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猫になった喪男

第二百五十九話:”猫になった喪男”

タ喪リ「皆さんは変身願望をお持ちでしょうか?変身。一口に言ってもいろいろあります。
正義の見方、毒虫、弾丸。変身するモノは人生が別のモノになります。
これは大好きな猫に変身した、ある男の話です」

猫になった喪男

僕は猫を飼っている。真っ白な猫。名前はヒメ。たいぶ歳をとっているけど、とても可愛い、いや気品のある猫だ。
僕が唯一愛している生き物と言っても過言じゃない。
イケメンになるくらいなら猫になりたい。ヒメとお揃いの真っ白な猫に。

僕はバイトをしてないから、家の雑用は僕の役目になる。その日も親から頼まれた買い物をしていた。その人に出会ったのは、買い物を終えた帰りだった。
「貴方の願いを“かなえさせて”ください」彼女はそう話しかけてきた。
貴方の幸せを祈らせて、とかなら聞いたことある。だけど願いを“かなえさせて”は初耳だ。僕は足を止めた。
「願いをかなえる?」僕は疑わしげに質問した。
「はい!私は貴方の願いを“かなえさせて”欲しいんです」
「じゃあ、僕を猫にしてくれ。真っ白な猫に」
「わかりました。貴方は猫になります」
そう言うと、彼女は何をするでもなく去っていった。僕は狐につままれた様な気分になった。

ある朝、僕はなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で真っ白な一匹の猫に変わっているのを発見した。
体が変な感じだ。猫の体なのだから当然かと一瞬考えたが、どうも体自体に異変があるように思える。体の節々がキリキリと痛むのだ。
今は6時ちょっと前。この時間はヒメがいつも散歩している時間だ。とりあえず、この体に慣れるまでは、あまり動かない方が良さそうだ。

どれくらいそうしてたのか。いつの間にか僕は眠っていた。日はもう完全にのぼりきってる。そして、僕は僕を撫でている。
いや、人間の僕が猫の僕を撫でている。
しばらく撫でた後、人間の僕は僕(つまりは猫の僕)を抱えて居間の鏡の前にやってきた。
ヒメを抱える僕が鏡の中にいる。
「貴方が猫になったわけじゃないのよ。元に戻したいけど、私じゃどうすることもできないわ。ごめんなさい」
人間の僕は本当に申し訳なさそうな声で言った。僕はヒメになって、ヒメは僕になったわけだ。
「本当に…ごめんなさい…」人間の僕(いや、人間のヒメか)はとても悲しそうな顔をしている。
僕は何か言って励ましたかったけど「ニャー」としか言えなかった。

これまで可愛がった猫に可愛がられるという、変な感覚にも慣れたころ。
体が自分から離れていく様な、奇妙な感覚が代わりにやってきた。ヒメの体はだいぶ歳をとっていた。

桜は綺麗に咲いているが、空は曇っていて、肌寒い日。僕は人間のヒメに抱えられている。体の感覚はほとんどないが、暖かさは伝わってくる。
僕は死ぬらしい。これまでの人生は決していいものじゃなかったし、後悔は沢山あるが、今は幸せだ。
ヒメは何も言わず、優しく僕を撫でる。やがて僕は眠る。僕が眠ってもヒメは僕を撫で続けた。

タ喪リ「彼の生涯は短く、またあっけなく終わりました。しかし、彼は最も愛するモノに抱かれて、最後を迎えました。彼はある意味、かなりの幸せモノだったのかもしれません。
貴方の最後は・・・・(笑みをうかべるタ喪リ)」

喪にも

可女少
な物語

作品情報

作者

出典

  • 第四夜[255-257]

あとがき

  • (投稿なし)
Last modified:2007/04/08 04:52:49
Keyword(s):
References:[第ニ百五十一話〜第ニ百六十話]