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ツツジ

ツツジ

俺はツツジが好きで、仕事にできたらいいと思って農学部に入った。
ツツジばかり見ていたら、級友にカノジョの一人も作れとからかわれ、紹介しちゃると言われた。
当日午前十時、俺はその世話焼きな級友が指定した服で待ち合わせ場所に行った。
駅前の広場には、丁度時季なので、そこだけアスファルト舗装されずに残された久留米ツツジの古木が、見事な花を咲かせている。
遅い朝食をキヨスクのクリームパンと缶コーヒーでとり、ツツジを眺めた。
見とれていたら日が暮れた。ツツジの花は美しい。
翌日、教室でそいつに「お前昨日どうしてん」と聞かれる。
俺こそ「待っとったけどお前ら来なんだやないか」と。
まあ、あのすごい久留米ツツジ見とったから、別に退屈なんかせんかったけど。
待て、お前。あの駅やな?
お前言うたんやないか。ちゃんと朝の十時に行ったぞ。俺、一応待っとってんぞ。

級友は講義が終わった後、「ちょっと付き合え」と。
あの駅に行く。
キンモクセイとサザンカの植え込みが見事に整えられている。
やつはクリームパンを二つ買い、一つを俺によこす。
キヨスクのおばちゃんは同じ顔だった。

二人でバス停ベンチに座り、パンを頬張る。
聞かれた。
「何を見てたら退屈せなんだって?」
駅前の久留米ツツジや、市指定の重要文化財やん、お前も去年、花ァ見に来たやろ。
でも、古木の傍らにあったはずの古びた看板も見当たらず、俺は黙ってうつむくしかなかった。

突風が吹いた。

ツツジの花のボロボロになったのが、いくつか靴もとに吹き寄せられて来た。
俺は何も言えなかった。

作品情報

作者

出典

  • 第五夜[18]

あとがき

  • (投稿なし)
Last modified:2007/09/04 21:49:25
Keyword(s):
References:[第ニ百八十一話〜第ニ百九十話]