Create  FrontPage  Index  Search  Changes  RSS  Note  wikifarm  Login

海水浴に出掛けたら 2

728 :名無しさん:2007/07/07(土) 19:27:36

 その頃秀規は自宅で大好きなラーメンをすすっていた。
でもいくら好きなものを食べても、好きなドラマを見ても、
好きな音楽を聴いても寂しい心は埋まらない。
彼女に連絡できないでいるままだ。
仲直りのきっかけを掴めないでいた。
彼女から連絡が来るのを期待していたがまったく来ない。
いつも喧嘩してもすぐ元の鞘に納まっていた二人だったが、
今回ばかりは勝手が違っていた。
「そうだ!あいつの家に押しかけてみようか。」
勢いつけて彼女に直接会ってしまえば仲良くなれるかもしれない。
自然とお互いに謝る気持ちにもなれるだろう。
秀規は食事を終えるとコンビにへ向かった。
彼女の大好きなアイスクリームを買って、彼女の自宅へ向かう。
彼女の笑顔に会いたい。
会って抱きしめたい。
秀規は心からそう思っていた。


729 :名無しさん:2007/07/07(土) 19:34:44

 秀規が○○の自宅へ向かっている頃、○○は田中に送ってもらっている
最中だった。
「今日は楽しかった。それにご馳走になってしまって
 なんだか悪かったね。」
「いいえ、こんな形でしかお返しできないから。」
二人はゆっくりと歩いていた。
○○の自宅の前まで来た。
「送ってくれてありがとうございます。
 気をつけて帰ってくださいね。」
すると彼がじっと○○の瞳を見つめた。
ドキドキする○○。
「また、連絡してもいいかなあ?」
「は、はい。」
「じゃあ、おやすみなさい。」
彼が○○を優しく抱きしめる。
びっくりした○○だったが、彼の大きな体に包まれるとなんだか自分が
とても優しくなれたような錯覚に陥った。


730 :名無しさん:2007/07/07(土) 21:38:42

 「じゃあ、さよなら。」
田中は○○から離れ去っていく。
○○はうっとりとした目で彼を見送っていた。
その時、ガサッと何かが落ちる音がした。
振り返るとそこには秀規が立っていた。
「菊さま・・・。どうしてそこにいるの?」
「お前、さっきの男誰だよ。」
「友達です。中学生の時の同級生なんです。」
「友達なのに抱き合うのか?
 ふん、俺に連絡してこないと思ったらもう他の男と
 付き合ってんのか。」
「違います!付き合ってはいません。
 今日は助けてもらったお礼に食事に言っただけです。」
「そんなこと信じられない。
 現にお前はあの男のこと好きなんだろ!」
「違います。ただの友達。」
「男と女が友達でいるなんてありえんのか?
 俺は無いと思う。」
「分かってください。私ずっとあなたからの連絡待ってました。
 だけど何も連絡くれなかったじゃない。
 なんで今日になって私の前に現れるのよ!」
「お前こそ連絡してこなかったじゃないか!
 俺はずっと待ってた。お前の声聞きたくて聞きたくてしょうがなかった。
 だけどこんな仕打ちされたんじゃなあ。
 俺もみくびられたもんだ。
 じゃあな!」
 


731 :名無しさん:2007/07/07(土) 21:43:31

 秀規が去る。
○○は秀規が落としたビニール袋を拾う。
中には自分の大好きなアイスクリームが入っていた。
「菊さま待って!私のためにアイス買ってきてくれたんでしょ!」
秀規は振り返らない。
それどころか足早に暗闇に消えていく。
○○は秀規を追いかけた。
どうにかして誤解を解きたい。
あせる気持ちが彼女を走らせた。
次の瞬間、交差点で彼女は車のライトで目がくらむ。
「キャー!」
ドンっと鈍い音がした。
秀規が振り返って戻ってみると、そこには頭から血を流した○○が
倒れていた。


746 :名無しさん:2007/07/12(木) 18:44:57

 ○○が事故に遭ってからというものの秀規は眠ったままの彼女に
できるだけ付き添っていた。
彼女の母に何度も秀規は事情を話した。
母は許してくれたけど、彼女がこんなことになってしまった責任を秀規は
痛感していた。
痛々しい彼女の姿。
頭や腕には包帯が巻かれていた。
足も片方骨折し、ギプスがはめられていた。
秀規は彼女の左手を軽く握り締めていた。
「○○、目を覚ましておくれよ・・・。」
秀規の願いも虚しく彼女の意識は戻らなかった。


