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貴方の想いと私の気持ち

552 :名無しさん:2007/06/03(日) 19:35:46

 私はその後49日の法要を済ませた。
大阪から彼のご両親、兄弟も駆けつけ、形見分けもした。
私は彼に結納返しの時に渡した腕時計をもらうことにした。
彼は事故に遭った時その腕時計をしてなかったので、時計は
無事に家に残っていたのだった。
次の日、私と両親は彼の家族と一緒に大阪へ納骨へ行った。
大阪郊外の墓苑。
彼のご両親が早めに立てておられた墓。
結局最初に長男である彼が入る羽目になるとは本人も思ってなかっただろう。
私はこれで彼のことを断ち切れるとは思えなかった。
心の中のもやもやした霧は当分晴れることはないだろう。
だけどこの日は一つの区切りになった。


553 :名無しさん:2007/06/03(日) 19:45:50

帰りに彼の実家に寄った。
お茶を飲みながら彼の子供の頃のアルバムを見せてもらった。
あどけない笑顔。
私はアルバムを見ながら、彼との間に子供が居たらきっと彼にに
似た可愛い子が生まれていただろうと考えた。
自然に涙が溢れてくる。

「○○さん、これからのことだけど・・・。」
「はい。お義母さん。」
「あなたはまだ若いし人生長いから新しい出会いを求めて強く生きていってな。私は○○さんがあの子の嫁さんになってくれて、
とても感謝してる。だから○○さんにはこれから幸せになるためにやり直してほしいんや。」
「分かりました。でも当分私一人で居ると思います。
 3回忌ぐらいまではとてもそんな気分になれないような気がします。」
「そんな、いつ新しい縁があるかわからへんのんやから。
 いい話があったら乗るようにしてな。
 法要なら私らだけで十分できるし、いつまでもあなたを縛り付けることはできへん。な、よう考えてな。」


554 :名無しさん:2007/06/03(日) 19:50:05

 私達親子はその日東京へ戻った。
駅まで見送りに来てくれた彼のご両親に手を振っていると、また
涙が出てきた。
ご両親に結局たいした親孝行もできず、孫の顔も見せれず、中途半端に終わってしまった結婚生活。
不慮の事故とはいえ、なんてあっけなかったんだろうと思うと、
新幹線の中で私はまた涙を流していた。


555 :名無しさん:2007/06/03(日) 19:56:10

 私が東京に戻った翌日。
菊さまから電話があった。
「もしもし俺だけど。」
「はい、菊さまどうされたんですか?
」 「その後どう?」
「はい、先日納骨を済ませました。」
「ああそうなの。」
「借りてた家も引き払うことにしました。
 形見分けも済ませましたし。」
「じゃあ実家に完全に戻るんだね。」
「はい。また親のすねかじる事になります。
 出戻りです。」
「そんなこと気にするな。仕方が無く戻るんだから。
 なあ、お前の気晴らしにどこか出かけないか?」
「出かけるって、どこへ?」
「お前の行きたいところどこでもいいよ。」
「別にこれといってないんですけど。」


556 :名無しさん:2007/06/03(日) 20:01:21

「じゃあ、食事でもいこうよ。」
「ええ、でも、彼女がいらっしゃるのに・・・。」
「友達として行くんだから。
 じゃあ明日はどうかな?」
「はい、別にいいですけど。本当にいいんですか?」
「いいよ、お前が少しでも元気になってくれればいいんだから。」
「分かりました。」
「じゃあ、俺が店予約しておくから。またメール入れるから、
 じゃあな!」


557 :名無しさん:2007/06/03(日) 20:09:23

 翌日秀規は○○を迎えに行き、ホテルの中の見晴らしのいい
レストランへ彼女を招待した。
「菊さま、なんだか高そうなお店だけど大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、俺がおごるから。」
「菊さま財布落としてないでしょうねw」
「そういえばそういうことあったよな昔。
 東京タワーだったけ?
 まったくお前は嫌なこと思い出させるなあ。」
でも○○の笑顔が少し見れて秀規は安心した。
テーブルに着き、ワインを少し飲む。
夜景がとても綺麗だった。
「夜景見るのすごく久しぶりだなあ。
 菊さまありがとうございます。」
「どう?気に入った?
 少しでもお前が楽しい気分で居てくれたら俺は嬉しいよ。」
「菊さまってなんだか私と付き合ってたときより優しくなられましたね?」
「そう?変わらないと思うけど・・・。」
「いいや、絶対優しくなったと思う。
 付き合ってる人がきっと優しい方なんでしょうね。
 だから菊さま少し性格が丸くなられた感じがしますもん。」
「じゃあ昔は尖ってたっていうのか!」
「私達付き合ってるときしょっちゅうケンカしたり悪戯したりしてましたもんね。」
「まあ、そうだな。俺達子供だったのかなあ?」
「そうかもですね。でもそんなに昔でも無いような気がしますが・・・。」


559 :名無しさん:2007/06/03(日) 21:10:36

「なあ、お前もう仕事始めたりするのか?」
「ええ、そのつもりなんですけど。
 まあ、とりあえずアルバイトになると思います。」
「そうか。それでいいんじゃないのか?
 なあ、お前がよければ、連れて行きたいところがあるんだけど。」
「どこですか?」
「・・・。岩手に行ってみないか?」
「い岩手?・・・。」
「嫌か?」
「嫌じゃないですけど・・・。
 菊さまとですか?」
「他に誰と行くんだよ!もちろん二人で。」
「菊さま、もう私達恋人じゃないんですよ。
 菊さまの彼女に申し訳立たないじゃないですか。
 私が彼女だったら絶対嫌ですもん。」
「そんなの・・・。
 関係ねえぞ!俺はお前を絶対岩手へ連れて行く!」
「そんな強引な。第一彼女になんて説明する気ですか?」
「そんなの友達と旅行に行くと言えばいいよ。」
「そんなの絶対ばれると思う。」
「バレタって構わない。
 俺はお前をもっと元気にさせたいんだ。
 俺達友達だろ?
 友達を元気付けて何が悪いんだ?な?いいだろう?」


