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Pr.Def.2

三つの扉(モンティ・ホール問題)

(Ω, F, P)の話をいきなりするのはつらいので、 つなぎとして、「三つの扉」というゲームを検討します。 モンティ・ホール問題(Monty Hall problem)と名づけられていて、 議論が必ず紛糾することで有名な題材です。 このネタを聞いたことのある方も多いでしょうけれど、 ネタそのものよりも「(Ω, F, P)を意識した説明」が 主眼ですから、おつきあい下さい。 三つの扉があります。そのうち一つだけが正解で、開けると高級車が 置いてあります。残りの二つは不正解で、ヤギがいるだけです。 どれが正解なのかは、外からではわかりません。 挑戦者は、三つの扉から一つだけ選ぶことができます。

さて、一つを選べば残りは二つですが、そのうち少なくとも片方は不正解なはずです。 そこで、司会者(正解を知っている)は、 選ばれなかった扉で不正解のものを一つ開き、ヤギを見せた上で言います。 「選び直してもいいですよ」

挑戦者は、選び直すべきでしょうか? それとも、最初に選んだままにするべきでしょうか? あるいは、どちらでも同じでしょうか?

def_monty.png

少し考えてみてください。 確率の問題として話をはっきりさせるために、次のような前提としましょう。

  • 司会者がどの扉に高級車を置いておくかは、サイコロで決める(1か2なら扉ア、3か4なら扉イ、5か6なら扉ウ)。
  • 挑戦者がどの扉を選ぶかも、サイコロで決める(1か2なら扉ア、3か4なら扉イ、5か6なら扉ウ)。
  • 挑戦者が選んだ扉が正解だったとき、残りの扉(両方とも不正解)のどちらを司会者が開いて見せるかも、またサイコロで決める(1か2か3なら左の方、4か5か6なら右の方)。

頭のいい人ならば、即座に正しい答を言えるかもしれません。 でも、そんな人でも、まちがった主張にとらわれてしまった人を 言葉で説得して誤解を解くのは、なかなか手こずるのではないでしょうか。 例えば次のようなあわてものの主張です。 ゲーム開始時点での可能性としては、

  • 扉アが正解(確率MA8mlu 1/3)
  • 扉イが正解(確率 1/3)
  • 扉ウが正解(確率 1/3)

の 3 通りがある。 そこから例えば、挑戦者が扉ウを選んで、司会者が扉アを開けて見せたとしよう。 これで最初の可能性は消えたのだから、残る可能性としては、

  • 扉イが正解(確率 1/2)
  • 扉ウが正解(確率 1/2)

のどちらかだ。となれば、選び直して扉イにしても、 そのまま扉ウでも、正解の確率は 1/2 で同じだ。

「確率」というはっきりイメージしづらい概念について「勘」で議論している限りは、 すっきり納得するのは難しいものです。 なので、できるだけ目に見えて実際に数えられるような話へ翻訳し直すことを 考えます。 具体的にはサイコロの追放です。

ゲーム会場をたくさん用意したと思ってください。 大きな広場に 360 会場を並べて設営し、 それぞれの会場でゲームを同時並列に実施します。 その様子を、あなたはヘリコプターで上空から観察します。 翻訳前の話と違うのは、各会場にその会場用のシナリオが配られていることです。 司会者も挑戦者も、このシナリオどおりに演じるだけ。 やることは前もってすべて決まっているのです。 ただし、会場ごとに、シナリオの内容は違います。

def_heli.png

さて、翻訳前の話では、まず司会者がサイコロをふって正解の扉を決めていました。 これに対応して、 360 会場のうち、 120 会場は扉アが正解、 120 会場は扉イが正解、 120 会場は扉ウが正解、というシナリオ設定にしましょう。 次に、挑戦者の選択ですが、これもサイコロはやめます。 かわりに、アが正解な 120 会場のうち、 40 会場はアを選択、 40 会場はイを選択、 40 会場はウを選択、というシナリオにしておきます。 イが正解な 120 会場、ウが正解な 120 会場についても同様です。 ここまでを表にまとめるとこうなります。

