Create  FrontPage  Index  Search  Changes  RSS  Note  wikifarm  Login

桜の花びらが舞い散る頃には・・・

269 :名無しさん:2007/03/30(金) 21:35:48

 菊さまに身も心も愛され、女として満たされた私は精神的にとても安定していた。
菊さまは男にしては貧弱な体型だけども、私を抱く時はとても男らしくて素敵だった。
首が長くて、白いでく人形みたいな菊さまだけども、大きな喉仏をさわらせてもらって
改めて菊さまが男だったことを再認識できた。
いつも毒を吐かれている菊さまだが、私を女としてちゃんと扱ってくれて、私はとても
嬉しかった。
生理前で女としての欲求が高まっていたが、菊さまに満たしてもらうことができた私は、
予定通りに生理が来た。
いつもだったら精神的に安定しない、イライラ感があったりするのに、今回はそういうのが
無かった。いつもどおり過ごすことができている。
これも菊さまの愛の力なのかしら。


270 :名無しさん:2007/03/30(金) 21:42:58

 月末ということもあり、忙しい日々を送っていた。
だけど、芸能株式市場はちゃんと聞いた。だって菊さまの唯一まともな仕事。
こういっちゃあ悪いけど、菊さまたいしてお仕事ないんだもん。
ピタゴラは使いまわしだし、エンタにはさっぱり出なくなったし。
「ああお仕事してらっしゃるんだなあ。」って確認できるのは芸株だけ。
だから貴重な芸株を私は必ず聴く。
菊さまが大勝軒のカップラーメンについてまた熱く語っておられた。
だけど、一平ちゃんの方がダントツに美味いとまくし立てておられた。
菊さまの言っていること、なんかつじつまがあってるんだかあってないんだか?
時々変わった国語の使い方されるなあと感じることがある。
多分山田さんが居て、解説してくれなかったらこの人の言ってること理解できない
だろうなってことがある。
今のところ私と菊さまの間ではあまりそういうこと無いけど。まだ、それほど根を詰めた
話をしてないから。
あと、気になったことがあった。


271 :名無しさん:2007/03/30(金) 21:52:21

 サザエさんに荒川静香さんが出られた時、菊さまは台所で洗い物をされていたらしい。
サザエさんつけっぱなしにしていて、荒川さんの声がしてきたから急いで見に行ったら、
なんかあの中に素人が入ると異質な感じがしたとのこと。
私は荒川さんがサザエさんに出たことより、菊さまが一人寂しく洗い物をされていたという
ことが気になった。
寂しいことはないのかもしれない。この人変人だから、多分孤独に人一倍強いと思う。
私がもっと通ってあげて何でもしてあげたらいいんだろうけど、そうそう菊地邸へ通うことも
できない。菊さまって私の中では結構ずぼらな感じがしてたんだけど、本当はキチンとされてる
人なんだと感心した。
ごめんね、菊さま。もっと尽くしてあげたけど・・・。
いっそのこと私のこと嫁として迎えてくれたらいいのに。
でもそんなこと決して私の方からは口にできない。
菊さまの人生設計の中に果たして私は入っているのだろうか?
入ってないかもしれない。菊さまは自由に生きていくのがとても似合うタイプだと思う。
独身でおられるほうが大勢のファンの方々も内心喜ばれることだろう。
しかし、大の男が洗い物をしてるなんて・・・。
私の考えが古臭いのかもしれないけど、なんだか菊さまが不憫に思えてしまった。
菊さまに言ったらきっと「大きなお世話だ!バカヤロウコノヤロウメ!」と罵倒されることだろう。


272 :名無しさん:2007/03/30(金) 22:03:45

 とはいえ、菊さまが元気で仕事されていることにホットしながら私は眠りについた。
週末、会社での歓送迎会があった。
先輩のA子さんが寿退社され、あと、大阪支店、仙台支店から1人ずつ営業が異動してきた。
今週から営業が異動してきたわけだけど、特に大阪支店から異動されてきた横山さん。
私は大阪弁をあまり聞いたことがなかった。テレビでタレントさんや芸人さんが喋られてるのは
あまりなんとも思わないんだけど、仕事場で大阪弁を生で聞くというのは初体験だったから、
最初とても違和感を覚えた。
「○○さん、おおきに。」とか、「ほな、これでええですわ。」
なんか、すごく珍しい言葉に思えた。
横山さんはその大阪弁に似合わないといったら大阪の人に失礼なんだけど、とても
かわいらしい顔をしておられる。
かわいいのに、大阪弁。このギャップに私は少し興味を持ち始めていた。


273 :名無しさん:2007/03/30(金) 22:21:21

 飲み会は居酒屋だった。私は末席に座っていた。
上司の挨拶が終わり、乾杯をした。新入りの営業2人はそれぞれビール片手に
挨拶まわりしていた。
私のところに例の横山さんが来た。
「○○さん、今週はけっこうお世話になりっぱなしで・・・。」
「いいえ、お互い様ですから。これからも宜しくお願いしますね。」
「迷惑かけることもあるとおもいますんで、宜しくお願いしますわぁ。」
そう言って横山さんは自分の席にもどっていかれた。

