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43-187


兄妹弟子のとある一幕



どうしてこうなった。
今この時、二人の心中を埋めるのはその一念のみである。




「……」
「――」
アル・イーズデイルとナーシア・アガルタ。
国も違えば立場も違う、やっている事の清濁さすらかけ離れている二人。
片や王国第一の騎士であり、片や元騎士団所属の密偵。
過去には同じ師を仰いだ時期もあったものの習った剣まで正反対。
真正面から敵を薙ぎ倒す正道。僅かな隙を作りだし蛇のように付け入り音も無く敵を葬る暗殺剣。
ここまで性質の違う二つの剣を教えた師の技量は古今類を見ないものであったのだが、今それは関係ない。
問題はただ一つ。
「……なあ、ナーシア」
「……なに?」
「どうして俺たち、こんな洞窟で暖を取ってるんだろうな」
真っ暗な洞窟。光源は二人の間でパチパチと音を立てている焚火のみ。
二人の衣服はずぶ濡れであり、適当な場所で焚火に晒して乾かしている最中だ。最低限の衣服しか今は身に付けていない。
耳を澄ませば少し遠くから水の流れが聞こえてくる。
端的に言って、二人は流されてこうなった。
「何故も何も、アルがトラップに引っ掛かったから」
「違うだろ!? お前がトラップを感知して自信満々に『ここのトラップは解除したわ』とか言ったのを信じて進んだらこうなったんだよ!
 さらっと人のせいにすんじゃねえ!?」
「まったく、アルはすぐに人のせいにしたがる。昔から変わらない悪い癖ね」
「それをお前が言うのかよ……!」
状況はこうだ。
ナーシアが仕掛けられていたトラップを感知し、それを解除する。
アルはそれに安心しきって歩を進めるものの二重に仕掛けられていたトラップが作動。
激流が二人に襲い掛かりそれに押し流され、命からがらそこから脱出。
洞窟のどことも知れぬ場所でずぶ濡れになった衣服を乾かす事にして今に至る。
「それにしても寒いな……まだ何か燃やす物なかったっけ」
「無いわね。さっき放り込んだそこら辺の魔物の毛皮が最後」
「そうか……」
「……」
「……」
それっきり会話が続かない。
パチパチと燃える焚火と未だ流れ続ける水の音だけが鼓膜を震わせていた。
……二人としては、こうも会話が続かないのは珍しい。
普段ならナーシアがアルをからかうなりして適当にお茶を濁すのが定番なのだが、今はそれすら行われる気配がない。
(まあ、お互い恰好が格好だからな……)
ついつい、視線が彼女の身体へと向いてしまう。
今の二人は最低限の衣服のみ―――要は身に付けているのは下着のみである。
いつもは服の下に隠れている彼女の身体が、今ははっきりと見えているのだ。
見た目以上に豊満で形の良い胸や、女性らしい腰の括れや太ももの艶やかさ。
水に濡れ、水滴の滴る髪や身体が焚火の炎に照らされて筆舌に尽くしがたい扇情感を醸し出していた。
伏せ目がちのその表情は炎をじっと見つめて揺らがない。
抱き締めれば折れそうな細い身体。
精密に作られた人形のように整った美貌。
今の今までこれっぽっちも意識してこなかった事が直に目にする事で嫌でも意識させられる。
(こいつもやっぱ、女性なんだよな)
初めは妹弟子として、その次は仕事の依頼人と協力者として。
どちらも明確な目的がありそれだけを考えて生きてきた二人だ。そこに変な情が入る隙間は無い。
しかし、それも昔の話。
今となってはその目的もお互いに達成されている。
アルは師の真意を、ナーシアは弟の安全を。
もっともそれは通過点に過ぎず、更なる先ができた訳だが―――、一応はそれを達成した事で精神的に余裕もできた。
新しく目的を定め、以前より視野を広く持ってそれに挑んでいる。
そんな中で、改めてナーシアを異性だとアルは強く意識して―――


