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第二百五十七話:”桜”

 おれは、桜の花をつけた枝を持って目的の場所に向かって歩いていた。
 空は晴れているが、まだ少し肌寒く感じる4月1日。
 辺りは静かで人はほとんどいなく閑散としていたが、掃除はいきとどいてるように見える。やはり墓地はお盆
くらいしか人は集まらない所なのだろうと思う。
 目的の墓は、おれの彼女の墓だ。こんなおれを愛してくれた人だった。
 おれは、はっきり言って不細工だ。その上貧乏で、バイト先の仲間や学生の頃も周りの連中にはきもいと言い
続けられてきたような引きこもりがちの男だ。彼女が交通事故で亡くなってからは、さらに引きこもるようになった。
 趣味と言えば、せいぜいアニメや漫画を見るのに没頭したり、フィギュアを集めたり…いわゆるヲタクだ。
 彼女のあやのは、周りから見てもかわいくてスタイルもよく周りの連中には不釣合いだと言われていた。
 奥手なおれにすごく優しくしてくれた彼女―――
 エッチは結局できなかったが、ご飯をつくってくれたりデートしたりと夢にまで見たカップルを満喫していた。
 告白は玉砕覚悟でおれのほうからした。

「あ…あの…すっすっすきなんですけど……付き合ったことがですね、一回もないんですけどっ…付き合ってくれま
せんか?」
 噛みながら、震えながら告白したおれに彼女は優しく笑ってこう言った。
「はい。私も好きでした。私も付き合ったことはないですけど、初めて同士ってことで付き合ってもらっていいですか?」
 あの時おれはすごい嬉しくて泣いちゃったんだよなぁ…。
 甘い思い出を思い出しながら歩いてると、彼女の墓についた。
 手入れはいきとどいていた。
 彼女の大好きだった桜を供える。
 彼女は、桜が大好きなことはおれにしか言っていないと言っていた。昔から桜が好きなことだけは、愛した人にしか
教えないと決めていたらしい。つまり、彼女にとっておれが最初で最後の愛した人になったわけだ。
 不謹慎かもしれないが、それを聞いたときはめちゃくちゃ嬉しかったものだ。
 彼女の墓に線香をあげ、おれはタバコに火をつけた。

  一人静かにタバコを吸いながら、彼女の墓を見ているといろんな思い出が浮かんでは消え浮かんでは消える。
 ふと、気が付くとおれは泣いていた。
 そして、彼女の墓に一人呟いた。
「愛してたよ…。これからも愛してる…」
 その時背後からいきなり何人もの声がした。
「「「あなたもですか?」」」
 慌てて後ろを振り返ると―――
 そこにはルックスのいい3人の男達がいた。
 彼女が愛した人、つまりおれにだけしか教えていないはずの桜を持って―――

喪にも

可女少
な物語

作品情報

作者

出典

  • 第四夜[240-242]

あとがき

  • 人居なさそうだが感想あったらいってくれると嬉しい
Last modified:2007/04/08 04:49:41
Keyword(s):
References:[第ニ百五十一話〜第ニ百六十話]