1時間ぐらいして、宴も佳境に入ってきたところ、私がトイレから戻ると、
横山さんが私の隣の席に座っていた。
「おかえんなさい。○○さん、他になにか飲まれないんですか?」
関西独特のイントネーションで話しかけられた。なんかこそばゆい感じがした。
「ああ、何かのもうかなあ。」
私はライムのチューハイを頼むことにした。
横山さんも同じものを頼んだ。
「○○さん、何歳ですか?あっあまり女性に歳聞くのは失礼ですかね?」
「今年で30になります。」
「へー、そうですか。僕は35です。」
私は普通に対応していた。だけど、話していくうちに、いやいや、私の考えすぎなのかも
しれないけど、なんかこの人私のこと根掘り葉掘り聞きたがっているような感じがした。
プライベートのことまで聞き出してきた。
休日何してるかとか、もちろん自分のことも話されるわけだけど。
まさか、休日は菊さまにご飯作りにいってまーす!なんて言えるわけもなく。
適当に、「友達と遊んでます。」って答えといた。


274 :名無しさん:2007/03/31(土) 19:43:16

二次会まで行き、私は皆と別れ一人地下鉄の駅へ向かっていた。
「○○さーん!」
振り向くと、横山さんだった。
「どうしたんですか?」
「あの、実は、明日一緒に買い物に付き合ってくれまへんか?」
「え?」
「だめですか?」
「いいえ、どこへ?」
「東急ハンズとか、ロフト行きたいんですけど、道がようわからへんので。」
「分かりました。いいですよ。」
「じゃあ、明日何時にしますかね。」
「12時でどうですか?」
「じゃあ12時に渋谷駅で。」
「あ、じゃあメール交換しときますか?」
「そうですね。」
私達はメールの交換をした。

275 :名無しさん:2007/03/31(土) 19:47:13

 私はこの時大して何も考えてなかった。だけどこれを皮切りに私と菊さまとの
仲がしだいにおかしくなっていくことにまだ気づくはずもなかった。

 そのころ秀規は、ニュースで花見の中継を見ていた。
「ああ、○○と花見しに行きたいなあ・・・。」
秀規はさっそく○○にメールしてみた。
「○○へ
 明日かあさって夜でもいいから花見しに行かないか?
 返事まってます!       秀規 より    」


276 :名無しさん:2007/03/31(土) 19:51:44

地下鉄の中でメールを受信した私は、返事に迷っていた。
「明日の横山さんとの買い物の後にしようか?」

「菊さまへ
 明日多分夜いけると思いますので。無理だったらまた連絡します。
                          ○○より」
pipipip・・・
秀規は○○からのメールを受信し、一応明日約束を取り付けたので、満足
していた。
さあ、お弁当買っていこうか?それとも花だけ見て、その後レストランで食事?
秀規はワクワクする気持ちをかかえながら心地よい眠りについた。


277 :名無しさん:2007/03/31(土) 20:02:18

 次の日私は横山さんと待ち合わせ、買い物に付き合った。
東京の街がよく分からない彼を気遣いながら歩いていく。
菊さまだと、いつも先にスタスタと歩かれるから私が追いかけていく感じだけど、
今日は私が先頭に立って歩かなければならなかった。
でも、私は彼の買い物に付き合うことが苦にならないことに不思議な感じを覚えていた。
彼は仮にも私の上司になる人。それなりに気を使わなければならないと思ったけど、
なんだか、前からの知り合いのように馬があった。
遅めのお昼をカフェで取ることにした。
どこも多いから、コーヒーとパンだけの昼食。
だけど、彼という目新しい男性との食事は、私を別の新しい世界へ招待してくれているような
気がした。菊さまのことなど、とうに忘れていた。
私は彼の大阪時代の話や、プライベートのことを聞いた。
彼女は居たけど、大阪から離れたくないからという理由で最近別れたばかりらしい。
「転勤あると、そういうことってありますよね。女の人は地元から離れたくない人
 けっこういらっしゃるから・・・・。」
「○○さんだったらどうしますか?」
「私、一人っ子だから、結構悩むと思います。だけど、最終的にその人のこと好きだったら
 転勤ある人でも付いていくかな?」
私は結構マジで答えていた。自分でもなんでこんなに真剣に答えているのかおかしい気がした。


278 :名無しさん:2007/03/31(土) 20:09:22

 そのころ秀規は営業で関東の近辺で一生懸命いつものワンパターンねたを
やっていた。一元の客がほとんど。前の方にいつも見に来てくれている熱狂的な
客はいるけど、ほとんどの客が冷やかし、珍しさで秀規たちを見ているのだった。
30分ほどのライブ。今日も余裕で客を笑わせることができた。
ワンパターンな悲しいとき、どけどけ、アルゴリズム体操、行進、そして極めつけが
超駄作とファンの中でも定評のある、かわいいね。
後は、二人の嘘話を適当に話しとけばいいのだ。
そして最後にサインをプレゼント。
これでたっぷりのギャラがもらえるんだから、ちょろいもんだ。
寒さ暑さを我慢すれば、こんなに美味しい仕事は無いと思う。
秀規はつくづく自分はこの仕事についてよかったと思っている。


279 :名無しさん:2007/03/31(土) 20:15:47

 サラリーマンなんてかったるくてやってられるか!
秀規はもうこの芸人の世界にどっぷりはまっていた。
相方の山田が結構才能あるやつだから、奴にネタのことはまかしておけば
楽にやっていけると思っている。後は、役者の仕事を少ししてみたり、自分の好きな音楽の活動をしてみたり、
自分の好きなことを仕事にしていくことがきでるこの状態を永遠に保っていける妙な自信があった。
夢破れて消えていく芸人は星の数ほどいるが、俺様はきっと大丈夫に違いない。
秀規は今日の花見のプランを練っていた。
「そうだ!○○に桜の下でなにかプレゼントをあげようか・・・。」
何かロマンチックなものがいいなあ。
そうだ!指輪。彼女なのに指輪もあげてなかった。
帰りに早速ジュエリーショップへ行ってみよう。


