Create  FrontPage  Index  Search  Changes  RSS  Note  wikifarm  Login

そして桜の花びらが舞い散って・・・ 後編

407 :名無しさん:2007/05/05(土) 20:14:38

 秀規はその日ライブがあった。
いつもどおりの仕事。だけど、朝からなんだか浮き足だっていた。
今日は誕生日。それも生まれて初めて女の人に誕生日祝いしてもらえる。
それも二人っきりで。

仕事が終わった。
さあ、彼女の家へ急ごう。
彼女がくれた地図を頼りに行くわけだが、途中酒屋へ寄った。
何も持たずに行くのも悪い気がしたので、ワインを持っていくことにした。
秀規はなんとか地図のとおりに彼女の家へたどり着く。


408 :名無しさん:2007/05/05(土) 20:23:36

 彼女の家のインターホンを鳴らす。
ピンポーン・・・。
「はい、どちら様ですか?」
「菊地です。」
「すぐ開けます。」
ドアが開いた。
1週間ぶりに見る彼女はいつもどおりの美しさをかもし出していた。
「さあ、どうぞ。」
「おじゃまします。」
秀規は1人暮らしの女性の部屋へ入るのは初めてだったので、少し緊張していた。
部屋は1ルームで、ベッドと、テーブルとタンスなどの家具が置いてあるので、
あまり広くはなかった。
小さなテーブルに料理が用意してあった。
「赤ワイン買ってきたから、一緒に飲もう。」
「ワイングラスないからコップでいい?」
「なんでもいいよ。」


409 :名無しさん:2007/05/05(土) 20:30:39

秀規は洗面所で手を洗わせてもらった。
ついトイレやお風呂を見てしまう。
掃除は行き届いているようだ。
女の子らしいピンク色で小物やカバーが統一してあった。
部屋に戻り、床に座る。
「じゃあ、はじめましょうか。菊地さん誕生日お・め・で・とう・ございまーす!」
ここで二人はワインで乾杯した。
小さな丸いケーキがあった。
「あっ、ロウソクつけないとね。年齢分の本数は立てれないけどいいよね?」
すると、彼女は歌を歌い始める。
「・・・ハッピバースデー、ディア、菊地さん、
 ハッピバースデートゥーユー!」
秀規が3本しかないロウソクを吹き消した。
はるか遠い子供の時以来だなあ。
秀規はとても感激していた。


410 :名無しさん:2007/05/05(土) 20:36:40

 鳥のから揚げ、サラダ、里芋の煮物などが並んでいた。
「あまり美味しくないかもしれないけど、どうぞ食べて。」
「いただきまーす。もぐもぐ、・・・・うわあ美味しい!」
彼女の料理はどれも秀規の好きな味付けだった。
から揚げも煮物も濃い味付けにしてある。
「良かった、こんなの食べれないっていわれるかと思った。」
「そんなこと言わないよ。誰が食べても美味しいって言うよ。」
「そうかしら、でもあなたに美味しいって言われてとても嬉しい。」
彼女は秀規の目をじっと見つめて言った。
まともに目を見つめられてドキドキする秀規。
赤ワインも手伝って秀規の頬は真っ赤になっていた。


411 :名無しさん:2007/05/05(土) 20:41:51

「そういえば芸能株式市場この間聞きました。」
「そう、どうだった?」
「面白かったですよ。去年から聞いてればもっと面白かったんだろうけど・・・。」
「そう、じゃあこれからも毎週聞いてくれる?」
「ええ、あなたの声が聞けるから来週も楽しみにしてます。」
秀規は彼女がお世辞を言ってくれていると分かっていた。
なぜなら番組宛に面白くないというメールが結構きているのを知っていたから。
ファンの中でも最近イマイチという噂が流れていると言うことも知っていた。
俺のことを傷つけまいとして言ってくれてるんだ、彼女の優しい気持ちに感謝した。


