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貴方に傍にいてほしい

465 :名無しさん:2007/05/13(日) 17:52:52

ある日菊地邸にリカコが訪ねてきた。
週に1度は必ず来て掃除をしたり食事を作ってくれる。
「今日は天気がいいからシーツとか大きいもの洗おうと思うの。
 シーツの替えある?」
「ああ、押入れの中にあるBOXの3段目にあるよ。」
「分かった。秀則さんごめんけど買い物行ってきてくれる?
 午前中の方が新鮮なものがあると思うから。メモはこれ。」
「分かった。じゃあ行ってきます。」
「いってらっしゃい。」
1人になったリカコは洗濯にとりかかる。


466 :名無しさん:2007/05/13(日) 18:00:54

洗濯物を洗濯機に放り込んで、布団を干した。
そして秀規が言ったとおり、押入れの中にある予備のシーツを探す。
「たしか、ここら辺かな?」
ふとBOXの横にあるスケッチブックが目にとまる。
「なんでここにあるのかしら?だいたい本棚とか机の棚にあるのに。
 あっ!新品の予備かしら?でもなんか古そう。」
リカコは秀規が描くものや資料に興味があったのでそれを手に取った。
1ページ目、女性の寝ている顔が描いてある。
2ページ目、同じ女性の笑顔や、ちょっとしたしぐさ。
3ページ目はヌードで横たわっている姿。
「うわー、すごい。これってモデルがいたってことよね?
 それとも写真見て書いたのかしら?
 でも裸を見せれるなんて、普通の関係じゃないよね。
 ・・・もしかして・・・これって前の彼女?    」


467 :名無しさん:2007/05/13(日) 19:45:24

3ページしか使ってないスケッチブック。
何か特別にとってある感じを受けたリカコは元の場所にそれを置いた。
この約1年、お互いの過去の異性関係には触れずに来た。
ただ、秀規が初めてリカコの家に来て誕生日を祝った日のことが忘れられない。
秀規の泣きながらのキス。
リカコは嬉しかったけど同時に秀規の過去の女性が気になっていた。
でも聞いてはいけないような気がして。
失恋して参っていたということだけは知っていたが、その彼女との間でどんな
やりとりがあったかまでは分からない。


468 :名無しさん:2007/05/13(日) 19:48:16

リカコはとりあえずまた掃除にとりかかる。
頭から離れない先ほどのスケッチ。
私にもモデルになってほしいって言ってくれるのかしら?
なんとなくそのモデルに少し嫉妬を感じているリカコだった。


469 :名無しさん:2007/05/13(日) 19:56:34

 月日は流れ数ヶ月たったある日のこと、私はいつも通り幸せな新婚生活
を送っていた。
その日は日曜日。
私達はゆっくり昼ねしたり身体を休めていた。
しばらくして私は夕方になったので夕食の支度を始める。
「今日はアキラさんの好きな肉巻き作るね!」
「おおありがとう。あっ!俺ビデオ帰しに行ってくるわ。」
「気をつけていってらっしゃい!」
「行ってきます。」
私は彼のほっぺにキスして見送った。


470 :名無しさん:2007/05/13(日) 20:00:47

1時間過ぎた頃、私は彼の帰りが遅いことを気にしていた。
「返しに行くだけなのに遅いなあ。
 気が変わってやっぱり借りてるのかなあ?」
私はなんとなく嫌な感じの胸騒ぎがしていた。
彼は原付で出かけていったはず。
私は原付に乗るのはあまり賛成ではなかった。
だけど便利だからということで、通勤には使わず、休みの日だけということで
彼は使っていた。
リーンリーンリーン!
自宅の電話が鳴る。
「もしもし横山です。」


471 :名無しさん:2007/05/13(日) 20:06:16

「もしもしこちら警察ですが、横山さんのお宅で間違いないですか?」
「はい。何か・・・。」
「実は先ほどお宅のアキラさんが事故にあわれました。
 救急車で○○病院へ運ばれておりますので、ご家族の方に来ていただきたい
 ので連絡差し上げました。」
「え!しゅ、主人はどうなったんですか?」
「大型トラックと接触されて、とにかく今の時点では重体ということですので、
 一刻も早く病院の方へ・・・。」
「わ、分かりました。」
私は頭の中が真っ白になった。
どうしよう、やっぱり嫌なことが的中した。
あれだけ心配していた原付の運転。
こういうことになる可能性があるよと彼には散々諭していたのだけど、
大丈夫だって言うから・・・。
私は財布や健康保険証などを慌てて鞄に詰め込み、タクシーに乗って病院へ
駆けつけた。