280 :名無しさん:2007/03/31(土) 20:24:42

 その頃私達は買い物を終え、荷物が結構多いので、彼の家へ持って帰ることにした。
「どうもすみませんね。つき合わせてしまって。」
「いいえ、一人じゃ大変だから。」
私は快く彼の荷物を少しもってあげた。
30分ぐらいして、彼の家に着いた。
ワンルームの小さな部屋。まだあまり片付いてなかった。
仕事も忙しいし、なかなか男の一人暮らしって片付けが進まないものなのかもしれない。
私は上がらせてもらった。まだ4時だったので、お茶でも飲んでってといわれた。
お言葉に甘えてそうさせてもらうことにした。
部屋に開きかけたダンボールと棚があった。
「これ、もしかして本を入れるんですか?」
「ああ、そうなんです。なかなか暇が無くて、でも明日やろうと思ってますから。」
「じゃあ、入れるだけなら私しますよ。」
私はお茶が入るまでの間、少しでも手伝ってあげることにした。
文学小説や、辞書、営業に役立ちそうな指南本など、沢山あった。
結構本を読まれる方なんだなあ。私は彼がとても賢そうな男性のような気がしてきた。
そういえばあの人もよく本を読まれてたなあ。でもほとんど自己啓発本だったような・・・。
あれは自信のなさのあらわれだろうなあ、と今更ながら思った。


281 :名無しさん:2007/03/31(土) 20:32:30

 途中お茶を飲みながら、1時間かけて本を入れ終わった。
「助かりました。ありがとう。」
「いいえ、早く誰か手伝いに来てくれる方ができたらいいですね!」
すると、彼は恥ずかしそうに言った。
「できたらあなたみたいな人が来てくれたらいいんだけど・・・。」
私はびっくりしたけど、そういわれて悪い気はしなかった。
彼の今日の買い物の仕方とか、部屋の様子をみて、とても質素で堅実な感じがした。
私は菊さまのゴージャスな部屋を見慣れていたせいもあり、彼の部屋を見て、これが
本来の人の生活なんだと思い直すことができた。
菊さまは金使いも結構荒い。お金を平気で何十万も落としたり、自分が欲しいと思ったものは
絶対に買う。そのくせ、妙なところでケチだったりする。
菊さまはつくづく極端な人だと改めて思った。


282 :名無しさん:2007/03/31(土) 20:36:37

 私は菊さまとの花見の約束があることを思い出し、彼の家を後にした。
彼は駅まで見送ってくれた。
「じゃあ、また月曜日に会社で。」
「はい、来週も宜しくお願いします。」
「じゃあ、さよなら・・・。」
彼は私の両手をぎゅっと握り締めてきた。
びっくりしたけど、私は彼の目が真剣なのをしっかり見た。
ああ、私この人のこと好きになるかもしれない。
漠然とした思いだったが、確かにそのとき、私の心に彼が住み着きだしたのは
間違いなかった。


283 :名無しさん:2007/03/31(土) 21:55:59

秀規は仕事帰りにジュエリーショップに寄り指輪を買った。
きっと彼女が喜ぶに違いない!秀規は自信があった。自分は彼女に
愛されている。絶対の自信。
帰りに道に小さなレストランを発見した。
試しに見せの人に予約取れるか聞いてみた。
空いていると言われ、さっそく彼女に電話してみた。
「もしもし俺だけど。」
「もしもし、何ですか?」
「レストランの予約とれそうなんだけど、6時でいいか?」
「はい、分かりました。」
秀規はとりあえずレストランの予約を取った。
後は家に急いで帰って、お洒落な服に着替えよう。
その前にシャワー浴びて、埃を落とさなければ。
秀規は彼女の笑顔に会いたくてもうたまらなくなっていた。


284 :名無しさん:2007/03/31(土) 22:00:04

 私は菊さまに指定されたレストランへ急いでいた。
ここかなあ?けっこうお洒落っぽい店。こないだのファミレスみたいに
ケンカにならないようにしなければ。
でも、私の中でさきほどの彼のことが頭をかすめた。
気になってしょうがない。ああ、私二股かけることになるんだろうか・・・。
いいや、そんな勇気はない。しかし・・・。
菊さまにこんなことうちあけられるわけもなし。
私はなるべく平静を装い、菊さまの待つレストランへ入っていった。


285 :名無しさん:2007/03/31(土) 22:07:45

「○○〜!」
秀規は満面の笑みを浮かべ彼女を迎えた。
「菊さま、よくこんなお洒落な店みつけましたね。」
「俺ってセンスいいだろ?」
「センスはともかく、運が良かったですよね。」
「運てなんだよ。まあ、いっけど。コース料理にしたから。」
「高いんじゃないんですか?私あまりお金もってないから・・・。」
「大丈夫、俺のおごりだから心配するな。」
「でも菊さまっておごるって言って、お財布なかったりするから・・・。」
「大丈夫、ほらこれ見てみろ。」
秀規は分厚い財布を彼女に見せた。
彼女は安心した。しかし、同時にその分厚い財布を見て秀規と自分の間にある
見えない距離を感じていた。
秀規はそんなことに気がつくわけもなく、彼女を見つめていた。
ああ、こいつと出会ってそろそろ半年ぐらいかな?
最初はケンカ友達ぐらいにしか思ってなかったけど、いつの間にか彼女の魅力に
取り付かれている自分がいた。
彼女のこと、今ではとても愛しい。秀規は彼女に会うために自分は生まれてきたんだ、
今まであまりもてなかったのは彼女と出会いなさいっていう神さまの導きだったんだ。
秀規は自分でも顔がほころんでいるのが分かっていた。
今はもう彼女のことしか見えない。秀規の頭の中は彼女のことでいっぱいだった。