560 :名無しさん:2007/06/03(日) 21:18:10

「なぜ岩手に行く必要があるんですか?」
「そりゃあ、東京より空気いいし、美味しいものもあるし。
 岩手の大自然を見ればお前が元気になれると思ったんだ。
 お前の体調が悪いのって精神的ものだろう?
 なら、旅行や温泉入って気分転換しろよ。」
「そんなの菊さまにしてもらわなくても、自分で勝手にどこかに
 行きます。」
「そりゃあお前自身でもどこかへ旅行へ行けばいいよ。
 ただ俺はお前の力になりたいんだ。
 だったら俺の地元の岩手がいいんじゃないのかとおもったんだよ。」
「お気持ちはありがたいです。
 だけど、やっぱり私の気持ちの中にはまだ彼が住んでいるし、
 菊さまの彼女に悪いから・・・。」
「そんなこと言ってたら前に進めないよ。
 絶対気晴らしになるよ。
 お前がこれから力強く生きていくように応援したいんだ。」
「菊さま、連れて行く相手が違うと思います。
 まず彼女を連れて行ってあげなきゃ。
 そしてご両親に紹介してあげたらいいのよ。」
「俺と彼女のことはお前には関係ない!」
「じゃあ、どうぞご勝手に。
 でも私は行かれないよ。」

562 :名無しさん:2007/06/03(日) 21:23:15

「いや、俺は絶対お前を連れて行くぞ!」
「そんな・・・。困ります。」
「困ることなんかないよ。
 お金も全部出してあげるし、何も心配するな。」
「そんな、お金だしてもらう筋合いないし。」
「いいじゃないか。
 俺にとってお前は妹みたいな存在だ。
 妹に金出してやって何が悪い!」
「菊さま、お願いです。そこまでしてもらわなくても私ちゃんと
 生きていきます。菊さまは時々私の話し相手になってくだされ
 ば良いですから。
 それだけでとても有り難いですから。」
二人はその後も押し問答を続けた。


563 :名無しさん:2007/06/03(日) 21:34:24

1時間半後、押し問答を続けながら食事を済ませた二人は
ホテルを後にした。
帰りの地下鉄の中でもまだしつこく秀規は岩手行きを勧めていた。
「なあ、いいだろう。
 彼女のことは気にするな。
 お前に迷惑かけることはしないから。」
「それは、できないって言ってるでしょう?
 絶対無理です。」
「もう、どうしたらいいんだよ。」
「菊さま、岩手、菊さまと一度行ったことありましたよね。
 あの時は日帰りだったからまたいつかゆっくり行ってみたい
 って思ってました。
 菊さまの故郷だから多分すばらしい所だと思います。
 岩手に行ってみろって言うなら私行きます。」
「おおそうか。じゃあいつにする?」
「一人で行きますから。」
「はあ?なんでそうなるんだよ!」
「私も子供じゃないんだから、それぐらい一人で行けます。
 どこか旅行に行きたいとは思ってたんです。
 そんなに菊さまがすすめるなら、私一人旅してこようと思います。
「一人じゃ危ないよ。俺が着いて行く。」
「大丈夫。菊さま、本当にありがとう。
 菊さまやっぱり私にとって兄みたいな存在です。
 心から心配してくれてありがとうございます。
 必ず岩手に旅行しに行きます。
 その頃には私も大分元気になれる気がします。」
秀規はもう何も言わなかった。
彼女への想いが溢れてきて止まらなくなっている自分が居る。


564 :名無しさん:2007/06/03(日) 21:40:50

どうにも止まらないあふれ出る想いをどうすることもできない。
地下鉄を降り、二人は自分達の町を歩いていく。
途中公園に入り、二人はベンチに座った。
「なあ、本当に一人で大丈夫か?」
「はい、大丈夫。
 すぐには行けないと思うけど。必ず一人旅してみせますから。」
秀規は思わず彼女の頬を触った。
「菊さま、どうされたの?」
次の瞬間、秀規は彼女をおもいっきり抱き寄せた。
「き、菊さま・・・。だめ。だめよ。私達・・・。」
彼女の言葉を遮るように秀規は口づけをした。
彼女のことやっぱりずっと愛してたんだ。
この想いはとめられない。


565 :名無しさん:2007/06/03(日) 21:48:45

 私は突然の菊さまからの口づけに戸惑ったが、菊さまのものすごい力によって拒むことができずにいた。
なぜ?菊さまどうして?
私の中に疑問が走る。
ようやく菊さまが唇を離してくれた。
でも私を強く抱きしめたままだった。
「菊さま、離して。人に見られたら嫌だから。」
「ごめん。俺今日どうかしてるわ。」
「私帰りますね。今日はご馳走様でした。
 菊さま心配してくれてありがとう。嬉しかったよ。」
「じゃあな、いつでも電話してこいよ。
 また俺もメールするから。おやすみ。」
私は帰りながら、菊さまの想いにうすうす気づく自分に戸惑いを
覚えていた。
私達の関係がまた今までと違う方向に向かうのだろうか?
私は戸惑ったままの心で家にたどり着くのであった。

Last modified:2007/09/29 13:28:41
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