472 :名無しさん:2007/05/13(日) 20:12:32

タクシーの中で私は母に連絡した。
私一人じゃ不安だから母にも駆けつけてもらうことにした。
病院へ着いた私は集中治療室の前でまたされた。
手術中のランプがついている。
30分後、母が来た。
「○○!」
「お母さん!どうしよう。私どうしたらいいの?」
「とりあえず落ち着きなさい。私達はここでアキラさんが回復するのを
 祈るしかないわ。」
「アキラさんの実家には電話したほうがいいかな?どうしよう。」
「じゃあ、お母さんがしとくわ。あんたここに居なさい。」
母は公衆電話のある場所へ向かった。
ああ、神様・・・。
どうか助けてください。
私はただただ、彼の命が助かることを願うばかりだった。


473 :名無しさん:2007/05/13(日) 20:21:28

2時間ほど経った。
もう夜の9時になろうとしていた。
手術中のランプが消えた。
「ご家族の方は・・・。」
先生らしき人が出てこられた。
「はい、私です。」
「奥様ですか・・・。手は尽くしたんですが意識が戻りません。
 ここ2,3日ぐらいが山かと思われます。
 身内の方を呼ばれることをおすすめします。        」 「ああ・・・。もう助からないんですか?」
「今の医療ではこれが限界です。奇跡でも起これば助かるかもしれませんが・・・。」
私は青ざめるのが自分でも分かった。
そうなったところでどうなるわけでもなかったが、もう自分でも立っているのが
不思議なくらい、力が抜けていくのが分かった。
彼がICUへ運ばれていく。
私達も着いていった。
その頃私の父も駆けつけてくれていた。
私達親子3人、彼のそばで呆然としていた。


474 :名無しさん:2007/05/13(日) 20:27:29

「アキラさん・・・。」
私が呼びかけてもなんの返事もあるわけもなく。
口に通された太い管。
頭も手も足も包帯だらけ。
痛々しい、とても痛かっただろう。
こんなことになるなんて、私が昼間自転車で返却しにいけばよかった。
彼に行かせなければこんなことには・・・。
悔やんでも悔やみきれない。
母がまた彼の実家に電話しにいってくれた。
明日の朝1番の新幹線でこちらに駆けつけるとのことだった。
どうかご両親が到着するまではもってほしい。
そして奇跡が起こってもう一度声を聞かせて欲しい。
そう願う私だった。


475 :名無しさん:2007/05/13(日) 21:24:40

 一晩中彼のそばにいた私はいつの間にかうとうとしていた。
気がつくと朝の7時。
彼は今だ眠ったままだった。
愛を信じて彼の広い心に甘えてきた私には今回の事態は荷が重すぎる。
両親に支えてもらわないと泣きわめいてしまいそうだった。
奇跡を信じて彼の回復を待つしかないわけだが、気が狂いそうだった。


476 :名無しさん:2007/05/13(日) 21:41:52

 午前9時過ぎ、彼のご両親が到着した。
彼の哀れな姿を見て義母は泣き出してしまった。

私はしばらく皆と一緒にいたが、ラウンジに行って少しお茶を飲むことにした。
食欲は無かった。パンを一口かじっただけ。
眠気を覚ますためにコーヒーを飲んだ。
熱いコーヒーを半分ほど飲んでまた病室に戻った。
その日彼の状態は同じだった。


477 :名無しさん:2007/05/13(日) 21:52:48

 3日目の朝を迎えた。
うとうとしている私は看護士さんに起された。
見回りに来られた彼女が彼の様態がおかしいのに気がついた。
「先生よんできますから。」
彼の呼吸が弱くなっているのが私にも分かった。
私はラウンジに居る両親達を呼びに行った。
先生の処置が始まった。
懸命に処置をしてくださる。
しかしどんどん心拍数が減っていく。
「アキラさん!聞こえる!目を覚まして、お願い・・・。」


478 :名無しさん:2007/05/13(日) 22:05:27

 そのうちに彼の心拍数がまたたくまに0になった。
電気ショックを何度か与えたり、心臓マッサージをした。
私は必死で祈った。
しかし無残にも彼の心音が再び鳴ることは無かった。
「死亡時刻午前9時33分。」
「アー・・・・、アキラさん・・・。」
私は溢れる涙を抑えることができなかった。
もう2度と彼の声を聞くことも笑顔を見ることもできない。
私は彼の胸の上で突っ伏して泣いた。
彼と暮らし始めて約半年、私はこんな形で彼と永遠の別れを迎えるとは
考えてもみなかった。
神も仏もないのだろうか?
私は自分の運命を呪った。
でもどうにもならないこの現実に、私は身動き取れない、放心状態になっていたのだった。

Last modified:2007/09/29 09:27:25
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