286 :名無しさん:2007/03/31(土) 22:17:03

 私は今日の上司の横山さんとの出来事を思い出していた。
あの人は普通のサラリーマン。仕事ぶりも大阪時代から社内で評判だったし、
話してみてとても誠実で頼りがいもありそう。
それになんと言っても経済観念みたいなものが私に似てる。
目の前にいるこの男。なんなんだろう。分厚い財布を見せられ前だったらとても
お金持ってて頼もしいって思ってた。
だけど今日は違う。何かが違う。目の前のこの男。職業は芸人。それもいつも詐欺みたいな
ワンパターン芸で高いギャラ稼いで、贅沢な生活を楽しんでいる。
毎日仕事してるわけじゃないのに、稼いでる額はきっとそこら辺のサラリーマンより多いだろう。
私や横山さんは毎日あくせく働いてわずかなものしかない。若いからっているのもあるけど、
目の前のこの男には分からない、きっと一生分からない苦労やしんどさがある。
ああ、きっとこの目の前の男はこういう苦労とかわからずに死ぬまで面白楽しく暮らしていくんだろうな。
私はそう思い出すと、この目の前にいる男に魅力を感じなくなっていく自分に気がついた。
私は確かにこの男のことがとても好きだったはず。
しかし、これから私も現実的に将来のことを考えていかなければならない。
そのとき、この男と一緒にこれからも居ることはいいことなのだろうか?
私は多分、これから先もこの人と一緒にいる自信は無いという確信がじわじわと心のそこから
上がってくるのが分かった。


287 :名無しさん:2007/03/31(土) 22:21:19

 秀規たちのテーブルに料理が運ばれてくる。美味しいそうなイタリア料理。
「こういうのお前好きだろ?」
「ああ、ええ・・・。」
「やっぱり。お前のこと考えてここにしたんだ!いただきまーす!
 もぐもぐ。うん、やっぱり美味しい。どう?」
「もぐもぐ、はい、美味しいです。」
秀規は彼女の笑顔を見て満足だった。
彼女を喜ばせることがこんなに自分にとって嬉しいことだったなんて。
これからも彼女をたくさん喜ばせていきたい。そう誓う秀規だった。


288 :名無しさん:2007/03/31(土) 22:27:00

 私は確かに美味しい料理だと思った。だけど・・・。
この男の笑みを見ても今日は何とも思わない自分が居る。
この人、一体何考えてるんだろう?将来のこととかどう思ってるんだろう?
そろそろ、二人の将来のこととか話してくれてもいいはずなのに。
まだ早すぎるんだろうか?私はもう30になるからあまりゆっくりしてられない。
女は20代後半ともなるとこういう将来のことは誰でも一度は考えるはず。
子供を産む年齢だって考えていかなければならない。
だけど、この男。そういう配慮があるとは思えない。
一生一人でいても平気そうなこの男。私なんか居なくてもやっていけそうだ。
それに第一子供があまり好きじゃないって前言ってたようなきがする。
それじゃあ、結婚も遠いきがする。自分で好き勝手に生きていくだろう。きっと。
私は菊さまが何か喋っていたけど、適当に相槌を打つだけだった。あまり無関心で
いると変に思われると思って、時々微笑んだりした。
確かに美味しい料理。だけど、私は一緒に食べる相手を間違えたような気がしていた。


289 :名無しさん:2007/03/31(土) 22:32:09

1時間ほどして料理を食べ終えた二人は店を後にした。
秀規は彼女を桜のある公園へ誘った。
ほぼ満開に咲いた桜は、秀規にとっては二人の愛を祝福しているかのように
思えた。さあ、今日は彼女にとっておきのプレゼントを渡さなきゃ。
秀規は空いているベンチを見つけ、彼女と座った。
「○○、目瞑ってごらん。」
「なんでですか?」
「いいから、つむれったら瞑れよ!」
彼女は促されるまま目を瞑った。
秀規は指輪を箱から出し、そっと彼女の左手を握り、クスリ指にはめた。
「さあ、目あけてごらん!」
「あー、指輪!」


290 :名無しさん:2007/03/31(土) 22:37:51

 私はびっくりした。この男が今頃になってこんなものくれるなんて。
「高かったんじゃないの?こんな綺麗な指輪私には似合わない。」
私はとても恐縮した。指輪の豪華さにもびびったけど、同時にもうこの男に
こんなことしてもらう理由もないような気がしていたから。
「そんなことない。お前にはいろいろ迷惑かけたし、俺のこといつも心配してくれてるし、
 今までのお礼だよ。これからもずっと一緒にいてくれよな!」
そういうとこの男は、私を抱きしめてキスしてきた。
私はされるがままになっていた。いつもならキスされるだけで全身熱くなる感じがあるのに、
今日の私は冷めていた。
この男にキスされてるときも、あの彼のことが頭をかすめる。

「なあ、今から家に寄らないか?」
誘ってきた。きっと行ったらベッドに誘われるだろう。
私はそんな気分になれなかったので、
「すみません、明日早くでかけなければならないので、今日は帰ります。」
「お茶飲むだけでもいいから。な?いいだろう?」