(まあ、今更それがどうしたって感じだな)
だからといって、別に何かが変わる訳でもなかった。
濡れた肢体を目にしても変な劣情を抱く事はない。ナーシアはナーシアであり、アルにとってはやはり妹弟子で仲間なのだ。
「しかし腹減ったな……携帯食でも食うか」
ゆえに普段通り。
小腹を空かせたアルは荷物の入った鞄を覗き、持ってきた携帯食が無事かどうかを確かめる。
それが、
「……ねえ」
突如として掛けられたナーシアの声に遮られた。
顔を向ければ彼女は伏せ目どころか半目になってこちらを睥睨している。
何か不味い、とアルの本能が警鐘を鳴らした。
「な、何だ?」
「何だ、じゃないわ」
ずい、と身を乗り出してくるナーシアにアルは思わず冷や汗を流しながら背を仰け反らせる。
さっきまでの何かが彼女の琴線に触れたのだろうか? 今さっきまでこんな風にこちらを睨む兆候すら見せていなかったというのに。
彼女の瞳は真っ直ぐとこちらを見ており、それが何よりも雄弁に彼女の今の心境を語っている。
気に入らない、と。
「貴方、もしかしてロリコンだったりするの」
「何でそうなるっ!? 今の流れから何をどうしたらそこまで突飛な質問が飛び出てくるんだよお前!?」
「じゃあ同性愛者」
「俺は到ってノーマルだ!」
「けど女性が苦手なんでしょ」
「それとこれとは話が別だっての! 大体、俺が女性が苦手な理由はお前が毎度毎度実践しているだろうがっ!!」
変だ。
確実に変だ。
今のナーシアはおかしい。アルはそう断言する。
普段ならこの手の話題はストレートに聞かずわざとぼかして都合の良いように解釈するはずなのだ。そうやってこちらを弄るのが相手の手口だ。
が、今回はそうではない。どストレートに疑問を投げかけてこちらに真っ向からの反論を許している。
のらりくらりと避けながら逃げ口を塞ぐ彼女らしからぬ態度。
重ねて言う。
今のナーシアはおかしい。
「ったく……いったい何が不満なんだよ」
「分からないの?」
「ああ分からないね。何だって急にそこまで不機嫌になるんだよ。俺が何かしたか?」
その一言で余計にナーシアに睨まれるアル。
彼としてはここまで睨まれる原因など皆目見当も付きはしない。不用意に彼女の肢体を盗み見る事も、それ以上のやましい事も何もやってはいないのだ。
そもそも、そんな事をして後にどうなるかなど目に見えている。
彼は自分からわざわざ死ににいくような自虐的性格などしていないのだ。
だというのに、これはいったいどういう事か。
重ねて言うが、アルはナーシアに対して何もしてはいない。
だからナーシアが今現在不機嫌な理由もさっぱり分かりはしない。
「朴念仁」
「だからっ、何でそうなる!?」
「……分かった。話が進まないから言わせてもらうわ」
更にじとっとアルを睥睨しながら、ナーシアは不機嫌の理由を言い放つ。
「腹が立つのよ」
「は?」
「貴方が、この状況で、何の反応も無く、さっぱりきっぱり微塵たりとも動揺を見せないで泰然自若としているのが気に入らないって言っているの」
「完っっっ全に言いがかりだよなそれ!!?」
理不尽である。
囮にされて牢屋に放り込まれても助けに来なかったり縄でぐるぐる巻きにされて岩陰に放置で囮にされたりとこれまでにも理不尽な目には遭ってきたが……
今回はまた別のベクトルで理不尽だ。