747 :名無しさん:2007/07/12(木) 18:49:24

 3日目、今日も朝早く秀規は病院を訪れた。
「菊地さん毎日来てくれてありがとうね。
 お仕事は大丈夫なの?」
「はい、今日はラジオの収録があるのであまり長いはできないんですけど、
 どうしても○○さんに会いたくて・・・。」
相変わらず少女のように眠っている○○。
秀規は彼女が事故に遭ってから食事も喉を通らないでいた。
こうなったのも自業自得。
彼女はもっと痛い目にあってるのだから。
秀規はしばらく彼女のそばにいた。
しかし仕事へ行く時間となり、後ろ髪ひかれる思いで病院をあとにした。


748 :名無しさん:2007/07/12(木) 19:00:54

 どれだけ眠り続けただろうか。
私はうっすらと目が覚めるのが自分でもわかった。
「○○!」
母の声がする。
「あ・・・・。お母さん・・・。」
「よかった!分かる?あなた事故に遭ったのよ?」
事故?
そういえば・・・。
走馬灯のように記憶がめぐる。
アイスクリームを持って菊さまを追いかけてそこで何かにぶつかって・・・。
そこで記憶は途切れている。
「菊地さんがさっきまで居てくれたのよ。
 責任感じちゃってね。あなたのそばに毎日付き添ってくれて・・・。」
そうか、菊さまが看病してくれたんだ。
私は菊さまの愛を感じずにはいられなかった。
覚醒した私はお医者さんから説明を受け、当分入院することになるだろう
とのことだった。
脳波もはかり、今のところ異常はないということであった。
もしかしたら死ぬところだったのかもしれないと思うと身震いしたが、生きてる
ことに私は感謝した。
そういえば今日は・・・。
カレンダーを見ると水曜日。
そうか菊さまは芸株の収録日だ。
暇だからふとある考えがよぎる。
収録後菊さまのことだからここにまた寄るだろう。
私は菊さまへのいつもの悪戯心が芽生えていた。
ふふふ。私が芝居したら菊さまどうなるだろう?
私はこれからの長い入院生活を考えると多分暇をもてあますだろう。
菊さまを試して楽しむことを考え付いた。


749 :名無しさん:2007/07/12(木) 22:10:13

 昼過ぎ私は病院食をとってお腹も膨れ、うとうとしていた。
すると、菊さまがやってこられた。
さあ、芝居モード突入。
「○○・・・。」
私はゆっくり目を開ける。
菊さまの目が輝いた。
「○○!良かった、目が覚めたんだね!本当に良かった。」
菊さまは寝ている私のそばで涙を流し始めた。
「痛かっただろう?こんな姿になってしまって・・・。
 全部俺のせいだ。俺のこと恨んでるよな?」
私は菊さまの目を見つめたまま何も答えなかった。
「どうしたんだ?喋れないのか?」
菊さまが身を乗り出して問い詰める。
菊さまの白い大きな顔が私の顔に近づく。
私は噴出しそうになるのをガマンした。
「喋れるよ。でも、あなた、誰?」
すると菊さまの表情が一変した。
「どうしたの?俺だよ。菊地だよ。」
「き・く・ち?」
「いつも菊さま、菊さまって呼んでくれてたじゃないか。
 忘れたわけじゃないんだろう?w」
私は尚も分からないふりをした。
「私あなたのこと知りません。
 何なんですか、ずかずか人の病室に入ってきて。」
「どうしたんだよ。お前が救急車で運ばれた時からずっと付き添って
 お前のこと看病したのに・・・。」
「そうなんですか?でも私あなたのこと知りませんから。」


