Create  FrontPage  Index  Search  Changes  RSS  Note  wikifarm  Login

これ以上、私の心を乱さないで・・・

580 :名無しさん:2007/06/08(金) 21:05:02

 菊さまとキスをしてからの私は、菊さまの私に対する愛情に
とまどいながら過ごしていた。
とまどいつつも、旦那を失った私の寂しい心を支えてくれる菊さ
まに私は感謝していた。
ただ、やはり住む世界の違う人だということを思い知っているのと、モデルの彼女の存在が頭をかすめ、どうしても菊さまを遠ざけようとする自分が居た。
 菊さまは何かと理由をつけてはメールや電話をよこしてきた。
私は無視するのも悪いと思い、メールの返事や電話の応対をした。
私のことを励まそうとしてくれているのがとても分かるのだが、
あのキス以来、菊さまと食事したり遊びに行くことを私は断り
続けていた。
「ねえ、明日俺寿司食べに行きたいんだけど一緒にどう?」
「すみません、明日はちょっと・・・。」


581 :名無しさん:2007/06/08(金) 21:11:27

「こないだもお前断ったよな?
 そんなに俺と食事行くの嫌か?」
「別にそういうわけじゃなくて・・・。
 明日は職場の友達と飲みに行く約束してるから。」
「ふん、前も職場の人と約束あるからって断ったよな?
 そんなにしょっちゅう飲み会のある職場っておかしくないか?」
「そんなこといってもそうなんだからしょうがないでしょ?
 別に私と食事しなくても彼女もいるし、友達も多いんだから
 大丈夫でしょ?」
私は毎度毎度こんな調子で菊さまからの誘いを断り続けた。
断っても、いつも話し相手にはなるから菊さまもしつこいぐらい
連絡してくる。


582 :名無しさん:2007/06/08(金) 21:21:34

 私は11月ごろからアルバイトを再開していた。
家にずっと居ても悲しみにくれているだけだし、両親にも心配
をかけるだけなので働くことにした。
体調はまだ時々不安定になることもあったが、お医者さんから
も、働きに出たほうがこれからのために良いだろうと言われた。
仕事自体は簡単な事務で、責任も軽く、毎日定時で帰れるので
体力的にも精神的にも安心できるものだった。
それに職場には同年代友達もでき、日々充実していた。
昔からの友人達も私のことを気遣って連絡してきてくれて、食事
に誘ってくれたり自宅に招いてくれたりした。


583 :名無しさん:2007/06/08(金) 21:32:44

だから菊さまに本当はいつまでも頼る必要はないのだけれど、
つい菊さまの厚意に甘えている自分が居た。

 その年の年末に入った頃、菊さまからまた連絡があった。
「もしもし、俺だけど。」
「こんばんは、どうされたんですか?」
「実は今度俺の友達の友達がレストラン開いたのよ。
 そのオープン記念パーティーに呼ばれてるんだけど、
 お前と一緒に行きたいなあと思って・・・。」
「なんで私となんですか?」
私は菊さまの心が分かっていたが、わざと聞いてみた。
「友達や彼女同伴で来てほしいって言われてんだよ。
 なるべく沢山の人に来てほしいらしいんだ。」
「じゃあ、彼女と行けばいいじゃないですか。」
「彼女最近忙しいんだ。
 なんか仕事が増えてるみたいで・・・。
 俺最近あまり彼女と会ってないんだよね。」
「そんなこと私に関係ありませんから。
 それに世界が違う人達と会って何喋ればいいか分からないし。」
「大丈夫、俺とずっと一緒にいればいいだけだし、美味しいもの
 たくさん食べれるよ。
 お前世界が違うから嫌だとか了見の狭いこと言ってると成長
 しないぞ!もっと視野を広くしろよ。社交的になれ!」
「でも、私そんなパーティー出たことないし。
 いつも居酒屋ぐらいしか友達と行ったことないし。
 第一着ていくものに困りそうな感じで気が重いです。
 会費とかいるんでしょう?」
「そんなもん、俺が出してやるよ。
 一緒に来てくれるんなら服だって買ってやるよ。
 なんなら明日でも一緒に服買いに行こうか?
 ついでに夕飯も食べにいこうよ!」


