Create  FrontPage  Index  Search  Changes  RSS  Note  wikifarm  Login

同窓会 前編

786 :名無しさん:2007/07/19(木) 21:36:16

 私は菊さまと仲直りして幸せだった。
足の方は相変わらずだったが、杖をつく不便さも気にならなかった。
なぜなら毎日菊さまから励ましのメールが来ていたから。
ただ、もう一人私を励ましてくれる人がいた。
それは田中ひろしさん。
彼が私に好意的なのは嬉しいことなのだが、彼とどう関わっていけばいいのか
私は悩んでいた。
まだ何も言われてないのに考えすぎなのかもしれない。
私は気になりつつも、日々菊さまと心通わせていることに喜びを感じていた。


787 :名無しさん:2007/07/19(木) 21:39:36

 ある日一通のはがきが来た。
往復はがきで、内容は中学校の同窓会の通知だった。
「同窓会かあ、行ってみようかしら。」
同窓会といっても学年全体で集まるというものらしい。
某ホテルの大広間で会費5000円と書いてあった。
ちょっと高い気もしたが、卒業して15年。
他のクラスの友達、クラブで友達だった子にも会ってみたい。
私はさっそく出席の返事を出した。


788 :名無しさん:2007/07/19(木) 21:42:49

 そのころ秀規は体の具合が悪く、休みの日は寝込んでいた。
「ああ、せっかく治りかけてたと思ったのに・・・。」
先週から風邪を引き気味。
でも今日はラジオの収録に行かねばならない。
朝早く出かけていった秀規はなんとか収録を終え家に帰ってきた。
すると○○からメールが入る。
「菊さまへ
 今日夜お食事行きませんか?
 へんじください。 
       ○○より」
今日は体調悪いから断ろう。
「○○へ
 ごめん。俺風邪ひいてだるいから行けないわ。
 またの機会にしてくれる?
          秀規より」
送信。
秀規はベッドに入り、昼ねすることにした。


789 :名無しさん:2007/07/20(金) 19:36:58

 私は仕事帰りに菊地邸を訪ねた。
ピンポーン。
しばらくすると菊さまが青白い顔で出てこられた。
「菊さま具合悪そうですね。病院へは行かれたんですか?」
「いいや寝てたから行ってない。」
私は菊さまのおでこを触らせてもらった。
「なんか熱がありそうですね。」
「ああとても体がだるい。ゴホっゴホッ!」
菊さまにベッドへ戻ってもらって私は看病することにした。
「菊さま食欲はありますか?」
「あまり無いよ。でも薬飲むんだったら何か食べようか。」
「じゃあ、おかゆ作ります。」
私は菊さまに新しい濡れタオルを乗せて台所へ立った。
おかゆを作り、菊さまのもとへ運ぶ。
菊さまがだるそうなので布団の上にお盆を載せて食べてもらうことにした。
私はその間に菊さまのパジャマや下着を出していた。
すると、机の上に一通のはがきがあるのが目に留まった。
「××中学校同窓会・・・。」
菊さまの卒業された中学校の同窓会の通知だった。
出欠の欄は空白になっていた。
菊さまは出席されるのだろうか?


790 :名無しさん:2007/07/20(金) 19:56:39

「菊さま同窓会行かれるんですか?」
「ゴホッ。多分行かれないと思うよ。それ日曜だろ?」
「はい。そうですね。」
菊さまの中学生時代ってどんなだったんだろうか?私はとても興味があった。
だけど今まで菊さまはそういう学生時代のお話をされることは無かった。
あまりいい思いではないのだろうか?私は菊さまがどんな恋をされていたのか興味があった。
どんな女子が好きだったんだろうか。菊さまの卒業アルバム見たこと無いなあ。
見せてもらいたい。私は聞いてみた。
「菊さま、中学校の卒業アルバムあるんですか?」
「ああ、あるよ。」
「見せてもらえませんか?」
「見てどうするの?」
「どうもしないけど、15歳の菊さまを見てみたくて・・・。」
「押入れの中にあるから探してみて。」
私は押入れを開けさせてもらって言われたとおりの所を探してみた。
紺色のアルバムが出てきた。けっこう大きいアルバム。私はそれをそっと出し、ゆっくり開いてみた。
「菊さま何組?」
「○組。」
菊さまの組を見る。すぐに分かった。今より少し幼く頼りない感じ。
肌の色はとても白い。それは今と変わらない。でも全体的に変わってない。
「菊さま変わってないですね。」
「そうか?」
「菊さま、どの人がお友達だったの?」
「○○と××、△△。」
「ああこの人ね・・・。好きな女の子はいたの?」
聞いてはいけない気もしたけど気になった。
「別にいないよ。」
「へえ、そうなんだ。でも菊さまモテたんじゃないの?」
「ぜんぜん。っていうかお前からかってるだろう?」
「そんなつもりじゃないです。だってこんなに可愛いのに、ファンがいないわけ
 ないと思ったから。」