挑戦者がアを選択挑戦者がイを選択挑戦者がウを選択
アが正解40 会場40 会場40 会場
イが正解40 会場40 会場40 会場
ウが正解40 会場40 会場40 会場

あとは司会者が不正解を一つ開けてみせるわけですが、ここは注意してください。 挑戦者の選択が不正解(×)だったときには、残る扉は正解と不正解なので、 不正解の方を開いて見せるしかありません。 一方、挑戦者の選択が正解(○)だったときには、残る扉のどちらかを 司会者が開いて見せます。どちらを見せるかは半々です。 すると、表はこうなります。

アを選択・イを見せるアを選択・ウを見せるイを選択・アを見せるイを選択・ウを見せるウを選択・アを見せるウを選択・イを見せる
アが正解○ 20 会場○ 20 会場-× 40 会場-× 40 会場
イが正解-× 40 会場○ 20 会場○ 20 会場× 40 会場-
ウが正解× 40 会場-× 40 会場-○ 20 会場○ 20 会場

では、ヘリコプターから下を眺めて、会場を数えてみましょう。 もし挑戦者が最初の選択をつらぬき通すなら、 正解になるのは○がついた計 120 会場で、 不正解は×の計 240 会場です。 一方、挑戦者が扉を選び直すなら、×のついた計 240 会場が逆に正解となり、 ○の計 120 会場が不正解となります。 この結果を見れば、選び直す方が良いとはっきりわかります。 数をかぞえるだけの話ですから、あいまいさはありません。

ヘリコプターから眺めていれば、あわてものの主張のどこがまちがっているかも、 数をかぞえて確認できます。 挑戦者がウを選んで司会者がアを開いて見せている会場は、 合計 60 会場あります。 そのうち、イが正解なのは 40 会場。ウが正解なのは 20 会場だけです。 割合は半々ではありません。

【FAQ】 翻訳って言うけど、元の話は確率的だったのに、 いまの話は完全に確定的になってしまった。同じ話とは思えない。 そんなので翻訳と言っていいのか?

→ もっともな不安ですが、だいじょうぶ。 翻訳後の話も、必要に応じて確率的に解釈することができて、 そうするとちゃんと同じ話になっているのです。 具体的には、放映する会場をルーレットで決めればよい。

1 から 360 までの番号がついた巨大ルーレットを用意します。 このルーレットを回して、例えば 124 が出たら、 第 124 会場を放映することにします。 360 会場も用意しておいて、放映するのは一会場だけ。 そんな仕組みを知らない視聴者にとって、この番組はどう見えるでしょうか。

扉アが正解となっているのは、 360 会場中の 120 会場でした。 すると、視聴者から見れば、正解が扉アになる確率は 120/360 = 1/3 です。 イもウも同様に確率 1/3 になります。 これは、元の話でサイコロをふった場合と全く同等の結果です。

また、扉アが挑戦者の選択となっているのも、 360 会場中の 120 会場でした。 視聴者から見れば、挑戦者が扉アを選ぶ確率が 120/360 = 1/3 です。 イもウも同様に確率 1/3 。 これまた、元の話でサイコロをふった場合と同等です。

元の話を完全にシミュレートできていることが、納得できたでしょうか。 ……本当は、これで納得してはいけない(もっと確認すべきことがある) のですが、ちゃんとした話は次章にゆずります。 【FAQ 終】

ヘリコプター視点の威力を、もういちど念押ししておきます。

  • 会場をたくさん用意して、同時並列でゲームを実施。
  • 各会場では、前もって完全に決まっていたシナリオを演じるだけ。
  • シナリオの配分を上手に設定することで、全体として、元の確率的な話をシミュレートできる。
  • ヘリコプターから会場の数をかぞえれば、主張の正誤をはっきり白黒つけられる。

すばらしい御利益だと思いませんか。 「確率」というもやもやしたものを勘でどうこう言っていたのでは、 明解さなんて望めません。 それが、ヘリコプターなら、具体的にかぞえられる話に翻訳されたのでした。


コメントはプログラミングのための確率統計


Last modified:2011/07/14 19:24:49
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