584 :名無しさん:2007/06/08(金) 21:39:08

「うーん・・・。
 そこまでしてもらう筋合いないし・・・。
 やっぱり面倒臭いので行けません。
 ごめんなさい、私明日早いんで、もう切りますね。
 おやすみなさい。」
「お、おい、まて・・・」
ブチ!
私は強引に携帯を切った。
菊さまに丸め込まれそうになる前に話を強引にでも終わらせなければ
菊さまペースに巻き込まれてしまうのでこうした。
菊さま、ああ、ごめんなさい。
菊さまの心は分かっています。
だけど、彼女の居る菊さまと気軽に出かける勇気はありません。
でも声は聞きたい。
あの甲高い可愛い声。
完全に悲しみから立ち直れてない私にとっては実はとても癒し
になっているのです。
菊さまには内緒だけど・・・。


585 :名無しさん:2007/06/08(金) 21:46:21

 それから数日後の日曜日。
私が夕飯を済ませくつろいでいると、誰かが訪ねてきた。
母が対応する。
「○○、菊地さんがいらっしゃったわよ。」
え?なんで来たんだろう?
「菊地さん、どうぞ上がってください。」
「お邪魔します。お母さん、これ今日大阪に仕事で行ったので、
 お土産です。」
「まあ、ありがとうございます。
 今お茶いれますからね。」
菊さまは私のリビングに顔を出し、父に笑顔で挨拶してきた。
「おお、菊地君元気かね。」
「はい、いつも○○さんにはお世話になってます。」
「うちの娘こそお世話になって、まあ、ゆっくりしてって。」
「はい、ではお邪魔します。」
菊さまは私よりも先に私の部屋へと入っていく。
相変わらずのずうずうしさに閉口しながらも、菊さまが何をしに
来たのか気になっていた。


586 :名無しさん:2007/06/08(金) 23:20:44

 私は部屋のドアを開けっ放しにした。
菊さまにまた何をされるか分からないし、そういうことがおこる
のが恐かった。
「線香あげさせてもらうね。」
菊さまは小さな仏壇に手を合わせてくれた。
「ありがとう。菊さま。」
「なあ、もし旦那さんが生きてたら、もしかしたら俺友達になれ
 てたかもしれないって思うんだ。」
「そうですかね?私の旦那は菊さまのペースについていけない
 と思いますけどねw」
「なんだと!それじゃあ俺がまるで変人みたいじゃないか!」
「だって変人じゃないですか。何を今更www」
「バカヤロウコノヤロウメ!バカにするのもいい加減にしろ!」
「ふふふ!菊さま一体全体何しに来たんですか?」
「こないだのパーティーの件。誘いに来たの!」
「もうその件はこないだ断ったはずですよ。」
「それがさあ、どうしてもなるべく女性同伴で来てほしいって
 頼まれてさあ。リカコが行けないっていうんだよ。」
「リカコって誰?あっ、彼女の名前かあ。
 じゃあ、他の女友達誘えばいいじゃないですか。」
「女友達なんていないよ。お前しか・・・。」
「嘘ばっかり。」
「嘘じゃない。本当だよ。」
「本当だとしても、菊さまならいろんな人のつながりで誰か
 彼女の代わりしてくれる人探せるでしょう。
 私は行けないよ。そういうところ苦手だし、行く理由もない。」
「理由なんて関係ねえ。なあ行こうよ。」
「無理です。」


587 :名無しさん:2007/06/08(金) 23:27:40

言い合いしていると母が部屋に入ってきた。
「さあ、紅茶どうぞ。これ菊地さんからいただいたお饅頭よ。」
「菊さまありがとうございます。」
「仏壇にもお供えしなきゃね。」
母が饅頭を供えた。
「お母さん、お願いがあるんですけど・・・。」
「なんでしょうか?」
「○○さんをお借りしたいんです。
 どうしても女性同伴でパーティーに行かなければならなくて。」
「あら、彼女がいらっしゃるんでしょう?」
「仕事の都合で行けないって言われてしまって。
 他に仲の良い子居ないし。
 結構世話になってる人なんで、どうしても出席しなければ
 ならないんです。どうしようか困ってまして・・・。」
「まあ、そういうことなら○○行ってみたら?
 菊地さんが送り迎えしてくれるんでしょう?」
「はい、もちろん。責任持ってなるべく遅くならないように
 きちんと家には送りますから。
 会費とか交通費も全部僕が出しますし。」
「お母さん勝手に決めないでよ。
 私そんなところ行きたくない。」


