喪男の一生
第二百七十六話:”喪男の一生”
『今日も晴れか。』
喪男は晴れの日が嫌いだ。
休日の予定がない喪男にとって苦痛でしかなかった。
『DQN共は女と旅行でも行ってんのかな』
小中高と特に友達もできず、DQNを毛嫌いしていた。
今考えると嫉妬の裏返しだったのだろうか。
大学生となった今、正直DQNがうらやましい。
『俺ももっと顔がよければよかったのかな』
そんなことを考えながら今日も喪男はパソコンに向かう。
当然外出の予定もない。
いっそ雨でも降ってくれたほうが、
外出しない自分への言い訳にもなるので気が楽だったし、
なにより雨音を聞きながら過ごす一日が好きだった。
大学生活も昔と変わらなかった。
サークルにも入らなかったせいで、
同じ学科の奴にも微妙に敬語だったりする。
自分のイメージしていたキャンパスライフなんかどこにもなかった。
少なくとも喪男の周りには。
毎日DQNの楽しそうな話し声から逃げるように家に帰った。
きっとこれから友達もできるだろう。
淡い期待を抱きながら毎日を過ごした。
そうして過ごした大学生活も今日で終わり。
淡い期待も見事に打ち砕かれ喪男は一人だった。
あれほど頑張った就活もうまくいかず明日からはニートとなる。
笑ってしまいそうなくらい絶望的な人生だ。
両親から『卒業式はでないと』と言われ、
とりあえず出た卒業式では、
卒業旅行の話などでみんな盛り上がっていた。
『どうせ俺には縁のない話だ。』
ヘッドフォンで周りの音を遮断し、
外にでるとポツポツと雨が降ってきた。
喪男は急ぎ足で会場をあとにし、家路を急いだ。
『うわぁ!!』
それは一瞬の出来事だった。
気づけば空を仰いでいた。
周りには運転手らしき人物や野次馬。
皮肉なことに喪男が一番注目を浴びる日は最期の日となった。
『こんなとこで終わるのか俺の人生は・・・』
死ぬ間際には走馬灯というものが見えると聞くが、
振り返るような楽しい過去はない。
喪男は自分自身を嘲笑するように笑った。
目の前が次第にに霞んでくる。
今日は雨。
この雨音は喪男への祝福のメッセージだったのかもしれない。
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References:[第ニ百七十一話〜第ニ百八十話]