791 :名無しさん:2007/07/20(金) 22:01:35

「ハハッ。そんなことあるわけないじゃん。」
菊さまは力なく笑われた。
本当にしんどそうなので私は菊さまに服を脱いでもらい、蒸しタオルで
菊さまの体を拭いた。
そして下着を着替えさせ、水色のパジャマに身を包んだ菊さまは薬を飲まれた。
「ゴホッゴホッ、今日はありがとう。お前に風邪うつったらいけないから、
 もう帰れよ。」
「はい、分かりました。菊さまそれじゃあしっかり寝てくださいね。」
「ああ、ありがとう。○○。」
私は菊さまの頬に優しくキスして菊地邸をあとにした。


792 :名無しさん:2007/07/20(金) 22:24:26

 ○○が帰ってすっかり静まり返った部屋。
秀規は薬の力で徐々に眠気をもよおしていた。
体のあちこちの筋肉が痛む。
熱がだいぶ出てるようだ。
まどろみながら秀規は中学時代を思い出していた。
さっき彼女にしらを切ったけど、本当は好きな子がいた。
もちろん告白などできるはずもなく。
秀規の一方的な片思い。
「ああ、あの子どうしてるだろうか・・・。」
今でも覚えてる彼女の美しい横顔。
本当は同窓会に行ってみたい気もある。
でも無理だろうなあ・・・。
考えあぐねるうちに秀規は眠りについていた。


794 :名無しさん:2007/07/21(土) 19:46:45

 それから数週間たったある日私は同窓会へ出かけた。
ホテルの会場には同級生達が集まっており、懐かしさで一杯になっていた。
「○○ちゃん?」
「恵子ちゃん?」
「久しぶり、なんか大人になったね。」
「あなたこそ、綺麗になってるね。元気だった?」
私は部活で一緒だった友達と再会し、会話を楽しんでいた。
同窓会長の挨拶やら、各組の先生方の近況報告が報告された。
立食パーティー方式だったので各自好きなものを食べたり飲んだりしていた。
私は無意識のうちに田中さんの姿を探していた。
すると私の肩を叩く人がいた。
「やあ、○○さん、お久しぶり。」
見ると田中さんだった。
「こんばんは。」
「足の方はどう?」
「はい、まだ杖ついてますけど大分よくなりました。
 その節はどうもお見舞いありがとうございます。
 あの時はみっともないところお見せしてしまって・・・。」
「別に気にしないで。それより君が元気そうで良かった。
 仕事にも行ってるんだよね?」
「はい。なんとか通勤してます。」
「今日は君にまた会えると思って楽しみにしてたんだ。」
その言葉にどんな意味があるんだろうか?
私は彼の気持ちをどう受け止めればいいのか分からなかった。


795 :名無しさん:2007/07/21(土) 19:53:48

彼はまだ私と話したい感じだったが、それぞれクラスごとに集まりましょう
ということになり、私は自分のクラスの方へ行った。
先生や、同級生に会い私は同窓会を楽しんだ。
密かに好きだった男子にも会って話しができて、私は一気に青春時代へ
引き戻された感覚に陥った。
2時間ほどで会は終了となった。
それぞれ2次会にちらばったりしたが、私は足のこともあるので家へ帰る
ことにした。
私が友人達と別れタクシー乗り場へ行こうとしていたそのとき、
「○○さん!」
振り返ると田中さんだった。
「ちょっと待ってくれませんか?」
「はい、なんですか?」
「少し時間をくれませんか?お茶でも飲みながらお話したいんですが・・・。」
私は時計を見た。
まだ九時だし、まあいいか。
「はい。いいですよ。」
私たちはホテルの1階の喫茶ルームでお茶を飲むことになった。


