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古代妄想

第二百八十四話:”古代妄想”

まだ便利な機械がなく、娯楽も少なかった時代。
この時代にも、満たされない喪男がいた。

彼の心には、日を重ねるごとに、どろどろとした、行き場の無いものが溜まる。
それは、庶民を人間扱いしない権力者への怒りや、満たされない空しさや、妻のいない寂しさや… … …
それらが凝縮され、パンパンに膨らんでいる。

寝る前の妄想の時間が、彼の数少ない楽しみだった。

「俺はもっと高貴な生まれなんだ。長い伝統のある家系で、財産だってたくさんある」
目覚めると、喪男は上品で綺麗な部屋にいた。
どの家具も高級感あふれ、金や宝石の装飾だの、有名な芸術家の作品だのが飾ってある。
調和がとれていて、とても良い部屋なのだが、ここにいる喪男だけが不釣合いだった。

「俺は美しい。代々美しい男女が結婚して、美しさが凝縮されているんだ」
目覚めると、そこにあるのは、上品な部屋と、銅鏡に映った喪男の美しい顔。
部屋が喪男を、喪男が部屋を引き立てる。美の究極ともいえた。
あとは、この家系にふさわしい内面をもたなければならない。

「俺は教養にあふれ、多趣味で、多才で、武芸にも長けていて
 …とにかく、ありとあらゆる良いものが凝縮されているんだ。」

目覚めた。
素晴らしい、の一語に尽きる。人類史上これだけの美点を備えた人間が存在しただろうか。
今の喪男はこの国の王や、大国の王よりも恵まれているだろう。
彼は、歴史に名を残す人物になれるかもしれない。

「これが本当であろうと、嘘であろうとどうでもいいのだ。
後世の人間は、俺を実際に見るわけじゃないんだからな。
さて、あとはどうやって名前と功績を残すかだが…」


喪にも

可女少
な物語

作品情報

作者

出典

  • 第四夜[462]

あとがき

  • (投稿なし)
Last modified:2007/07/13 02:34:18
Keyword(s):
References:[第ニ百八十一話〜第ニ百九十話]