「ていうか、何か反応したらお前どうしたんだよ。俺をからかうかぶっ飛ばすかのどっちかだろ」
「当然じゃない」
「即答かよ! つかだから反応しないんだよ!!」
「……じゃあ、ピアニィと今の状況になったらどうなの」
「は? 何でそこで姫さんが……」
「いいから、つべこべ言わずに想像する」
言われるままに頭にピアニィとこの状況に陥った場合を想定する。
焚火を灯し、衣服を乾かし、普段と違って会話も無く濡れた肢体が目に入り……
「……」
少し、気恥ずかしい―――かもしれない。
「ほら、やっぱり。ピアニィにはそういう反応をする」
「な、何がやっぱりなんだよ。ていうかお前そこまで表情読み取れるのか」
「アルの表情から心境を読む事くらい、朝飯前」
「俺限定かよ……」
長年の付き合いがあるから、というだけでなくからかい目的が理由の半分以上を占めていそうな気がする。というか絶対にそうだ。
改めて妹弟子の質の悪さに溜息を吐きそうになる。
しかしここでそんな事をしては余計に相手を逆撫でするだけだ。アルはそれを何とかこらえてナーシアを見返す。
「……やっぱり、アルのくせに生意気」
だが、やはりと言うべきなのか。
アルが頑なに動揺しまいと平静を維持すればするほどにナーシアの不機嫌さも増していく。
このままでは何をしでかすか分からない。ここは一つ観念してからかわれる方が後々楽なのではと思い始めたその矢先に、
「そっちがその気なら……分かったわ。私にも考えがある」
ずい、とこれまで以上にナーシアが身を乗り出してきた。いや、挟んでいた焚火を越えてアルの傍までやって来る。
嫌な予感しかしない。
「な、ナーシア」
「動かないで」
ピシャリ、と言い放ちながらナーシアはなおもアルに接近する。
濡れた肢体や髪をそのままに、ゆっくりと、流れるように手を伸ばす。
不機嫌さとは裏腹にいつも以上に穏やかな動作は、付き合いの長いアルでも見た事のないものだった。
からかう時の天邪鬼さでもなく、戦闘の際の冷徹さでもなく、休息している最中の緊張と安堵でもなく、弟に見せる愛情でもない。
初めて見る彼女の表情。
それがアルの動きを止めていた。
「じっとしていて……そのまま……」
アルの耳朶を囁くような声が打つ。
今にも消え入りそうな、それでも芯の入った声がアルの動きを更に止める。
伸ばされた手がアルの肩に掛かる。
そのまま壊れ物を扱うかのような不器用さと繊細さで掴まれて、そこから更にナーシアが近づいてくる。
下着だけで支えられている胸が、無防備な肢体が水滴と焚火に照らされている。
目と目が合う。
感情の読めない透き通った紫水晶のような瞳―――だが、僅かに頬が赤く見えるのは焚火のせいなのか。
分からない。
目の前にいる女の事が、少しは理解していると思っていた彼女の事が、今は何一つ分からない。
困惑の只中に叩き落されたアルはナーシアの行動に対して何の反応も返す事ができない。
突然の行動に身体を硬直させ、それをいい事に更に距離を近づけるナーシア。
互いの吐息が掛かる。鼻と鼻がぶつかる。
今のお互いの距離はそんなもの。触れるか触れないか、決定的な線引きの前で彼女は踏み止まった。


「なあ……からかうのも、いい加減にしてくれねえ? なんというか、この状況はいろいろと不味い気がするんだが」
出てきたのはそんな情けない言葉だけだった。
が、ナーシアはそんなアルの言葉を聞き入れようとはしない。
むしろ何か決意を固めたような輝きを瞳に宿す。
「ま、待てナーシア。落ち着けっ」
「大丈夫。私は至極冷静沈着よ」
この状況になればいかなアルとてこの後に待ち構える展開が何なのかは想像がつく。
しかしそれはいろいろと不味い気がするのだ。
具体的にどう、とは言えないがとにかく不味い。
それに、今までナーシアをそういう対象として見てきた事はなかったのだ。
(ん……? じゃあ何でこんな状況になるんだ)
もしかして向こうはこちらをそういう対象として見ていたのか、などと考えて即座にありえないと思考を振り払う。
だったら何故、と答えの出ない自問自答が繰り返され、
「じゃあ……」
ナーシアの目が閉じられ、
「やっぱ落ち着け、考え直せ! お前気に入らないとかそんな理由でこういう事をするのは―――!」
アルが最後の抵抗で声を上げて、




「ん……」




唇で、その声を堰き止められた。
「―――」
「―――」
お互いの唇と唇が触れ合うだけのつたない口づけ。
そのまま動くでもなく、離すでもなく、ただお互いの唇同士を重ね合わせる。
ナーシアの身体から力が抜け、柔らかな肢体がアルへとしなだれかかる。
抵抗や否定の声は上げさせないと、目を閉じたまま唇を触れ合わせている。
一方のアルはそんなナーシアの姿から目を離せずにいた。
知らない。こんなナーシアは見た事が無い。
出会ってから今の今まで、彼女は自分に対してこんな態度を見せる素振りも兆候も無かった。自分もその気はなかった。
しかし、現実はこうだ。
今まで見せた事のない表情、今まで見せた事のない態度。女性らしい、今までの誰よりも女性を感じさせるナーシア。
だから目が離せない。強く意識して、感じてしまう。
愛でもない。恋でもない。そんな甘い感情では決してない。
だけど確かに―――何か胸に訴えかけるものが、今は感じられた。
それから、どれだけ時が経っただろうか。
「……はぁ」
どちらからともなく、唇を離した。
胸が高鳴るのを互いに自覚する。よく分からない感情が心を満たす。
決して悪いものではない。しかし形が定まらず、宙に浮いているような、それでいて絹に包まれているような感覚がある。
これは、何なのだろうか。
よく分からない。
「お前……こう、無暗にやるのは止めておけよ」
「アルが私を女性として見ていないのが悪いのよ」
「意識していたらからかっただろ」
「ええ。だってそれが楽しいもの」
だからいつも通りのやりとりが交わされた。
だけどそれもどこか違って見えて……
「……別に、気に入らなかったからってやる訳じゃないわ」
「ん……?」
「貴方だから……貴方だったら、良いって。そう思ったから」
そんないつもらしくない言葉がナーシアの口から漏れる。
「アルは、どう……? 私じゃ、やっぱり無理?」
「俺、は……」