796 :名無しさん:2007/07/21(土) 21:33:11

「今日は沢山の同級生に会えて楽しかったですね?」
「ええ、田中さんは好きだった子に会えた?」
「ああ、彼女は来てなかったようで・・・。」
「そうですか。私は会えました。」
「それは良かった。」
しばらく沈黙が流れ、二人の元にアイスティーが運ばれてきた。
一口飲んで田中さんが口を開いた。
「○○さん。今日はお話したいことが・・・。」
「何ですか?」
私はドキドキした。でももしこれからの私たちのことだったら・・・。
「あなたに初めて会った時からあなたのこととても気になって。
 気がついたらあなたのこと好きになってました。」
私は好きと言われてとても胸の奥から何かが湧き上がるような感覚を覚えた。
「あなたにもし今お付き合いしてる人がいらっしゃらないなら・・・。
 僕と付き合ってもらえませんか?」
私は少し嬉しかった。
こんな風に正式にお付き合いを申し込んでくれる人なんて今までいなかったから。
でも嬉しがってばかりもいられない。
本当のことを話さなければ・・・。
私は彼の真剣な目を見て、正直に今の状況を話すことにした。


797 :名無しさん:2007/07/21(土) 21:41:15

「実は、私にはお付き合いしてる人がいます。」
「え?そうなんですか?」
「ええ、田中さんも一度見かけたと思いますけど、田中さんがお見舞いに
 来てくれた時のあの人なんです。」
「ああ、あの彼。でも僕はあの人に帰り道で出くわして、聞いたんです。
 『○○さんとは付き合ってるんですか?』って。
 そしたら彼は付き合ってないって。だから僕はてっきりただの友達だと
 思ってしまった。なぜあの時あんなことを彼は言ったんだろう?」
「あの人怒ったらすぐそういう風に言うから。
 本当誤解させてごめんなさい。
 私あの人といっぱい今までも喧嘩してきました。
 だけどどんなに喧嘩してもあの人のこと結局好きなんです。
 この気持ちは多分これからも変えられないと思います。だから・・・。」
「そうですか。残念です。
 でもあなたに気持ち伝えられてスッキリしました。」
「ありがとう。あなたみたいにストレートに告白されたの初めてだったから。
 とてもあなたの気持ち嬉しかったです。」
「これからもメール友達でいてくれますか?」
「はい、宜しくお願いします。」
私たちはそれから笑顔で別れた。
とても良い人。だけど私は今菊さまのことしか考えられない。
この気持ちは変えられない。多分きっと。


798 :名無しさん:2007/07/21(土) 21:48:53


 秀規はその日久しぶりに事務所に寄った。
何通かファンレターが来ていた。
全盛期に比べるとファンレターの通数もかなり減った。
でも今月は多いほうか。
一抹の寂しさを感じながらもずっとファンでいてくれる人や新規のファンも
いるから、秀規は大切に手紙を読んでいた。
その中に一通はがきがあった。
よく見るとそれはファンレターではなかった。
「菊地秀規さまへ
 お久しぶりです。××中学校○組の鈴木太郎です。
 菊地君が先日の同窓会に来なかったので気になってました。
 今度××中学校同窓会の東京支部でも同窓会を開くことになっています。
 小さな会になると思います。
 場所は○○レストランを貸切となっております。
 日時は○月○日午後19:00〜です。
 会費は5000円。
 ぜひ菊地君にも来てもらいたいです。
 返事待ってます。              」
秀規はそのはがきを持って帰った。
何度も何度も読み返す。
「どうしようか?」
スケジュールを確認する。
その日は空いてる。
行けそうだ。
鈴木に電話してみようか。


799 :名無しさん:2007/07/21(土) 21:53:22

 秀規はさっそく電話して出席すると伝えた。
今のところ15人ほど集まっているらしい。
そんなに東京に出て来ている同級生が居るとは・・・。
秀規は全然同級生達の近況とか知らなかったから驚いた。
地元の岩手だと地味だった秀規は多分誰にも覚えてもらってないような
気がして、行くのがおっくうだった。
だけど少人数で東京であるなら、なんとなく行きやすい気がした。
嫌ならすぐ抜け出せばいいし。
秀規は軽い気持ちで考えていた。
衝撃的な出会いがあるとも知らずに。