412 :名無しさん:2007/05/05(土) 20:47:49

 お腹が空いていた秀規は彼女の出してくれた料理をあっという間に
たいらげていた。
「じゃあ、紅茶いれるね。」
彼女が台所へ行き支度をする。
包丁を持ってきて小さなケーキを皿へ取り分ける。
「このケーキ作ったの?」
「ちがうよ。買ってきたの。本当は作りたかったんだけど、失敗しそうだし、
 何回も作り直す時間もなさそうだから今回は買っちゃった。
 今度もし作る機会があれば挑戦してみるから。」
「ああ、別にいいよ。買ったものでもぜんぜん。君が選んでくれたものだから嬉しい。」
秀規は彼女に結構お金と使わせてしまったのではないかと心配になった。
質素とはいえ、2人分の料理にケーキ、ぎりぎりのお給料で生活していると言っていたから
今日は散財だったのではないか?
秀規は会ってあまり日がたってないのに彼女にすまないことをさせてしまったと少し思った。


413 :名無しさん:2007/05/05(土) 21:02:10

彼女が台所へ行って紅茶を運んでくれた。
そしてお盆を戻しに行ったついでに何かを持ってきた。
「これ、はい、プレゼント!」
秀規はびっくりした。ご馳走してくれた上に、プレゼントまであるとは・・・。
「えー、なんだろう。」
秀規は早速包みを開けた。
赤い色のネクタイが出てきた。
「あ、ありがとう。ここまでしてくれてなんていって言いか・・・。」
秀規は感激で涙が溢れてきた。
ここ最近劇的に恋の変化があって正直毒の多い秀規でも参っていた。
でも今日こんなにリカコに優しくされて、もてなされ誕生日を祝ってもらえて、
なんて自分は幸せなんだろう?こないだまでの地獄のような夜はなんだったんだろう?
と考えた。
「あまり高価なものは買えなかったの。ごめんね。あなたは明るい色が似合うと思ったから
 その色にしたんだけど・・・。」
「とても嬉しいよ。絶対仕事で使わせてもらうよ。」
秀規は涙が一粒落ちるのを感じた。

「どうしたの?菊地さん。」
「ううん、ちょっと最近嫌なことあったりしてとても落ち込んだことあって・・・。
 でも君に会ってからどんどん自分が元気になってるのが分かるんだ。
 本当にありがとう。これからも俺のこと元気づけてくれるかな?」
「私たいした事してないよ。料理だってたいしてお金かかってないし、プレゼントも
 質素なものだし。あなたの満足のいく様にはとてもできないかもしれないけど、あなた
 のこと好きっていう気持ちだけは誰にもまけないから。」
「本当?本当に俺のこと好きでいてくれるの?」
「うん、会ってちょっとしか経ってないけど、あなたのことこれからも好きでいさせてほしい。」


414 :名無しさん:2007/05/05(土) 21:09:36

秀規は彼女に抱きついた。
彼女も秀規をしっかり受け止めた。
秀規は次から次へと涙が溢れてきたけど拭うこともせず、彼女にそっと口づけした。
口づけの後、彼女がティッシュで秀規の涙を優しく拭いてくれた。
「私男の人が泣きながらキスするの初めて見たよ。
 よほど嫌なことあったんだね?」
「うん、失恋したんだ。」
「そうなんだ、菊地さん純粋そうだから傷つきやすいのかな。
 そういう私も失恋して泣いたこと何度もあるけどね。」
「君を悲しませるなんてひどい奴もいたもんだね。」
「ふふふ、じゃあ、あなたは私をいつも笑顔で居させてね!」
「うん、約束するよ。」
秀規はまた彼女を抱きしめた。
絶対彼女を手放したくない。もう二度と○○の時のような過ちを繰り返したくない。
秀規はそう心に誓った。


415 :名無しさん:2007/05/05(土) 22:09:15

 その日私は婚約者の横山さんと一緒にデパートへ婚約指輪を買いに行った。
私にこんな幸せな時間が来るなんて夢にも思っていなかったが、現実に指輪を
選んでいると、結婚する実感がすこしずつ沸いてきた。
同時に二人で生活していく責任も感じていた。
その日は夕食を二人で食べた。
「君のご両親に挨拶行かんといけんなあ。」
「あなたのご実家にも行かないといけないよね。
 家は日曜だったらだいたい大丈夫だと思う。」
「そう?どうしよう来週か再来週どうかなあ?」
「じゃあ、聞いてみて連絡するわ。あなたの方はどうする?」
「そうやな、来月早々どうかな?親に聞いてみとくわ。」
「そうね。」
私達はお互いの親への挨拶の日程について話し、その日は帰った。