言葉が咄嗟に出てこない。
そんな事、考えた事も無かったし今だって現実味に欠けている。
気持ちが定まらない。
今までの価値観と、人物像と、今の状況が頭の中をぐちゃぐちゃに掻き回す。
その沈黙をどう受け取ったのか、やがてナーシアはクスリと小さく笑った。
「まあ気にしないで。こんなのはたぶん、一時の気の迷いだろうし」
手に力を籠め、身体を離そうとする。
触れていた感触が喪失していく。
そこからは―――おそらく、反射だったのだろう。
気付けば、今度はアルがナーシアを抱きすくめていた。
「……アル?」
「ったく……黙っていたと思ったら不機嫌になって、いきなりこれで、訳分かんねーって。
 何でもかんでもいきなり過ぎるんだよ、お前」
口では文句を言いながら身体はナーシアを抱いて離さない。
ナーシアもされるがままであり、特に抵抗する訳でもなくアルに抱かれたまま言葉を聞いている。
―――どこかで、水滴が一つ、落ちた。
「……それで?」
「ん……?」
「これで……終わりなの?」
普段は無い妖艶な響きを持った声でナーシアが囁きかけてくる。
状況もおかしければ言動もおかしい。
今日ばかりはどうにかしている。まるで酒にでも酔ったかのようだ。
が、それはアルにも言える事であり……
「―――知らねーぞ」
「言ったでしょ……アルなら、良い」
お互い、この場の雰囲気に酔っているのだろう。
瞳を覗き込めばどこか浮かされたような熱が籠っているのが分かる。
アルの手が、ナーシアの頬に添えられる。
言葉は無い。触れ合う身体から伝わる鼓動がやけにうるさく響いている。
「分かった」
ここまで来たのならとことん酔ってしまうのも良いだろう。
あとになって後悔するかもしれないが、もうそんな事を気にしない。
今は―――
「目、閉じろ」
「ん……」
今は、今だけは。
この一瞬に、互いだけを感じていたかった。