588 :名無しさん:2007/06/08(金) 23:33:10

「でも菊地さんにはいつも心配してもらってるんだから、
 こういうときに恩返ししなきゃ。
 あんたの気晴らしにもなるかもしれないし。」
「気晴らしになんかなるわけないじゃん!
 私人の多いところ行きたくない。
 知らない人に愛想笑いするのも大嫌い。
 菊さま私の事心配するとか言って、本当は私のことなんて
 一つも考えてくれてないよね。
 いつも自分の都合ばかり。
 私を慰めるつもりで優しい振りしてるだけでしょ?
 本当は私のこと哀れだと思ってるんでしょ?」


589 :名無しさん:2007/06/08(金) 23:40:34

「そんなことないよ。
 そりゃあお前の悲しみを代わってあげることはできないけど。
 だからこそ少しでもお前が元気になれることがあるなら、気晴らし
になったり、悲しい気持ちが紛れるように食事に誘ったりして
 るんだよ。」
「そんなの大きなお世話!
 彼女の居る人にそんなことしてもらいたくない!」
「お前のこと大切な友達だから。
 とてもお前のこと心配なんだよ。」
「私達もう友達でいる必要ないと思います。」
「えっ?」
「だって・・・。
 だいたい男と女が友達でいるのって不可能じゃないですか?」
「そ、そんな。
 お前今まで一回もそんなこと言わなかったじゃないか。
 どうしたんだよ急に。」
「もう、菊さまとは連絡とらないようにしたほうが・・・。」
「そんなの、俺は嫌だ。」
「彼女の居る人と遊んだりしたら、私がふしだらな女に見える
 じゃないですか。
 それに彼女に恨まれたりしたらややこしいし。
 菊さまごときで、ややこしいことに巻き込まれたくないんです。」


590 :名無しさん:2007/06/08(金) 23:53:10

「○○、菊地さんに失礼よ。
 こんなに心配してくださってるのに。」
「それが大体大きなお世話よ。
 菊さま、この際はっきり言っておきますね。
 私があなたとの付き合いやめてアキラさんと付き合い始めた
 本当の理由。」
「な、なんなんだよ。」
「あれ、アキラさんに一目ぼれしたのもあるけど、一番の理由は
 あなたのその自分勝手な性格にうんざりしたからよ。」
「そ、そんな。
 俺は確かに自分勝手かもしれないよ。
 だけど、お前のこととても大切に思ってたよ。
 誰にも負けないくらいにね。」
「大切に思ってるって、大切にしてくれたことなんてありましたか?いつも自己中で、それにあなたの将来性にも私疑問持ってたから。」
「そりゃあ、芸人だからしょうがないだろう。
 でも現にこうして今でも仕事はちゃんと続いてるよ。」
「私あなたの全然苦労してないところがいやになったんですよ。」
「苦労してないって、そんなことないよ。
 おれだって一生懸命頑張ってるんだよ。
 営業だっていろんなところに移動しなきゃいけないし、
 人を笑わせるっていうのは大変な仕事だぞ。」
「ふん、あなたは子供のころから何も苦労してないでしょ。
 私達一般人が一生かかっても追いつかないぐらいお金稼げるんでしょ?私はどうやっても菊さまには敵わない。
 そういうのが嫌になったの。」
「なんで?仕事の種類が違うだろう?それに俺は男。お前は女だ。
 そもそも比べること自体おかしくないか?
 それに俺は別に楽して金稼いでるわけじゃないぞ!」


591 :名無しさん:2007/06/08(金) 23:58:41

「絶対楽よ!
 だっていつもワンパターンなこと繰り返してるだけじゃない!」
「そんなことないよ。 
 ネタは少しずつ変えてるよ。
 それにフリートークも各地で少しずつ変えてるし。」
「いいご身分ですよね?
 少しずつ変えれば済むんだから。
 どうせ来てる客のレベルが低いからって思ってるんでしょ?
 まあ、どちらにしろ私にはもう関係ないし。
 もう、帰ってください。
 あなたの顔なんかもう見たくない。
 世界が違う人とは友達なんかなれないんですよ。
 私達会うべきじゃなかったですね。」


592 :名無しさん:2007/06/09(土) 00:04:53

秀規は○○から仕事や自分の性格に対する侮辱や嫌味を言われて
とても悲しくなった。
なぜなんだろう?
好きな子に優しくしたい、心に傷を負ってる彼女を慰めて元気
づけていきたいだけなのに。
秀規は仕事のことをけなされて怒りが沸いてくるのが自分でも
分かった。
男にとって仕事は命みたいなもの。
一番の生きがいだ。
仕事で男そのものの人生が決まる。
大切にしている今の仕事。
秀規にとっての大切な生活の糧になっている仕事。
大好きでとても大切な相方と協力して頑張ってるのに・・・。
この仕事に誇りを持ってやってきた。
なのに、大好きな○○に侮辱されるとは・・・。
それも別れたあの時からそんなことを思っていたなんて・・・。