803 :名無しさん:2007/07/22(日) 22:07:37

 その日はあっという間に来た。
秀規は同窓会の会場へ到着した。
ざっと見て20人ぐらい人が集まっていた。
受付で5000円払って名前を書いた。
「菊地さんですね。どうぞこちらへ。」
秀規は席に案内された。
幹事の鈴木が言うには一応クラス順に座るようになっているとのことだった。
自分と同じクラスの子って誰が来るんだろう?
秀規はドキドキしていた。
すると、誰かが話しかけてきた。
「菊地君ですか?」
振り向くと女性が立っている。
「はい。えーっともしかして佐々木さん?」
秀規は自分でも驚くほどさらっと彼女の名前が口から出ていた。
それはまぎれもなく秀規の大好きだった佐々木道子だった。
「はい。そうです。覚えてる?」
「も、もちろん。元気そうだね。」
「菊地君が芸能界で活躍してるの聞いてとても驚いてる。
 でももうデビューしてだいぶたつよね。」
「う、うん。10年かな。」
「そう。すごいじゃない。」
「君は東京で暮らしてるの?」 「ええ、大学から東京でもう12年ぐらい住んでる。
 会社員してます。」
「そうなの。」
秀規は彼女の左手を見た。
指輪ははめてない。独身か?でもはめない主義なのかもしれない。
彼女が独身かどうか確かめたかった。
確かめたところでどうなるわけでもないけれど・・・。


804 :名無しさん:2007/07/22(日) 22:18:55

「えーそれでは同窓会を始めます。」
幹事の声で彼女は自分の席に着いた。
秀規の斜め前。
ビールが運ばれてきた。
「それでは乾杯!」
「乾杯!」
彼女の方を見る。
彼女も秀規を見ていた。
すぐ秀規は目をそらした。恥ずかしいので。
そして隣や前の同級生に話しかけた。
今日の秀規はなぜか女性に囲まれていた。
皆秀規のことを変わってないと口々に言う。
「僕のことなんて覚えてなかったでしょ?」
「そんなことないよ。覚えてるよ。」
秀規は嬉しかった。ここにいる同級生は秀規を覚えてくれている。
「ねえ、道子ちゃん今一人?」
「ええ。」
「学生時代からもててたよね。高嶺の花だったもんね。」
「そんなことないよ。今は仕事が恋人。当分結婚も無いと思う。」
秀規は黙って聞いていた。
そうか、独身かぁ。
あっ俺何を期待しているんだろうか?
俺には○○がいるんだから。
秀規はそう自分に言い聞かせた。
だけど、一層美しくなっていた道子を見て秀規は一気に青春時代へ
引き戻されたようだった。
もし、タイムリープできてあの頃に戻れて、彼女に打ち明けてたらどうなって
いたんだろうか?
どうせあっさり振られていただろうか?
彼女はもててはいたけど特定の彼氏とかは居なかったようだった。
好きな人はいたのかもしれないけれど、彼女はとても真面目な学生だった。

  807 :名無しさん:2007/07/23(月) 22:15:50

 秀規は今でも眩しい存在の道子をしっかり瞼に焼き付けておきたいと
思い、彼女を見つめていた。
「菊地君最近テレビで見かけないけどどうしてるの?」
「ああ、舞台中心だから。」
「そうなの。じゃあ地方まわり?」
「そうだね。土日は営業だから皆とは逆だね。」
「そうなんだ。東京でもやることあるよね?」
「うん、あるよ。」
「教育テレビは時々見るから、あの体操もう長いよね?
 私あの体操好きよ。」
体操好きよ・・・。
あなたのこと好きよ・・・じゃないのか。
おっと何を期待してるんだろうか?
秀規はこんなに道子を含め女子と学生時代話したことがなかった。
だけど今日は学生時代に話せなかった分沢山会話している。
なんだか夢見心地だった。


808 :名無しさん:2007/07/23(月) 22:26:22

2時間という時間はあっという間だった。
これほど時間が経つのが早いとは・・・。
秀規はもっと皆と喋っていたかったけど会も終了。
道子がデジカメを持ってきたから写真を撮らせてと言ってきた。
憧れの彼女と写れるなんて、とても照れる秀規。
「現像したら送るから、住所教えて?」
「うん。」
住所を渡す。
皆秀規と写真を撮りたがった。
こんなに皆にちやほやされるなんて、まあ今宵限りのことだろうけども。
気分が良かった。
そして三々五々別れ、道子は帰り際秀規にそっと囁いた。
「菊地くん、彼女いるの?」
「え?う、うん。」
「そう、やっぱりね。菊地君って昔から可愛かったもんね。
 あなたとても地味に振舞ってたけどあなたのこと好きだった子いたもんね。」
「えー嘘だろ。」
「いいや居たわよ。その子菊地君にバレンタインのチョコレート渡そうか
 悩んでたんだけどね。結局恥ずかしくて渡せずじまいだったの。」
「へーえ、知らなかった。」
「気がつかなかった?」
「っていうかそれ誰なの?同じクラスの子?」
「同じクラスよ。」
「うーん、分かんないよ。俺なんか好きになってくれる子なんて信じられない。」
「けっこう鈍感なんだねw。まあそういうことだから。」
「え?誰か教えてくれないの?」