「は……ん……ちゅ、ん」
口の中を互いの舌が行き来して、絡み合う。
多少の息苦しさを感じるものの口膣から伝わる刺激と甘露の味わいが舌のまぐわいを止める事を許さない。
もっと、もっとと頭の奥から囁く声が響いてくる。
アルもナーシアも素直にそれに従って、互いの口膣を貪るように味わった。
くちゅり、ぴちゃり、と淫魔な水温が耳朶を打つ。それが一層二人の興奮を煽り、互いを求めさせる。
「ぷはっ……」
口を離せば、てらてらと光る糸が互いの口に繋がっており……それがぷつんと切れる。
それを見るまま、アルの手は無造作にナーシアの胸をまさぐっていた。
「はぁ……っ」
ピクン、とナーシアが身体をくすぐったそうに捩じらせる。
アルとしても女性の胸を触るのは初めてだが―――とりあえず真っ先に抱いた感想はこうだ。
柔らかい。
彼女の形の良い胸はマシュマロのように柔らかで、掴んでも優しい弾力が押し返してくる。
頭を金槌で殴られたような衝撃と一緒に、よく分からない感動があった。
意識せずとも手が勝手に動いてしまう。
「んぁ……っ、アル、がっつき、すぎ」
手を動かすと跳ねるナーシアの身体がより扇情的な雰囲気を演出してアルを惑わす。
堪え切れずに漏れ出す声は小鳥の囀りのようでありながら、しかし男を誘う色香に満ちていた。
慣れているのか、はたまた天性の賜物なのか。
これがいろんな意味で初めてであるアルにそれは分からないが、
「ふっ、は……っ、ん、ぁぁ……」
感じている。
感じさせている。
感じてくれている。
妙な気分だった。今まで妹弟子として、仲間として接してきた彼女とこんな事になっているのは。
しかしその妙な気分を感じてなお、アルは彼女にもっと感じて欲しいと思う。そう考えると手の動きはもっと大胆になった。
ただ胸を揉みしだくだけではなく、そのまま付けられていたブラをずらしていく。
「あ……」
露わになった乳房がぷるんと揺れた。
小さな乳首は既にピンと立っており、自分の拙い愛撫でナーシアが感じてくれている事を示してくれていた。
「もっと、見せてくれよ」
それに魅せられるように、あるいは赤ん坊のようにアルは戸惑い無くナーシアの胸へと吸い付いた。
「ひゃっ!」
全く予想しなかった方向の刺激にナーシアが短く驚きの声を上げる。
それに構う事無くアルは舌先で乳首を転ばすように愛撫した。
ざらざらとしていながらも滑りのある舌での愛撫、という未知の感覚にナーシアは背を弓なりに仰け反らせた。
舌先が乳首を舐め上げる度に背筋にゾクリと快感が奔り、生暖かい息が吹きかけられる度に恍惚の息と共に身を震わせる。
「はぁぁ……ん」
今まで聞いた事のない、おそらくはナーシア自身聞かせた事も無い声を今この瞬間自分だけが聞いている。
沸き立つ独占欲と愛情。
もっとこいつの声が聴きたい。肢体を思うままに貪り、あられもない姿で艶声を上げさせたい。
「ぁ……」
右手が下へと伸びた。
胸から徐々に下がっていき、腰の括れやふとももを滑りながら―――下着の中へと手を入れた。
「ん……濡れてるな」
「……うるさい」
ほんの少しではあるが、秘部は確かに愛液で湿っていた。
割れ目を指で優しく撫で上げると彼女の身体はビクリと大きく反応する。
動かせば動かすほどに身体の反応は大きくなり、次第に愛液の量も増えてきた。
「こんな感じで良いのか……?」
「……そんな事、言わせるつもりなの」
悪い、と思わず言いかけて……ふとアルは思いついた。
いつもなら素直にそう言って終わらせるところだが、ちょっとした状況にあてられたのかちょっとした悪戯心が頭を上げる。


「……そうだな、ナーシアの口から聞きたい」
「なっ……」
ナーシアとしても思わぬ反応だったのか妙な驚愕を表情に張り付けてアルの顔を見る。
対するアルも自分ではどう表現すればいいのか分からない妙な笑みを浮かべていた。見る人が見れば人がおそらく悪いと言われるだろうと思う。
その顔で彼女は彼の意図を察し、苦虫を噛み潰したような表情になりながらも羞恥心から顔を真っ赤に染める。
しかしアルはそれを見逃さない。
意識が逸れた途端に秘部を這わせている指を動かし、不意に齎される刺激に甘い声を上げながらナーシアの意思とは裏腹に身体が跳ねてしまう。
「なあ、聞かせてくれよ」
「〜〜〜〜〜ッ」
耳元で、低く、染み渡らせるように囁く。
ただそれだけでナーシアは総身を震えさせるような快感に襲われてしまう。
まるで耳の中から全身を愛撫されたような、力の抜ける感覚。
はぁ……っ、と艶めかしい吐息が漏れる。
その間もアルの愛撫は止まらない。なおもナーシアの快感を掻き立てるために胸を、秘部を、拙いながらも刺激していく。
「ぁあ、ふぅ……っ」
「どうなんだ、ナーシア?」
人間ってのはとことん雰囲気に流されやすいんだとアルは痛感していた。自分でも予想外なほどナーシアを追い詰めようとしている。
まだ冷静な部分がこれ以上はまずくないかと語りかけてくるが……意図的に思考の隅に追いやった。
この状況で冷静になるとそれこそ後が怖い。やるならば徹底的に犯るべきである。
くちゅり、と音を立てて指を割れ目の中に侵入させる。
「んあっ―――!」
「ほら、言ってくれなきゃどんどん激しくなるぞ」
「そんな、事……っ、はぁ、言われ、たって……」
あのアルに向けてそんな告白をするなど、どうしても羞恥心が先に立つ。
あのまま雰囲気に酔い続けていればそうでもなかったかもしれないが、そうなる前にナーシアは羞恥心を引き出された。
それ以上に今のアルと彼女では立場が半ば逆転している。
ここで下手に出てしまったらどうなるか……想像すると共に身体が震えた。しかしそれを彼女は認めない。
「……そんなに、聞きたいなら」
「聞きたいなら?」
「直接、私の身体に……聞けばいい」
だから代わりにそんな言葉が飛び出していた。
精一杯の強がりと、快楽を求める本能とを両立させて―――
瞬間、乱暴に唇を奪われた。
「んむっ……!?」
息が詰まる。
舌が入り込んできて口膣を蹂躙する。
歯を、口の裏を、舌を、蛇のように這い周りながら絡まってくる。
普通なら息苦しいだけのそれに対して、しかしナーシアは積極的に応えていた。
自ら舌を絡め、求め、受け入れる。一方的なものから互いに求め合うものへと変えていく。
それが不思議な心地よさをナーシアにもたらす。
「ア、ル……ん、ふぁ……」
深いキスを堪能しながらもアルの愛撫は止まらなかった。
手が胸を這い、指が秘部の中へと侵入してくる。
時に荒々しく、時に優しく揉まれ、中を掻き分けるように様々な場所を刺激してくる。
普通ならば乱暴と思えるその行為すら、今のナーシアは快楽として享受していた。
「ぷぁ……い、いきなりどうしたの……んっ!」
「お前がいきなり可愛らしい事言うから、歯止めが利かなくなっちまったんだよ。殺し文句のつもりなのか、アレ」
「ぐ……」


