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ネット喪カマ

第三十六話:”ネット喪カマ”

不細工で童貞な喪一郎は大学三年生。
喪らしく無駄な努力を続け、一年の受験勉強の末に不釣合いな大学に進学した。
自分と違う華やかな学生たち(いいやつばかり)に囲まれ、皆に合わせようと喪なりに頑張るうちにいつしか躁欝病になり、今はすっかり引き篭もっていた。
家でPCをだらだらと使い続け、死ぬことばかり考えていた。
自分の名前で何故か女性になりきり、口の悪い女性を演じて時間を過ごしていた。(どうでもよかったが)
いわゆるネカマというものだ。HNはモイチ。変な名前のその女性はモテタ。
それなりに知識や個性も(多分)あった喪一郎が、女性として言葉を操る。
結果自分はミステリアスな女性へとなっていた。
彼は、自分が到底知り合えない素敵な男性たちを、不思議な魅力で虜にして時間を過ごしていた。
それなりに楽しくもあったが、何も楽しくなかった。

彼はある日、何気ないチャットサイトで素敵な女性を見つけた。
自分とは全く縁のない美しい女性だった。
名前は麗美(仮名)とでもしよう。
正直一目惚れをした。
だが彼もそこでは女性。誰もつかわないような言葉でその人を煽ってみた。
それが奇妙な縁を作り、二人は仲良しになった。
一ヶ月、二ヶ月と経つうちに、二人は毎日ネットで話をするようになった。
麗美とモイチは奇妙な親友になっていた。
仮想の自分モイチ(女性)の相談をしたり、彼女の相談を真摯に聞いてあげる日々が続いた。
喪一郎は、彼女を唯一の友達と思えるようになった。
彼は引き篭もることから脱出した。麗美のおかげだろう。
もはや恋愛感情など無く、けれど麗美を恩人・友人として大切に思っていた。

そんなある日、麗美がモイチに言ったのだった。
「私、モイチが好きなの。女の子同士だけど、どうしても好き。」
喪一郎は、友人として麗美にすまないと思い、自分が不細工な男性であることをついに告げた。
しかし麗美は奇特な女性だった。
「人間としてモイチが好きなんだよ!むしろ男の子で嬉しい!!私がモイチ好きになっても良いんだもんね!!」

麗美は執拗に喪一郎に会いたがった。はっきり交際して欲しいと言っている。
以前の喪一郎が妄想しそうな状況ですらあった。
喪一郎は麗美のために会うことにした。二人は会った。
不細工で陰気な喪一郎に、麗美は夢中だった。
居酒屋で露骨に好意を見せる麗美に、何故か喪一郎は自分の顔以上に気持ちが悪くなった。
しかし時は経ち、酔った麗美を自宅に送ることになってしまった。
彼女の自宅に着いた喪一郎に、麗美が抱きついてきて求めた。
喪一郎は麗美に平手打ちした。そしてトイレで吐いた。
彼は泣く麗美に謝った。
「私は女性を恋愛対象として見ることはできないんです。」

扉を閉め、夜道を歩く。
そこにいるのは不細工で童貞のゲイだった。
これから待つさらに奇妙で悲惨な生活に、彼は死にたいとはもう思わなかった。
単に今、彼は躁なだけだった。
童貞の道程は続く。

作品情報

作者

出典

  • 第一夜[226]

あとがき

  • (投稿なし)
Last modified:2006/11/05 01:50:13
Keyword(s):
References:[第三十一話〜第四十話]