291 :名無しさん:2007/03/31(土) 22:41:04

この男の特徴。しつこい尋問がはじまった。
「すみません、本当きょうは疲れてるから・・・。」
「いいじゃないか、お前とまだ一緒にいたいんだよ。」
「私今週疲れてるんです。それに今日も一日中でかけてたし。
 明日もいそがしいから、本当ごめんなさい。また今度にしてください。」
「ふん!せっかくお前と居たかったのに・・・。」
タコのようにふくれっつらになっている。前だとかわいいと思ったけど、
今はもうどうでもよくなっていた。
「指輪ありがとうございます。大切にします。おやすみなさい。」
私はこの男に早くさよならしたかったので、足早に家路へと急いだ。


292 :名無しさん:2007/04/01(日) 17:06:19

帰ると彼からメールが入っていた。
「○○さんへ
 今日はありがとうございました。とても助かりました。
 明日もまた片付けの日々になりそうです。
 それではおやすみなさい。          横山 より」

私もおやすみなさいのメール返信をした。
私は菊さまからの指輪を外した。
彼のことが頭から離れなくなっている。ああ、もう好きになってるんだ。
私は無性に彼に明日も会いたくなっていた。
なんとか理由を作って会いに行きたい。


293 :名無しさん:2007/04/01(日) 17:15:08

 私は次の日用事を済ませ昼すぎ、思い切って彼にメールしてみた。
「横山さんへ
 今あなたの家の近所まで来てるんですけど、片付けのお手伝いしに
 行ってもいいですか?迷惑でなければ・・・。
                      ○○より」
返事を待っていると、メールが来た。
来てもいいけど、いいの?って入ったからもちろんOKですと返信して
私は彼の家へ向かった。
途中ケーキを買って。

ピンポーン!
「はーい。」
「○○です。」
「あ!どうぞ。ごめんね手伝いに来てもらって。」
「いいえ、ちょうどここら辺で用事があったから。あなたのこと気になって。」
私はとてもドキドキしていた。
彼の笑顔に会えてこんなに嬉しいなんて。
私はさっそく掃除やら、引越し荷物の整理を手伝った。
2時間ぐらい手伝ったところで、休憩した。
「持ってきたケーキ食べましょう!」
彼がお茶を入れてくれて、二人でケーキを食べた。


294 :名無しさん:2007/04/01(日) 17:19:08

 彼と話してるととても楽しい。新鮮。
大阪弁だから面白いし。
ケーキを食べた後も片付けを1時間ほどしていたら、夕方5時。
そろそろ帰らなければ。
「私もうそろそろ帰ります。」
「あっこんなに手伝わせてしまってごめんね。どう?よかったら夕飯たべて
 行かない?僕なんか作るから。」
「えー料理されるんですか?」
「そうなんだ。どう?」
どうしようか。でも食べてみたい。
「はい!じゃあ夕飯食べて帰ります!」


295 :名無しさん:2007/04/01(日) 17:32:56

 彼が冷蔵庫に残ってるもので適当に料理を作ってくれた。
肉野菜炒め、玉子焼き、味噌汁、ご飯。
質素だけど、私は男の人に料理作ってもらうの初めてだったのでとても
感激していた。
「すごく美味しいです。」
「そう?照れるなあ・・・。」
照れた顔もまた可愛い。

夕食後食器を洗い、そろそろ帰ろうとした。
すると彼が私を見つめてきた。
私も彼を真剣に見つめる。
どちらからともなく近づいた。
私は目を瞑った。
彼はそっと私に優しくキスしてくれた。
私は嬉しさが全身からこみ上げてくるのが分かった。
「ごめん。びっくりさせたかな。」
「いいえ。」
私は彼の胸に抱きついた。
彼は優しく抱きしめてくれた。
そのとき私は思った。
「早くあの人と別れなきゃ!」


296 :名無しさん:2007/04/01(日) 17:42:10

 私は彼との別れを惜しみつつ、家路へと急いだ。
そして家に着くと急いで自分の部屋に戻り、菊さまからもらった指輪を
探した。
それと、護身用にカッターナイフを持って・・・。


297 :名無しさん:2007/04/01(日) 17:45:39

ピンポーン
「はい?どなた?」
「○○です。」
ガチャ!
「おお、どうしたんだ?」
「ちょっと今いいですか?」
「いいよ、どうぞあがって!」
私はリビングに通されるとさっそく話を切り出した。
「あの、私の掛け布団返してください。」
「ああ、あれ?なんで?」
「必要だから、返してください。」
「でも、お客用あるんだろう?」
「もう、お客用使えなくなるから。」
「そうなの?じゃあ、分かったよ。」
菊さまは渋々承知してくれた。
まあ、承知しなくても無理やり私は持って帰る気でいたのだけど。


298 :名無しさん:2007/04/01(日) 17:50:33

 私は掛け布団を玄関まで運び、またリビングに戻った。
さあ、落ち着いて言わなければ。
「菊さま、この指輪返しますね。」
「は?な、なんで?」
「もういらないから。」
「デザイン気に入らなかったのか?じゃあ、新しいの買ってくるから。」
「そうじゃないんです。もう必要ないから。」
すると、菊さまの表情が曇っていくのが分かった。
「まさか、もしかして・・・。そういうことなのか?」
菊さまが悲しそうな目をされた。
「はい、私達しばらく会わない方がいいと思います。ていうか、私はそうしたい。」
「なんで?なぜなんだ!理由を言えよ!」