810 :名無しさん:2007/07/23(月) 22:37:06

彼女はいたずらっぽく微笑んだ。
「まあ、これは宿題ってことで。次また会えたら教えてあげるw」
「えー、教えてよ、誰なのさ!」
「ふふふ。まあ宿題って事で。今日はお開き!」
「えー!気になるよ。今日眠れないじゃん。」
「菊地君。」
彼女が急に真剣な表情になった。
「あなたは普通の会社員になると思ってたけど、自分の才能生かした
 普通の人がなかなかできない道を歩いてるんだと思う。
 私あなたが芸人やってるって聞いて最初びっくりした。
 だけどあなたは真面目な人だから、きっと自分の道を切り開いていける
 人だと思う。だからこれからも頑張ってね。
 私あなたが東京で頑張ってるって思うと自分も頑張れる気がするから。」
秀規は彼女からそんな言葉を聞けるなんて思ってなかったので驚いた。
「ありがとう。君も頑張ってね。」
「じゃあね。」
「さよなら。」
彼女は夜の人ごみの中へ歩いていった。
彼女の姿が見えなくなるまで秀規は見送った。
この広くごみごみした東京の中で秀規の好きだった彼女は生きていた。
秀規は切なくなるのを感じながらそっとつぶやいた。
「道子ちゃんさよなら。」
秀規は反対方向へ歩き出した。
また何年後かに会える時自分はどうなっているんだろうか?
そして彼女もどうなっているんだろう。
考えても分からないけどまだ分からない未来を秀規は楽しみに待つことにした。

 

811 :名無しさん:2007/07/23(月) 22:50:15

 道子はしばらく歩いて振り返った。
秀規の去っていく姿が見えた。
彼女は立ち止まった。
彼の後姿を目に焼き付けるため。
涙があふれそうになってくるのが自分でも分かる。結構涙もろいのだ。
「菊地君・・・、答えは私よ。」
彼女はそっとつぶやいた。
あの時チョコレートを渡してたらどうなってたんだろう?
あの頃に戻れたら・・・。
でも今日再会して思った。
もうあの頃の菊地君ではない。
もう遠く手の届かない世界に彼は行ってしまった気がした。
沢山話せたけど、まだ学生時代の頃の方が彼を常に近くに感じていられた。
中学時代に好きになった人が人生の中で一番好きな人だって誰かから聞いたこと
があった。
今日彼に会えた時それが分かった。
あの頃のどうしようもない切ない想いがよみがえって来たもの。
だけどやっぱり15年の月日は長かった。
彼は変わってしまっていた。
私の大事な青春時代の君。
道子は溢れる涙をハンカチで押さえながらまた歩き出した。
「菊地君、幸せでいてね。」
彼女は地下鉄のホームへ消えていった。


812 :名無しさん:2007/07/23(月) 22:58:26

 後日秀規の元に道子から写真が送られてきた。
○○がその写真を見て秀規をからかう。
「どうしたん?菊さまハーレム状態じゃん!」
「うるさい!これは同窓会!」
「何よ。私のことなんて忘れてたんでしょ、鼻の下が伸びてますよwww」
「お前だって同窓会行ったんだろ?」
「あっ!これツーショットじゃないですか。
 もしかして・・・この人じゃないのかな?あこがれのキ・ミ!」
「ち、違うよ。俺は好きな人なんて居なかったもん。」
「菊さま慌てぶりが怪しいですよ。」
「もう、この話は終わり!」
「えーもっと見たい。それと菊さまの恋のお話聞きたい!」
秀規と○○はその後も押し問答を続けていた。
やっぱり今はこいつ居るのが一番楽しい。
秀規は宿題の答えを出せずにいた。
分からないままでいいのかもしれない。
俺はこいつのことが今一番好きだから。
秀規は道子の想い出は過去のアルバムと一緒に閉じることにした。
「○○好きだよ。」
「急に何ですか?話そらさないでくださいよ。」
「うるさい、好きだっていってるんだから返事しろ!」
「もう、菊さまったら。」

いつまでもこうしてじゃれあっていたい。秀規は心からそう思った。

Last modified:2007/09/30 13:12:05
Keyword(s):
References:
This page is frozen.