750 :名無しさん:2007/07/12(木) 22:16:45

冷たく言い放った。
ちょっときつい言い方だった。
するとそこへ母が入ってきた。
「まあ、菊地さん。おかげでこの子目を覚ましたんですよ。」
「はあ、良かったですよね。でも僕のこと・・・。」
「どうしたの?」
母は状況が飲み込めてなかった。
「お母さん、この男の人誰?」
私は母にも菊さまのことを覚えてないふりで通すことに決めた。
「誰って、菊地さんよ。あなたの大好きな菊地さんじゃない。」
「私知らない。」
この一連の芝居で私はまた精密検査を受ける羽目になった。
そして事故のショックによる健忘症だろうということになった。
菊さまのことだけ忘れているというちょっと胡散臭い状況だが、
皆私が本当に彼のことを覚えてないと信じて疑わなかった。
菊さまはもちろん肩を落として帰っていかれた。
さあ、菊さまこれからどうでるだろうか?
私はこれからの暇で退屈な入院生活にスリルを与えるべく、嘘をついた。
その嘘で大好きな人がとても傷ついているとも分からずに・・・。


752 :名無しさん:2007/07/13(金) 21:59:09

 秀規はすごくショックだった。
なぜ自分のことを覚えてないんだろうか・・・。
彼女のこと愛してるのに、心の奥底から想ってるのに・・・。
思えば海水浴の出来事から何かが狂い始めていたのかもしれない。
あの時彼女をぶってしまった。
そして再会したときも彼女の話もろくに聞かず、突き放した。
それらのことが彼女の中で秀規の記憶を消し去ってしまっているのかもしれない。
彼女がものすごくショックを受けていたとしたらこうなったのも仕方ないのかも。
秀規は泣きながらシャワーを浴びた。
嗚咽はシャワーの音でかき消されていたが、秀規の悲しみが消えることはなかった。

翌朝目を腫らした顔見て情けなくなった。
同時に自分で噴出してしまった。
「俺ってなんて変な顔してんだろう・・・。」
こんなことしてる場合じゃない、彼女のこと好きなんなら少しでもそばに
いたいと思うなら、彼女に毎日会いに行こう。
そうすれば少しずつ記憶が戻るかもしれない。
秀規は自分の愛情で彼女の記憶を取り戻させる決心をした。


753 :名無しさん:2007/07/13(金) 22:07:23

 それからの秀規は時間が許す限り毎日のように○○の病室を訪れた。
相変わらずよそよそしい彼女の態度。
寂しさを感じたが、それも時が解決してくれるだろう。
秀規は信じていた。
きっと彼女は自分を思い出してくれる。
そして自分の胸に飛び込んできてくれる。
右手が思うように使えない彼女に代わって秀規は身の回りの世話をした。
「はい、○○ちゃん、あーん。」
彼女は最初恥ずかしがって遠慮していたが、徐々に慣れて秀規の手から
食事を摂るようになっていた。
秀規も彼女の世話をすることで幸せを感じていた。
「○○、もっと君に優しくしていれば・・・。
 これからは今までできなかった分尽くしていくから。」
秀規は彼女の瞳を見つめて言った。


754 :名無しさん:2007/07/13(金) 22:23:38

 毎日のように時間を割いて見舞いに来てくれる菊さまを見ていて私は
嘘をついているのが心苦しくなっていた。
今までの中で一番優しく接してくれている菊さま。
菊さまってこんなに優しくて思いやりのある人だったんだ・・・。
私は菊さまのこんな一面を知ることができて嬉しく思っていた。
菊さまにバレないように演技しながら過ごしていた。
「なあ、お前花火大会行きたいって言ってたろ。」
「えー?そうなんですか?」
「言ってたんだよ。外出許可出たら花火見えるところまで連れてって やるよ。」
「ありがとう。菊地さん。 毎日来てくれて本当に感謝してます。
 でも無理しないでね。お忙しいんでしょ?」
「大丈夫。お前のそばに居たいんだよ。」
私はとても嬉しかった。
まだ首のギプスが取れないし、肩も脱臼したり右手も骨折したりして菊
さまに抱きつくことはできなかった。
私は今すぐ菊さまの胸に飛び込みたい心境だった。
だけどガマンしてかろうじて無事だった左手で菊さまの手を握った。
「嬉しいよ。菊地さん。」
菊さまは身を乗り出して私の唇にキスをした。
久しぶりのキスに私は体の奥から熱くなるのを感じた。
長いキスの後菊さまは私の頬に触れられた。
「お前のことこの前ぶってしまってごめんな。」
「そうなの?覚えてない。」
覚えてますよ。あの時は本当痛かった〜!
「これからはお前のこと守っていくから。 絶対お前のこと離さないから。」
私は嬉しかった。菊さまがそういう風に私のこと想っていてくれたんだ。
「ありがとう。菊地さん。」
「また菊さまって呼んでおくれ。」
「うん、菊さま!」
私たちは微笑みあった。