299 :名無しさん:2007/04/01(日) 19:13:42

私は暫く黙っていた。本当のこと言うべきか。それとも適当に濁して
この場は逃げるべきか?
私が黙っていると、菊さまは、はっ!と気がつかれたような表情になり、
私を見てニカーっと笑った。
「ははは!そういえば今日はエイプリルフールだったな!
 お前演技へたくそ!バカヤロウコノヤロウメ!w」
菊さまはおなかを抱えて笑われた。
私は意を決して正直に話すことにした。
「演技じゃありません。他に好きに人ができたんです。」
「ふふふふ、お前、もういいよ!俺を驚かそうとしたんだろうけどw」
「驚かそうとしてんじゃありません。好きな人ができて、その人と付き合うことに
 なると思うから。もう、菊さまとは今までのように付き合えません。」
すると菊さまは笑うのをやめられた。


300 :名無しさん:2007/04/01(日) 19:19:36

「好きな人できたって、お前のことそいつが好きじゃなきゃ、付き合いは
 成立しないぞ!」
「はい、分かってます。」
「分かってて言ってるのか!」
「はい、その人だったら私の事大切にしてくれそうなんです。」
「おい!お前、俺だってお前のこと大切にしてきたぞ!」
「はい、それはもう本当に感謝してます。」
「感謝しててこの仕打ちか!お前馬鹿か!」
「なんと言われても結構です。でももう決めましたから。」
「俺は絶対許さないぞ!なあ、嘘だろ?冗談で言ってんだろう?」


301 :名無しさん:2007/04/01(日) 19:24:57

菊さまは懇願するような目で私を見つめた。
いくら見つめられても私の腹は決まっている。
「冗談じゃないです。分かってください。」
「分かれってお前分かるわけ無いじゃんか!相手は誰なんだ!」
「菊さまの知らない人です。会社の上司です。」
「上司って・・・。何歳だ?」
「35です。」
「なんだ、おっさんじゃないか。俺のほうが若いぞ!」
「若いとか歳とかそういう問題じゃないんです。」
「じゃあ、そいつのどこがいいんだよ!」
「全部です。」
「ぜ、全部?」
菊さまは絶句された。


302 :名無しさん:2007/04/01(日) 19:29:06

秀規は返す言葉が無かった。全部好きって、じゃあ俺は全否定か?
○○が表情一つ変えずにさっきから話すのを見て、秀規はどんどん事の
重大さに気づき始めていた。
「全部って意味わかんねー。」
「とにかく、菊さまとは私生きる世界が違いすぎるって、その彼と出会って
 今更ながら気がついたんです。菊さまのこと本当に好きでした。
 でも、私達お金の使い方とか、仕事とか、生活のリズムとか、あまりにも
 違いすぎると思いませんか?」
「そんなこと、今更・・・。そんなの最初から分かってたことじゃないか!」
「そうなんですけど・・・。」


303 :名無しさん:2007/04/01(日) 19:33:16

「だいたい、お前から俺に声かけてきよな!
 そんなことしといて、飽きたからハイサヨナラって勝手すぎやしないか?」
「勝手なのは分かってます。どうか許してください。いえ、許してくれなくても
 いいです。どうぞ、こんな私、ぶってください。そして振ってください。」
秀規はものすごい怒りと悔しさがこみ上げてきた。
こんな仕打ちをされるとは思ってもみなかったこと。
彼女の首を絞めたい衝動にかられた。
衝動をなんとか押さえることができた秀規は冷静になることにした。


304 :名無しさん:2007/04/01(日) 19:38:47

台所に水を飲みに行った秀規は、落ち着いて考えることにした。
多分あの彼女の表情からして、彼女は別れたがってることは間違いないようだ。
でも俺は・・・・。別れたくない。これが本心。
でも向こうには好きな人がいる。それも多分両思い。
急に別れろっていわれてもこっちは何の心の準備もできてない。
秀規はリビングに戻った。
「なあ、今すぐ別れるのは俺は無理だ。考える時間をくれ。」
「わかりました。じゃあ、1週間後に返事ください。じゃあ、帰りますから。」
「なあ、お前先週俺に抱いてくれって頼んだの、あれなんだったの?」
「あの時は菊さまのことしか見てなかったから。彼と会ったのはその翌日からなんです。」
「えっ?なんだって!」


305 :名無しさん:2007/04/01(日) 19:42:13

「彼は先週の月曜日に転勤してきたんです。」
「おい!お前大丈夫か?そんな1週間で人のこと分かるわけ無いだろう?」
「はい、自分でも不思議なんです。でもなんていうかビビビってきたんです。」
「は?お前頭おかしくなったか?」
「おかしいっていわれても仕方ありません。でも私多分その人と結婚することに
 なると思うんです。」
「そんな、お前だまされてるんじゃないのか?」
「いいえ、たとえ結婚できなかったとしても、多分あなたといるよりはマシだと思うから。」
「な、なんだと!俺よりマシって・・・。俺ってそんなに下に見られてたのか。」
秀規はショックを受けた。


306 :名無しさん:2007/04/01(日) 19:47:13

「すみません、今のは言い過ぎました。でも菊さま私と結婚する気ないでしょ?
 私はもう自分の年考えて結婚や子供産むことかんがえなきゃならないんです。
 でも、菊さまはそういうこと考えてくれないから。」
「だってお前、結婚したいとか言わなかったじゃないか!」
「だって菊さまって自由に暮らしておられるから、結婚なんて持ち出したら
 嫌われると思って言い出せなかったんです。」
「言ってくれれば俺だって真剣に考えた。今からだって考えるよ。」
「いいえ、もうあなたとは価値観とか違うと思うから。」
「そんなことない。俺はお前のこと愛してるし、俺のこと分かってくれるのは
 お前しかいないんだ!今から真剣にお前との将来考えるから。な!」
「いいえ、もう私はかんがえられないから。じゃあさよなら。」
彼女は布団を抱えて出て行った。