言っていた時はいろいろと混乱して夢中だったものの、改めて何を言ったかを認識させられると盛大に恥ずかしくなる。
何が直接身体に聞けばいい、だ。もう完全に身を委ねてしまっているではないか。
それも、あのアルにである。
改めて認識させられて悔しさが湧き上がって来るものの、今はそれ以上の心地よさを感じているのが余計に悔しかった。
それでいいと、思ったのだ。
「それにしても……アルにしては、珍しい台詞を聞いたわ」
が、それだけではやはり収まりがつかないので少々意趣返しをしてやる。
「なんだよ」
「私に可愛らしいなんて、普段の貴方なら絶対に言わないのに」
どちらかといえば厄介で油断のならない、むしろ恐怖の対象だとでも言ってのけるだろう。
自分と彼の関係はそんなものであり、今更それを変えるつもりもなかった。
だというのにこういう行為に耽っている今はどういう事なのかと思うが、状況がそうさせたのだ。今は気にしない。
なのでアルに少しでも意趣返しをしてやろうと思ったのだが……
「そりゃ、普段が普段だからな。けどこうやって俺の腕の中で身悶えてるお前は、素直に可愛いと思ったよ」
「な……」
まさか普通に返されるとは思わずナーシアはまたもや面食らった。
反応としては少しくらい狼狽するのを期待していたというのに逆にこちらがやられるとは全くの不覚である。
それと同じように、アル自身すんなりと言葉が出てきたのには驚いていた。
普段は一方的にからかわれているだけのナーシアを相手にして意外な事に自分が優位に立ち続けている。
だから微妙に調子に乗ったのだろうか。
秘部に侵入している指を動かすと、ナーシアが甘い声と共に跳ねた。
「あっ……!」
「ほら、そういうとこ、可愛い」
「うぐ……っ」
言葉に詰まり、それでも身体は素直に反応を返してくる。
秘部から滴る愛液の量もさっきまでとは比較にならないほどに溢れており、それだけ興奮しているのが伝わってくる。
……もう十分か?
そう判断したアルは体制を少し変える。
ナーシアの腰を持ち上げるようにして下着を脱がせ、秘部にさっきから痛いくらいに張り詰めた一物を宛がった。
「そろそろ……いいか?」
念のために確認をとる。
ナーシアの視線は自分のものに釘付けになっており、ごくりと喉を鳴らすのがはっきりと聞こえた。
しばらく、そのまま硬直。
アレが入るのかと、あんな大きいものが入るのかといった思考だけがナーシアの頭の中でぐるぐると巡っている。
そういった行為を記した書籍などは気まぐれに読んだ事はあるが、初めては相当痛いとかどうとか。
どうして男性と女性でそんな差があるのか、少し卑怯ではないだろうかなどと思うが、思ったところで意味はない。
そして、大きい。
他のものなど見た事はないが、大きいと思った。
あんな大きなのが自分の中に入ってくるのだ。指ですら中を掻き回されただけで身体が跳ねたというのに、あんなものを入れられてしまえばどうなるのだろうか。
ぞくり、とした感覚が背筋を奔る。
「いいわ……来て」
アルと今から、繋がる。
そう思っただけで胸が高鳴り、秘部から愛液が溢れた気がした。
一方のアルも同じような気分でいた。
あのナーシアと今から確実な一線を越える。それだけで妙に興奮を掻き立てられる。
アルのものが、ナーシアの入り口に辿り着いた。