755 :名無しさん:2007/07/13(金) 22:36:24

 その日菊さまは夕方帰って行かれた。
次の日朝早く仕事があるとこのことだった。
私は母に夕食を食べさせてもらっていた。
すると誰かが入ってきた。
「ごめんください。」
「はい。」
「田中と申します。」
「まあ、どうも。」
田中さんが来た。でもなぜ?ここに入院していることは知らないはず。
「そうそう、先日田中さんが家に訪ねてこられたのよ。
 あなたの携帯とぜんぜん繋がらないから心配されてね。」
「そうだったんですか。ご心配かけました。」
「僕嫌われたのかなあと思ってたんですよ。
 そしたら事故に遭われたって聞いて、びっくりして。」
「そうなんですよ。私の不注意なんですけど。」
「でも良かったあなたが生きててくれて。」
田中さんは花束と小さな包みをくれた。
「ありがとうございます。気を使わせてしまって。」
「花はお見舞いですが、その包みは君の誕生日プレゼントです。」
「あ!そういえば明日私の誕生日だった。」
「1日早いけど誕生日おめでとう。」
包みを開けると、綺麗な髪留めだった。
「ありがとう。大切にします。」
私はさっそく髪を束ねてみた。
「お母さんどう?似合う?」
「ええ、似合ってるよ。」
私たちは楽しく談笑した。
するとそこへ帰ったはずの菊さまが入ってきた。


756 :名無しさん:2007/07/13(金) 22:41:05

「菊さま・・・。どうされたんですか?」
「ああ、ちょっと忘れ物しちゃって。」
実は秀規は玄関を出るとき見覚えのある男とすれ違った。
あ!アレはこの前彼女を抱き寄せてた男だ。
それで秀規は後をつけてきた。
そして一連の会話をドアの外で聞いていた。
なんかおかしい。
なぜ俺のことは記憶が無いのに、奴のことは覚えてるんだ?
秀規は彼女に対して疑いの目を向けていた。
彼女がもしかして演技してるのではないか?
そうならそうと正直に言ってほしい。
なぜ嘘をつくのか?
秀規は懇願するような目で彼女を見つめた。


757 :名無しさん:2007/07/13(金) 22:50:58

 私はなんとなく菊さまに嘘がバレているような気がしていた。
だけどここまで来たからには嘘を突き通してしらばっくれてやろう。
私は菊さまの目をなるべく見ないようにした。
「何忘れたんですか?」
「お前俺に言い忘れてることない?」
「別に・・・。何もないですけど。」
「ふーん。お前本当に記憶喪失なの?」
「何言ってるんですか?」
私は確信を突かれてどぎまぎしてきた。
「おかしいじゃないか。付き合いの長い俺のことは忘れて、その男のことは
 覚えてる。何かおかしくないか?正直に言え!今なら許してやる!」
「は?な、何おっしゃってるのかよく意味がわからない。」
「そうですよ菊地さん、うちの子が嘘言ってるって言うんですか?」
「だっておかしいじゃないか!なんか変だと思ってたんだよ。
 お前ってよく俺を陥れたりからかったりするの好きだもんな!
 どうせ俺を試そうとか、この前喧嘩したときの仕返しとか言って
 嘘言ってんだろ?」
私はあせってきた。全部ばれてる。
私は苦し紛れに頭が痛いふりをした。
「ああ、頭痛くなってきた。ごめんけど菊さまも田中さんも今日は
 帰ってくれますか?」
「ふん!それも演技だろ?お前って都合悪くなるとすぐごまかすもんな!」
そういうと菊さまは帰って行かれた。
「それじゃあ、また○○さんお元気で。」
田中さんも帰って行かれた。
「○○、まさか嘘ついてたんじゃないよね?」
母が問い詰めてきた。
どうしよう。