416 :名無しさん:2007/05/05(土) 22:13:22

私は帰って両親に横山さんが挨拶に来たいといっていることを話した。
両親は私が順調に交際しているようだからということで少しでも早く
彼に会いたいから来週でも良いと言ってくれた。
私は彼に早速電話し報告した。
私は順調に事が運んでいる喜びからか、なかなかこの日寝付けなかった。
なんだか興奮している。
カレンダーを改めて見てみる。
あっ!そういえば今日って菊さまの誕生日だ。
私は今更ながら思い出した。
彼と出会うという運命の悪戯が無ければ今頃菊さまの誕生日祝いをしていたのかもしれない。
私は運命の不思議さを感じながら、ちょっとした悪戯心がわいてきた。


417 :名無しさん:2007/05/05(土) 22:18:16

pipipipi・・・・。
秀規の携帯が鳴った。
「もしもし。」
「もしもし、私です。お元気ですか?」
「あっ、○○?」
「はい、こんばんは。」
「どうしたの?」
「今日菊さまの誕生日だったなあと思って、それで電話してみたんです。」
「ああそう。それはありがとう。」
「菊さまの声聞きたくなって。菊さま31歳の誕生日おめでとうございます。」
「ああ、ありがとう。」
「菊さま、今日は誰かとお食事に行かれたりしたんですか?」
「ああ、したよ。プレゼントももらったりして。」
「ああ、そうなんだ。良かったですね。」
秀規は○○が自分の様子を探っているような感じを受けた。
「実は彼女っていうか、そういう仲の人が祝ってくれたんだ。」
ここまで詳しく言うこともないかもしれない。でも俺はもうお前がいなくても
幸せにやってるよって知らせてやりたかった。


418 :名無しさん:2007/05/05(土) 22:23:34

 彼女?私は少しびっくりした。
もう彼女できたんだ。まあその方が安心だけど。
「そうですか、さぞかし優しくて可愛い彼女なんでしょうね。」
「ああ、お前に負けないくらい良い子だよ。」
「そうですか、良かった。菊さま幸せになってくださいね。」
「お前の方はどうなの?」
「実は婚約しました。来年の春には結婚する予定です。」
「そうなんだ。じゃあもう人妻になるんだな。」
「ええ、こんな私が結婚なんて信じられないんですけどね。」
「そんなことないよ、良いお嫁さんになれるよ。」
「ありがとう、菊さまはやっぱり私にとって兄みたいな存在だから、
 これからも時々声きかせてくださいね。」
「ああ、分かったよ。じゃあ。」
「はい、おやすみなさい。お元気で。」
「おやすみ。」


419 :名無しさん:2007/05/05(土) 22:28:36

へーえー、あの毒男に新しい彼女か。
相手はどんな女なんだろう?
少し興味あるなあ。
私は菊さまのことを少し心配してたのがバカらしくなった。
だけどこれからも時々電話してやろう。
あの我まま男、どれだけ新しい彼女ともつだろうか。
あんな中途半端な仕事しかできない男に一生ついてくる女なんているのかしら?
私は自分が今幸せなので優越感に浸っていた。
あんなにかつては心から愛していた菊さまなのに、今は悪魔のような思いしか沸かない。
私はこうやってどんどん嫌な考えを持つ女になっていたのだった。


420 :名無しさん:2007/05/05(土) 22:32:35

秀規はその夜ベッドの中で考えていた。
○○からの電話に正直驚いたが、もう自分にも正式な彼女がいるのであまり
動揺はなかった。
「あいつ結婚かあ。もしあの時別れてなかったら今頃は○○が誕生日いわってくれて
 いたのかなあ。」
○○はいつも秀規のことをからかったり悪戯をしかけてきたけども、本心はとても秀規を
心配しくれたし愛してくれていた。
今でも特別な存在の○○。でもさっきの電話、なんだか意地悪な感じを受けた。
でもこれからも時々彼女の声を聞くのも悪くないだろう。
秀規はリカコという存在があるからこそ、自分に心の余裕ができてきたことを
実感していた。


459 :名無しさん:2007/05/12(土) 21:43:57

 瞬く間に日にちは流れて行き、秀規と○○が別れてそれぞれの道を歩み始めて
から1年経とうとしていた。
秀規は春のある日○○からのメールを受け取った。
「菊さまへ
 こんばんは。私明日結婚式します。入籍はもう済ませました。
 菊さまどうぞこれからもお元気で。応援してますよ。
                        ○○より」
秀規はそれを読んで返信した。
「○○へ
 結婚おめでとう。幸せになれよ!
 俺もお前のこと応援してるから。
                   秀規より」
送信・・・・。