307 :名無しさん:2007/04/01(日) 19:51:31

秀規は持っていたコップを思いっきり床にたたきつけた。
そしてその場にへたりこんでしまった。
「なんで、なんでなんだ・・・。神様、なぜこんな仕打ちを・・・。」
秀規は涙が溢れてきたけど、もう拭う元気もなった。
もうだめだ。彼女はもう戻ってきそうにも無い。
先週はあんなに愛し合ったのに。
女心と秋の空っていうけれど、こんな1週間で心って変わるものなのか?
もう、誰のことも信じられない。
秀規はその晩涙で枕を濡らす夜となった。
朝まで涙が止まらなかった。


325 :名無しさん:2007/04/07(土) 22:20:17

○○から別れを切り出された夜、泣くだけ泣いてもう体中の水分全部抜け切った
ぐらい涙が出たひでのりだったが、翌日もその翌日も夜になると涙がジワリと出てきた。
仕事をしているときは忘れているのだけど、家に戻ると悲しみが襲ってくる。
何度も何度も自問自答した。
なぜ彼女の心が離れてしまったのだろうか?たまたま他に好きな人が現れたからか?
そうでなくとも離れる運命だったのだろうか?
彼女の言った言葉が今でも胸に突き刺さっていた。


326 :名無しさん:2007/04/07(土) 22:25:37

「お金の使い方、仕事、生活のリズム、結婚・・・・。」
彼女が秀規に対してこんなにいろいろ違和感を持っていたとはつゆ知らず。
彼女は自分のこと愛してくれてるとみじんも疑わず。
俺は結局彼女の考えてること、思ってること何も分かってなかった。
彼女が結婚のことで悩んでたなんて。
秀規は自分でも少し我ままで自由奔放なのは分かっていた。
でも、愛する彼女と一生一緒に居るためなら、それなりの覚悟はできたはず。
秀規はなぜ少しでも将来について彼女と話し合う機会を持たなかったのか、
悔やんでも悔やみきれなかった。
少しでも話していれば、彼女の心を繋ぎとめることができたのかもしれない。


327 :名無しさん:2007/04/07(土) 22:29:51

指輪を返された今、もう彼女を説得させるだけの力は自分には無い気がした。
1週間後の約束でもう1回会うことになっている。
なんて気持ちを伝えればいいのだろうか。
もう伝えたところでだめなのかもしれない。
でも最後に伝えなければ。
秀規は意を決して、彼女に本音でぶつかることに決めた。


328 :名無しさん:2007/04/07(土) 22:34:46

 菊さまに別れを切り出してから、私は胸のつかえがおりたような感じで
これで思う存分彼との交際を楽しめると期待していた。
母にも菊さまとの別れを報告した。
母はさすがにびっくりしていた。
「本当なの?」
「うん。まあ、向こうがまだ納得してなくて、この日曜日にまた話し合うんだけど。」
「そりゃあ、納得しないでしょう。ちょっとあなた勝手すぎない?」
「それはもう、私が悪いと思ってる。だけどどうしようもないの。
 もう、横山さんのこと好きで好きでしょうがないから・・・。」
「その横山さんって、あなたと本当に付き合ってくれるって言ったの?」
「いいや、まだ。だけど、私のこと好きなのは間違いないみたいなの。」
「そんな、あいまいな。」


329 :名無しさん:2007/04/07(土) 22:41:56

母はあまり菊さまとの別れ、横山さんとの新しい交際を快く思ってくれなかった。
仕方ない。少しずつ分かってもらうようにするしかない。
私はそれから、横山さんと平日の夜もお食事しに行ったりした。
同じ会社だからお互い何時に仕事が終わるか分かるし、なんと言っても休みも
同じだから付き合いやすい。
菊さまだとこうはいかないもんな。
彼とのデートは私にとってかけがえの無いものになった。
彼の笑顔に会えるのがとても嬉しい。社内では二人とも平静を装っていたけど、
一歩会社から出ると、もう二人だけの愛の世界。
とはいってもさすがにまだ身体の関係は無かった。
私は菊さまのこと完全に決着がつくまではそういう関係にはなれないと思っていた。
それにもう少しデートを重ねて彼のこともっと知りたかった。
でも、デートの終わりには必ず彼は私を抱きしめてくれて、キスしてくれた。


330 :名無しさん:2007/04/08(日) 19:34:23

 秀規はライブを終え、足早に○○との待ち合わせ場所である公園へ
向かっていた。
途中、○○と初詣した思い出の神社へ立ち寄った。
「どうか神様、○○と別れたくありません。でもどうしようもないのでしょうか?
 なんとかしてください。その為なら命を懸けます。」
秀規は一生懸命神頼みした。気休めにしかならないかもしれないけれど、もうなんでも
いいからすがりたい気持ちだった。
桜が満開にさく公園。ついこの間彼女と眺めたこの桜。この桜の下で口づけを交わしたのに。
もうその時すでに彼女の心は秀規からは離れていたんだろうか?
少し冷たい風が秀規の頬をかすめる。
彼女が来るのをひたすら待つ秀規だった。