にちゃり、と粘ついた水音が耳朶を打つ。
「じゃあ、いくぞ」
「……」
言葉は無く、首肯だけが返される。
浮かしていたナーシアの腰を、少しずつ沈めていく。
「は、ぁ……入って……!」
熱い。
蠢いている。
締め切られそうだ。
まだ先端が少し入っただけだというのに思わず息が漏れるほどの快感がアルを襲う。
ナーシアもまた、侵入してくる雄に快感を覚えていた。
まるで焼けた棒を押し込まれる感覚。
中が無理やり押し広げられ、その圧迫感や感じる熱さの全てが快楽の信号に変換される。
少しずつ、奥の方へと入り込んでいく。
徐々に、徐々に、奥まで。中がアルで満たされる。自分がナーシアに包まれる。
……と、
「……あ、れ」
ナーシアはふとした疑問を覚えた。
随分とアルが入り込んできている。視線を下にやればもうほとんど自分の中に入っていた。
が、痛くない。
痛くないのである。
「ぇ、あれ……」
処女膜はどうしたのだろうか。痛みどころか破けた感覚もなく、血すらも流れていない。
困惑。断言して自分がこういった行為に及ぶのはアルが初めてであり、他の男に身体を許しても良いなどと思った事はない。
アルは奥まで自分の中に入ってきた。しかし痛みは無い。
無いのだ。
「ナーシア、動くぞ」
「あ、ちょ、アル」
待って、とは続かなかった。
アルが動いた事で膣内が擦れ、全身を電流のように快感が奔ったからだ。
「ぁんっ! はっ、ふぁあっ!」
痛くない、痛くない、痛くない、痛くない、気持ちいい。
身体が上下に揺れる度に奥の奥が押し上げられるような圧迫感と共に快感が押し寄せてくる。
初めては痛いはずなのにとか、自分は処女のはずなのにとか、そんな疑問はすぐに消えた。正確には考えられなくなった。
自慰などとは比べ物にならないほど激しい快楽の波がナーシアを襲う。
まるで思考が纏まらない。突き上げられる度に頭の中が白濁して寸断される。
「はん……あっ、あぁ!」
「くっ……ナーシアっ」
感じられるのは自分の中で暴れるものと、自分を抱いている彼の腕だけ。
それ以外は感じられない、分からない、考えられない。自分がどこにいるのか分からない。
宙に浮いているような漠然とした感覚と心地よさ。地に脚を着けていない恐怖。
心が、身体が、アルだけで埋め尽くされていく。
「ア、ル……! アルぅ……っ!!」
気付けば、名前を呼びながらしがみついていた。
腕を背に回し、その感覚に縋って自分がどこにいるのかを確かめる。
「わた、し……っ、わたしっ、ここに……いる……っ?」
アルからしてみれば意味の分からない問い掛けだっただろう。
彼はこちらの感覚など知らないし、それによる不安など分かるはずもない。
だからこれは自慰のようなものだ。勝手に縋って、未知の感覚の恐怖を和らげている。
だというのに、彼は、アルは―――
「大丈夫だ。俺は、ちゃんとここにいる」
腰を掴んでいた手を背に回し、痛いくらいに抱き締める。
ナーシアの華奢な身体はそれだけで折れそうだったが、彼女は逆に安心したように身体から力を抜いていった。
自然と、顔と顔が向き合う。


