷くのがやっとだ。
すると、ふふ、と朝倉は微妙に違う色で笑う。
なんだ? 疑問を感じた瞬間、それは炸裂した。
「忘れ物したわ!」
忘れ物の何がそんなに嬉しいのか。ハルヒは扉を銅鑼か何かと勘違いするようにゴガンと鳴らして部室に舞い戻った。
舞い戻って……俺と朝倉を見た。
「キョン君」
それまでの摂氏2℃くらいの声とはうって変わって、不安げな声を震わせた朝倉が、
「あの……どうしたの? いきなり……」
俺の手は、いつの間にか朝倉の胸の上にあった。
……ひどい。ひどすぎる。声を震わせたいのはこっちである。これはコンピ研の一件でハルヒの共犯となったツケか何かか?
「キョン?」
ハルヒは器用にも喜怒哀楽のすべてを含んだ表情で、地下50キロあたりから発せられるような声を絞り出す。目だけ笑ってるのが益々ヤバイ。
「何か楽しそうな事やってるじゃない? あたしも混ぜて欲しいなぁー」

ハルヒのリアクションを引き出す? ああそうか、こういうことか。
ていうか長門も助けてくれたっていいようなものだ。
「観察」
……まったくもって、先が思いやられる。
ハルヒの脇固めを喰らいつつ、俺はこの頃さっぱり封印しきれていない例の言葉をはき出した。
やれやれ。

Last modified:2006/12/30 01:51:54
Keyword(s):[Daily?Diary]
References:[旧作一覧その1]