460 :名無しさん:2007/05/12(土) 21:49:25

メールを送信して思った。
もうこれで○○のことは胸の奥深くにしまいこむことができるだろう。
リカコとの交際は順調だった。
彼女との交際期間中でも、やっぱり時々○○のことを思い出していた。
だけど、それも徐々に、氷がゆっくりじわじわ溶けるように薄れていった。
今日のメールで多分最後。
秀規はスケッチブックを取り出して開いてみた。
○○の思い出のスケッチ。
彼女の横顔や寝顔、ヌードまで描いてある。
これを捨てる気はない。これはこれで思い出として取っておきたい。
秀規はスケッチブックを押入れにしまった。
秀規はもうこれからはリカコと生きていこうと決意を新たにしていた。


461 :名無しさん:2007/05/12(土) 21:56:01

 2008年5月、新緑の季節がまたやってきた。
秀規は相変わらずライブ中心の仕事をしていた。
そして私生活では、業界関係の友人達、そして愛するリカコに支えられ
充実した日々を過ごしていた。
32歳の誕生日も迎え、新しく小さな役者の仕事も入ってきた。
これにはリカコがとても喜んでくれた。
「どんなに小さな役でもいいじゃない。あなたの可能性が広がるなら!」
秀規は意欲的に仕事に取り組み、それなりの成果をあげることができた。
秀規はリカコの支えに感謝していた。
昔は人に感謝することなんてほとんど無かったのに。
リカコと居ることで毒の強い秀規は心が柔らかくなっていくのを自分でも
感じていた。


462 :名無しさん:2007/05/12(土) 22:03:00

 秀規は久しぶりに岩手の母に電話した。
「もしもし、母さん元気?」
「ああ、秀規かい。元気だよ。そっちはどう?」
「うん元気。実は今度テレビドラマに少し出ることになったから。
 見てもらおうと思って電話したんだ。」
「そうなの。それは楽しみだべ。仕事は順調にいってるの?」
「うん、順調だよ。」
「ちゃんとご飯食べてるかね?」
「大丈夫だよ。」
大好きな優しい母。秀規は母にリカコのことを話したかった。
だけど今はただ付き合ってるだけだし、結婚の話が出ているわけではなかった。
だから喉まででかかっていたが話さなかった。
「じゃあ母さん元気でね。」
「秀規や。身体に気をつけるんだべ。分かったな。じゃあね。」
母さん、俺今とても幸せに暮らせてるよ。
秀規は母にプレゼントする習慣は無かった。
だけど、5月は自分を産んでくれた母に感謝の気持ちで一杯になる。
母さん、産んでくれてありがとう。
秀規は心からそう思えた。


463 :名無しさん:2007/05/12(土) 22:15:59

そのころ私は横山さんとの新婚生活を楽しんでいた。
4月に結婚式新婚旅行も済ませた。
皆に祝福された私達は幸せの絶頂に達していた。
彼と同じ職場にはいられないので、私は会社を退職し、扶養の範囲内で
アルバイトすることになった。
私は住み慣れた町から離れ、彼と新しい町で暮らしていた。
2DKの狭いアパートだけど、彼の会社から家賃の補助が出るのでなんとか
厳しい東京暮らしをすることができていた。
私はアルバイトで生活を少し支えながら、家事をこなしていた。
彼が安らげるように、頑張って仕事できるようにといつも考えていた。
私は朝は彼の支度のために独楽鼠のように動いていた。
しかし夜になり夕食の片付けが終わる頃になると彼に甘えていた。
彼はそんな私を嫌がりもせず、可愛がってくれたし、甘えさせてくれた。


464 :名無しさん:2007/05/12(土) 22:20:26

私達は子供は1年は作らずに、二人だけの生活を楽しもうと決めていた。
それまでになるべくお金をためておきたかった。
私は節約に励んだ。苦にはならなかった。
彼との生活のためならそれぐらいのことは逆に楽しみに変わっていた。
私は何の疑いもせず、もちろん彼もそうだと思う。
このまま幸せな生活が続くであろうと信じきっていた。
この先運命を変える出来事が起こるとも知らずに・・・。

Last modified:2007/09/28 11:26:59
Keyword(s):
References:[FrontPage] [小説(全てフィクションです)]
This page is frozen.