758 :名無しさん:2007/07/14(土) 19:39:22

秀規は病院から出て帰り道田中ひろしに呼び止められた。 {{br}}

「すみません!」
「はい?」
「あの、○○さんとはどういうご関係ですか?」
「何あんた誰?」
「失礼しました。僕は田中ひろしと申します。」
「○○とは何なの?」
「友達です。中学校の同級生なんです。」
「ふーん。」
秀規は彼の頭の先から足の先までなめるように見た。
自分より背は高く体格もがっちりしている。
それになかなかの男前だ。
秀規はふと、彼女は本当はこういうタイプが好きなのか?と自信が無くなった。
「あなたのお名前は?」
「菊地です。」
「菊地さんは○○さんとは・・・。」
秀規は彼です!と言おうとしたが、一連の彼女の仕打ちに腹を立てていたのも
手伝って、ついこう答えてしまった。
「ただの友達です。他に何か?」
「ああそうですか。じゃあ僕が○○さんにアタックしてもいいってことですよね?」
「どうぞご勝手に。それじゃあ。」
秀規はスタスタと早歩きでその場から去った。
頭の中で言葉がめぐる。
「ただの友達。ただの友達・・・。」
今の秀規に○○を許すほどの度量は無かった。


759 :名無しさん:2007/07/14(土) 19:46:28

 私はその頃母に詰め寄られていた。
「○○!本当のこと言いなさい!」
私は観念した。
「ごめんなさい。菊さまのこと覚えてないっていうのは嘘。
 菊さまのこと試して面白がってただけなの。」
「まったくなんてことを・・・。
 あなたの嘘のせいで余計な検査代はかかるし、第一菊地さんが一番
 傷ついてるわ。明日もし来られたらちゃんと謝りなさい。」
「もう来ないよ。」
「そうかもしれないわね。もうあなた嫌われてるわ。
 でも電話でもいいからちゃんと謝ることはしなさい。」
「わかりました。」
「先生には私から謝っておくわ。あなたもあとで謝りなさい!」
母はその日は帰っていった。
私は6人部屋なので他の人に聞こえないようにその夜静かに泣いた。
涙が次から次へと溢れてくる。


760 :名無しさん:2007/07/14(土) 19:55:05

 次の日泣きはらした顔で私は食事を取っていた。
先生からも少し怒られたけど、ちゃんと記憶があるなら良かったと安心された。
母は車椅子に私を乗せて電話ボックスへ連れてってくれた。
菊さまへ電話するために。
出てくれるだろうか?もう仕事にでかけてるかなあ?
私は祈るような気持ちでプッシュボタンを押した。


761 :名無しさん:2007/07/14(土) 20:01:48

「もしもし。」
「もしもし、○○です。」
沈黙が流れる。
どうか菊さま切らないで!
「もしもし、今いいですか?」
「ああ、何?」
「あの、嘘ついてたこと謝ります。本当にごめんなさい。」
「やっぱり嘘か!バカヤロウコノヤロウメ!
 お前みたいな女最低だ!人の心をもてあそびやがって!
 お前なんか、お前なんか、大嫌いだ!」
ああやっぱり嫌われた。
私はもうあきらめモードに入った。後悔しまくりだけど・・・。
「ごめんなさい。嫌われて当然です。
 じゃあ、今までありがとうございます。
 菊さまに優しくされてとても嬉しかったです。
 一生このことは忘れませんから。
 どうぞお元気で。」
私は電話を切った。
涙で目がかすむ。
私の様子を見て母がハンカチを差し出してきた。
私たち親子は病室に静かに戻った。


762 :名無しさん:2007/07/14(土) 20:10:13

 「もしもし、あっ!切れた。畜生!勝手に切りやがって!」
秀規は地下鉄に飛び乗った。
今日はライブがあるから早く空港へ行かなければならない。
あいつと本当はもっと話したかった。
だけどつい罵ってしまった。
かけなおしたいけど、よく考えたら携帯は病室には繋がらないはず。
メールしてみようか?
でもあいつは車椅子がないと動けないから見ないかもしれない。
本当は昨日眠りながらあいつのこと考えてて腹は立てたけれども、
やっぱり好きだという気持ちは変わらなかった。
今回の嘘には正直傷ついた。
だけどあいつが素直になれないのはいつものこと。
自分だって素直じゃない部分はある。
それでも俺達分かり合ってきたはず。
秀規は彼女のことを手放したくなかった。
でも素直に彼女を許すことができるだろうか?
あ!今日は彼女の誕生日だったはず。
今日は日帰りだから、何か現地でプレゼントを調達して帰りの足で病室へ
行ってみようか?
そうすれば仲直りできるはず。
秀規は彼女を許そうと心に決めた。

Last modified:2007/09/30 11:51:12
Keyword(s):
References:
This page is frozen.