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変換ミス

第二百七十七話:”変換ミス”

彼女が欲しい。イチャイチャしたい。エロい事したい。
一生に一度ぐらいはこの棒を使用したい。
まあなんというかセックスがしたいんだよ猛烈に。
いつの頃からか、俺はそんな事ばかり考えるようになった。
誰もがキモがるほどの獣神サンダーブサイカーに生まれ早二十数年。
女性とはエロい事どころか手すら繋いだ事がない。
ごめん嘘ついた、小学校のフォークダンスで手は繋いだ。
その時にペアになった佐藤さん(仮名)が終わった後に
泣きながら手を洗っていたのは、今でも良い思い出だ。畜生。

バイト帰りに彼女連れのイケメンとすれ違う。
俺は家に帰った後、メシ食ってオナって寝るだけだが
こいつはきっとこの後彼女とエロい事をして楽しむんだろう。
何故ならこいつはイケメンだから。
これを読んでるあんただってイケメンならそうするだろう?
可愛い彼女と楽しく夜を過ごして飽きたら捨てて、新しいのを見つけて。
それを繰り返すだろう?俺だってそうする。
だが、現実は非情で、俺はどうしょうもないブサメンだ。
全く神は不公平だ。

そんな事を考えながら歩いていると、後ろから声を掛けられた
「すいませーん、ちょっといいですかー?怪しいものですがー」

後ろにはタイトな黒スーツの顔色の悪い男が立っていた。
白いシャツに細い黒のネクタイ。シューズはよく磨き込まれた白。
白く細い指には悪趣味な髑髏のリング。
成る程、これは確かに怪しい。
怪しさと悪趣味の絶妙なブレンドだ。
男は笑顔で言葉を続けた。
「怪しいものですが、今日は貴方を幸せにしにきました」

はてさて、こいつは新手の宗教か、それとも噂に聞く悪徳商法か?
あるいは服装的に危険な金融屋さんか?
何にしてもこーゆー奴はシカトがベスト。
黙って歩を進める俺の背中に、奴は思いもよらぬ言葉を投げかけた。
「何て説明すればいいかな・・・。何というか、私は『編集者』なんです」
俺は初めて歩みを止めて、奴の方を振り返り、声を上げた。
「は?」

その後の奴の話を要約するとこうだ。
『作家』が『作品』を書く。けれどそれはそのまま本にはならない。
誤字脱字やら文脈やらその他モロモロを
『編集者』が『推敲』し、初めて『作品』になる。
たまに見落としがあって、そのまま『出版』されてしまう事もある。
そういう場合は勿論、すぐに『改訂』する。
自分がやってるいるのは解りやすく言えばそういう事だ。
「まあ、スケールの大小はあれど、僕の仕事はそんなところです」

「それでその『編集者』が俺に何の様?」
笑顔だった男は急に申し訳なさそうな表情になった
「貴方は『変換ミス』なんです」

何て失礼な奴なんだコイツは。
いきなり人の事を変換ミスだと?
そりゃあ似たような事を色んな人に言われましたよ。
時代も場所も人も違いますがね。ようするに
「生まれて来て失敗じゃね?」という主旨の事を。
そりゃもう中学の時の片思いのあの子からバイト先のDQNまで。
そんな事を考えてダークサイド全開の俺に気づかず
『編集者』は喋り続けていた。
「と、言う次第でして。私はこの『変換ミス』を早急に直す必要があります」
直す?俺を?どうやって?俺はその質問をそのまま口にした。
ポケットから煙草を取り出すと、『編集者』はこう答えた。
「そりゃもうこんな感じに。」
奴の手の中で、煙草は仔猫に姿を変えた。

「おい、まさか俺を動物に変えようってのか!?」
「いえいえ。貴方を正しくするとこうなりますね」
スーツの内ポケットから奴は一枚の写真を取りだした。
・・・。イケメンじゃないか!これヤバイよ!ジャニーズ入れるよ!
アイドルとも結婚出来るよ!いや、それ以前に取っ替え引っ替えだよこれは!
夢も股間も膨らむなあ!アンタ最高だよ!
「やる気出てきた。早速正しく直してくれ」
「ええ、それはもう早急に。では失礼します」
男は俺の顔に手を当てた。一瞬光ったような気がした。

男の手が離れた後、ガラスに映った自分の顔を見てみる。
完璧だ。さっきのイケメンになってる。
これはもう早速夜の街に繰り出さざるを得ない。
俺は『編集者』に礼を言った。俺の様子を見て編集者も嬉しそうだった。
「ありがとうございます!そこまで喜んで頂けると私も嬉しいですよ!
次の仕事にも張り合いが出ますよ!」
俺は興味本位で次の仕事は何か聞いてみた。
こいつが次はどこの喪男を救うのか興味が湧くじゃないか。
この調子できっとこいつは世界中の喪男を救うんだろう。
やっと俺達は、いや、世界は幸せになるんだ。

「次は大仕事なんですよ。まあありていにいってしまうと・・・」
男は俺に視線をやりながら、こう答えた。
「うーん・・・ちょっとアレな表現なんですが。
全ての「穴」を「棒」に変える仕事です。数が多くて大変ですよ」


喪にも

可女少
な物語

作品情報

作者

出典

  • 第四夜[390-392]

あとがき

  • (投稿なし)
Last modified:2007/06/11 00:55:00
Keyword(s):
References:[第ニ百七十一話〜第ニ百八十話]