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Pr.Def.9

補足:面積なんだから……

「確率とは面積だ」という神様視点を押さえておけば、 かなりのことは、いちいち教わらなくても当たり前の話になります。 これから述べることもそんな話の一例ですから、 本書の立場からすれば、この節は「蛇足」です。

でも、確率の勉強を漫然と進めていくと、 押しよせる話題に埋もれて「面積だ」を忘れてしまう恐れもあるでしょう。 そこで、「面積だ」の念押しのためにも、ここで一節を割いて確認しておく ことにします。 以下、○○や××は、「何か適当な条件」と読んでください。

まず、確率のとり得る範囲について。 確率とは面積なんだから、負になることはありません。 また、全体の面積が 1 という約束だったから、最高でも 1 までです。

0 <= P(○○) <= 1
def_range.png

また、「○○の確率」と「○○でない確率」とを合計すれば、1 のはずです。

P(○○) + P(○○でない) = 1

例えば、

P(X = 3) + P(X ≠ 3) = 1
P(X < 3) + P(X >= 3) = 1

同じことですが、こんな言い方も慣れておいてください。

P(○○でない) = 1 - P(○○)
P(X ≠ 3) = 1 - P(X = 3)
P(X >= 3) = 1 - P(X < 3)

いずれにせよ、絵を見れば一目瞭然でしょう。

def_compl.png

次は、少しだけ気をつけてください。 もし「○○と××が同時には決して起きない」なら、 「○○または××」の確率は、それぞれの確率の単純な合計になります。

P(○○または××) = P(○○) + P(××)

なぜなら、「同時には決して起きない」という前提から、 「領域に重なりがない」と保証されるからです。 例えば、

P(X = 3 または X = 7) = P(X = 3) + P(X = 7)
P(X < 3 または X > 7) = P(X < 3) + P(X > 7)
def_sum.png

いまの話でよく気をつけてほしいのは、 「同時には決して起きない」という前提です。 この前提が崩れると、単純な合計では済まなくなります。 例えば、こんないんちきサイコロの目を X としましょう。

サイコロの目そんな目が出る確率
10.4
20.1
30.1
40.1
50.1
60.2

このとき、P(X が偶数、または、X が 3 で割り切れる) は、

P(X が偶数) + P(X が 3 で割り切れる)

にはなっていません。 実際、

P(X が偶数、または、X が 3 で割り切れる) = P(X が 2 か 3 か 4 か 6)
= P(X=2) + P(X=3) + P(X=4) + P(X=6) = 0.5

なのに対して、

P(X が偶数) = P(X が 2 か 4 か 6) = P(X=2) + P(X=4) + P(X=6) = 0.4
P(X が 3 で割り切れる) = P(X が 3 か 6) = P(X=3) + P(X=6) = 0.3

の合計は 0.4 + 0.3 = 0.7 ですから、一致しません。 重なっている領域の分が二回足されているせいです。

def_dice.png

最後に、釈明を一言。 「お話レベルより上の確率・統計がわかるようになる」が、本書の目標でした。 数理のプロをめざさない前提で、 この目標のために何がまず大切かを吟味した結果、 本書では次のような方針をとっています。

  • 測度論だの確率の公理だのには踏み込まない。
  • 面積の定義もしない。
  • 面積の性質は、日常生活を通じて「知っている」ものとする。

もちろんこれは、まっとうな「数学」の態度ではありません。 もしこれが「数学」に見えるとしたら、たぶんあなたは、本物の「数学」に まだ会ったことがないの でしょう*1

だいたい、定義もせずに性質をどうこう言うなど、全くもってナンセンス。 「どういうものを面積と呼ぶのか」について厳密に同意しないまま 面積を議論したところで、白黒はっきりつくわけないじゃありませんか。 このあたりの不誠実さは、本書の割りきりです (我々の掲げる目標のためには、本物の数学であることより、まずは ○○や××の方が大切だろう)。 一方、数学でないものを数学だと言い張ったりしない誠実さは、 本書のこだわりです。

公の場に出しても恥ずかしくない「数学」を望む読者は、 測度論や公理的確率論を別途学んでください。


コメントはプログラミングのための確率統計


Last modified:2005/10/06 00:37:12
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References:[Pr.Def]

*1 数理系の学科を除けば、一度も会わないまま大学を卒業するのも珍しくありません。