593 :名無しさん:2007/06/09(土) 00:11:04

「○○!謝りなさい。
 菊地さんはあなたのこと大事にしてくれてるのに。
 立派に仕事してらっしゃるじゃない。」
「なによおかあさん。
 あんたさんざん私達の交際反対してたくせに。
 あんただって菊さまの仕事なんてろくなもんじゃないって
 思ってたんでしょう?」
「そんな・・・。それはその時はどういうお仕事なのかよく
 分からなかったから・・・。」
「菊さま、私達家族皆、菊さまのこと侮辱してたってことですよ。
 もうここまで言ったら分かりますよね?」
秀規はもう悲しくて言いかえす力もなかった。
「お邪魔しました。」
うなだれて○○の家を後にした。
数分後家に到着する。


594 :名無しさん:2007/06/09(土) 00:17:52

玄関に入るなり、涙が溢れてきた。
鼻水も止まらなくなった。
秀規はものすごく侮辱された怒りで、押入れの隅にかくして
あったスケッチブックを取り出し、ビリビリに破いた。
あんなに愛しい○○。
もうあんなやつ・・・。
彼女の可愛らしい表情のスケッチももう捨ててしまおう。
力いっぱい破いた紙が床に散らばる。
その上に覆いかぶさるように秀規は突っ伏して泣いた。
もう、二度とあいつに会うこともないだろう。
怒りと悲しみと、もう二度と○○に会えないと言う寂しさが
入り混じり、とても苦しくなっていた。
涙が止まらない。
もう立ち上がれないほど、秀規は参っているのだった。


596 :名無しさん:2007/06/09(土) 21:34:31

 菊さまを散々けなした私はその後、父や母にものすごく
怒られた。
「何よ!二人とも菊さまみたいな芸人とは結婚させないって
 さんざん反対したくせに!」
「今はそんなこと言ってるんじゃない。
 男はなんだかんだ言って仕事に愛着を持っているもんだ!
 それを分かった風なことを言って、菊地君を傷つけるとは。
 そんな考えを持ってたなんて情けないぞ!」
「ふん!本当のこと言わなければあの人いつまでたっても
 私に付きまとうのよ。
 彼女がちゃんといるのに、未亡人に付きまとうなんて
 おかしいじゃない?
 旦那が死んだらすぐ新しい男ができたって噂がたったら
 どうするのよ!お父さん責任とってくれんの?」
パチン!
父が私の頬をぶった。
私は涙を浮かべ、部屋に逃げ、鍵をかけた。
父にぶたれるなんてもう子供の時以来。
久しぶりのその痛さに私は自分でも嫌悪感に陥っていた。


597 :名無しさん:2007/06/09(土) 21:42:15

 菊さまが私の事心配なんてしなければ良かったのよ。
そっと私の前から姿消してくれてたら、私の状況をたとえ
知っていたとしても、知らん顔してくれてたら良かったのに。
私は寂しさと情けなさと自己嫌悪で泣き続けた。
しゃっくりが止まらない。
なんでこんな思いをしなければならないんだろう?
私は素直に菊さまに謝る気は無かった。
もうこんな私を心配したり励ましてくれる人は誰もいなくなった
わけだ。
ああ、なぜ私の旦那は死んでしまったんだろう。
あの人が生きていてくれたらこんな思いすることなかったのに。


598 :名無しさん:2007/06/09(土) 21:47:38

その後、菊さまからの連絡はパタリとやんだ。
多分もう話す事も会うこともないだろう。
これで私を心配してくれる男の人は誰もいなくなった。
かえってスッキリした反面、もう一人で生きていくという覚悟を
決めなければならなかった。 私は年末から就職活動を始め、何社か面接に行った。

そして1月から契約社員としてある会社に働きに行くことが
決まった。


599 :名無しさん:2007/06/09(土) 21:54:31

 私は新しい仕事に没頭した。
OLの経験を生かすこともでき仕事は充実していた。
職場は大勢の人間がいるので毎日いろんな人と出会う。
私は新しい出会いを期待しつつ、毎日を過ごした。

Last modified:2007/09/29 13:52:14
Keyword(s):
References:
This page is frozen.