331 :名無しさん:2007/04/08(日) 19:39:42

 その頃私は菊さまとの待ち合わせ場所へゆっくり向かっていた。
今日、必ず決着をつけなければならない。そうでないと幸せになれない。
私は意を決して、菊さまと刺し違えてもいい覚悟で今日は子刀と防犯ブザーを
鞄にしのばせた。
そして母に、1時間たっても戻らなかったら見に来てくれと頼んだ。


332 :名無しさん:2007/04/08(日) 19:46:00

「菊さま。」
彼女が来た。
「ああ、元気だったか。」
「はい。菊さまも。」
二人の間に気まずい雰囲気が漂う。
「まあ、そこに座ろうか。」
秀規は彼女を促し、ベンチに座った。
いつまでも黙っていてもしょうがないので、秀規から話を切り出すことにした。
「さっそくだけど、お前の気持ちは先週と変わってないの?」
「はい。変わりません。」
やっぱり、だめか・・・。
でもしょうがない。自分の気持ちだけははっきり伝えなければ・・・。


333 :名無しさん:2007/04/08(日) 19:55:29

「俺の気持ち聞いてくれ。
 俺は、お前のこと今でも愛してる。お前を嫌いになることもあきらめることも
 多分できないと思う。時が経てばあきらめて忘れられるのかもしれないけど、
 相当時間がかかると思う。だから俺は無理にお前のこと嫌いになろうと思わない。
 付き合うのはあきらめるけど、お前に代わる誰かが現れるまで、俺はずーっとお前の
 事を想って行こうと思う。
 これが俺の答え。」
「分かりました。私の事好きで居てくれるのは菊さまの自由ですから。どうぞ勝手にしてください。
 でも私はもう菊さまのこと好きではないから。それはちゃんと分かってくださいね。」
「分かってる。」
秀規は自分の本心を伝えることができて少しスッキリした。
だけど、彼女とはもうお別れ。寂しさが募る。
「菊さま、合鍵返しますね。それと、菊さま、私の裸スケッチしたのまだ持ってるんですかね?」
「ああ、持ってるよ。」
「あれ、処分してもらえませんか?それか、私に返してください。タダとはいいませんから。」
「そんな、何心配してんのか知らないけど、アレは俺のものだから。お前には渡せない。」
「でも、何に使われるかわからないから。」
「心配しなくてもいいよ。絶対誰にも見せないし、家から持ち出すことも無い。
 どこかに流すこともしないから。約束する。」
「本当ですか?じゃあ絶対ですよ。」


334 :名無しさん:2007/04/08(日) 20:02:08

アレだけはなんと言われても渡せない。
だって秀規にとって大事な大事な宝物。

「じゃあ、菊さま私そろそろ帰りますね。」
「ああ。お前、その彼と本当に結婚できそうなのか?」
「わかりません。だけど順調に交際してますから。多分そうなると思うんです。」
「そうか・・・。じゃあ幸せになれよ。」
「ありがとうございます。菊さま、今まで本当に愛してくれてありがとう。
 菊さまのこと一生忘れません。それにこれからもいつここのファンでいますから。」
「分かった。俺こそありがとう。お前と会えて本当に幸せだったよ。」
秀規は自分でも涙がこぼれそうになっているのが分かった。
だけど男だから我慢しなければ。
「じゃあ、菊さまさようなら・・・。」
彼女がゆっくり去っていく。


335 :名無しさん:2007/04/08(日) 20:07:38

 私は自分から菊さまに別れを切り出したことを少し酷だったかなあと感じていた。
菊さまをとても傷つけたと思う。だけど自分の幸せを掴む為には仕方ないこと。
自己中だと言われても仕方ない。
そう思いながら私は菊さまに背を向け、去ろうとした。
すると駆け寄る足音がした。
そして私を背後から菊さまが抱きしめた。
「き、菊さま・・・。」
「ごめん。どうしても最後だと思うと、悲しくて、寂しくて・・・。」
私は背中越しだけど、菊さまの悲しみが伝わってきた。


336 :名無しさん:2007/04/08(日) 20:13:58

「菊さま、ごめんなさい。本当ごめんなんさい。」
「謝らなくていいよ。益々悲しくなる。それより、最後のお願い聞いてくれないか?」
「何ですか?」
「嫌かもしれないけど・・・。最後にお前のこと抱きしめたいんだ。」
「・・・。分かりました。」
私は菊さまに言われるがまま菊さまと向かい合った。
菊さまは私を強く抱きしめた。
私はこれで最後だから、されるがままになっていた。


337 :名無しさん:2007/04/08(日) 20:20:52

秀規は強く強く彼女を抱きしめた。
今までで一番愛した女性。心から好きだった彼女。
秀規はその想いを伝えるかのように、抱きしめた。
そして、最後の口づけをした。
彼女の柔らかい唇。もう二度と触れることもできない頬。
秀規は一筋の涙を流しながら、彼女に厚い口づけをした。

涙を拭い、彼女と反対方向へ歩き出した。
もう振り返ることも無い。
秀規の唇に桜の花びらが優しく引っ付いてきた。
まるで、秀規を慰めるかのように。彼女との甘酸っぱい思い出。
これらの思い出は無駄ではなかったはず。
きっと自分は強くなれるはず。そして人に対して優しくなれるはず・・・。
秀規はいろいろな想いを胸に、家へ帰るのだった。

Last modified:2007/09/28 08:57:56
Keyword(s):
References:[FrontPage] [小説(全てフィクションです)]
This page is frozen.