「ア、ル……」
「なんて顔してんだよ……こんなんで泣く球じゃないだろうに」
スッ、とアルの手がナーシアの目元を拭う。
どうにも気付けば流していたらしい涙を彼は拭ったらしい。
もう何が何だかナーシア自身分からない。
ただ初めての感覚に戸惑って、恐怖して、アルの腕に抱かれて安堵して……
そんなまるっきり恋する乙女のような態度に困惑する。
こんなの、自分の領分ではない。
「……やっぱり、アルのくせに生意気」
「そりゃさっきも聞いたよ」
自然と、キスをしていた。
さっきまでとは違う、触れ合うだけの単純なキス。
だけど、ただそれだけで熱い吐息が漏れてしまう。頭は沸騰したように蕩けそうだった。
「ね、アル……もっと」
「分かった」
ナーシアの求めに苦笑して、アルは腰の動きを再開させる。
打ちつけられる一物に合わせて今度はナーシアも腰を振っていた。
動きを合わせて、もっと奥へと招き入れるように。もっとアル自身を感じるように。
悦んでいた。今の彼女は真実、女としての悦楽に溺れていた。
「あっ、ん! はっ、深ぁ……っ! んんぅっ!!」
「くっ、あ……ナーシア、きつ……」
「いい……っ、いい、からぁっ! もっと、もっと来てぇ! アルを感じさせてッ!」
言葉の最後はもう叫んでいるようだった。
ただただ互いが欲しく愛おしく、貪欲に貪り合う。
もっと欲しい。もっと感じて。もっと愛して。
激しい快感が脳を焼く。腰を打ち付ける音と秘部から溢れる愛液の水音が洞窟内に反響してより一層卑猥な音を奏でていく。
「アル……っ、わた、ひっ、もう……!」
「俺も、そろそろやばい……!」
限界の近いアルの愚息がよりその大きさを増す。
それに反応してナーシアの膣内も収縮し、更に締め上げてくる。
雄から搾り取ろうとする雌の動きを既に身体が覚えていた。
快楽の果てを求めて獣のように腰を打ち付け合う。思考は情欲の一色、ただそれだけ。
燃えるような熱に浮かされて求めるままに貪り尽くす。
「くっ……!」
が、しかし。
流石に膣内で出すことには忌避感を覚えるのかそれが暴発する直前にアルは自分のものを引き抜こうとナーシアの腰を持ち上げる。
引き抜かれていく感覚。ストロークとは違いそのまま出て行こうとする動き。
それに反応したのは、よりにもよってナーシアの方だった。
「やぁ……っ!」
アルの手の動きに逆らって無理矢理腰を落として打ち付けた。
快感を逃がしたくないのか、アルを逃がしたくないのか、そんなことはもう考えられない。
ただ分かるのは、もっと欲しいという一念だけ。
身体の奥にある疼きが彼を求めている。どうかこれを、貴方で満たして溶かして欲しい。
ともすれば今までの中で一番女性らしい思考かもしれなかった。それほどまでに強く、自分は彼を欲しているのだと自覚する。
「な、ナーシアっ! やばい、これ以上は流石にやばいって……!」
「やぁっ! らめ、もっろ……っ!」
既に呂律の回らない言葉で反対を示しながら赤子のようにしがみついてくる。
思考は働かず、本能で快楽と温もりを求めている。
蠢く膣内が更にアルの肉棒を刺激した。
「くっそ……ああもう、どうにでもなれっ!」
その様子に引き剥がせない事を悟ったのか、アルもそのままスパートをかけた。
ナーシアがより一層甲高い媚声を上げる。
互いを抱く腕の力が増し、果てへと上り詰めているのが分かる。
不意に、突き上げた肉棒が膣内の奥―――子宮を叩いた。
「んっ、あ―――ッ!!」
未知の刺激に身体が震え上がる。
ギュウと収縮する膣内で、締め切られそうなほどに圧迫されたアルのそれは―――


ギュウと収縮する膣内で、締め切られそうなほどに圧迫されたアルのそれは―――
「ぐっ、ナーシア……ッ!!」
「アルっ、んぁ―――ああぁぁあああぁああッ!!」
暴発する。
上り詰めた果ての果て、悦楽に染まった忘我の絶頂へと至る。
滾りが限界を超えて、白濁の欲望が奥の奥で吐き出された。
膣内を焼く熱が脳髄までを犯し尽くし、至上の悦楽が刻まれる。
「ぁ……ぁ、ふ……」
恍惚の吐息が喉を震わせる。
これ以上は無いほどにアルと身体を密着させ、吐き出された欲望を自らの内に感じ取った。
ああ、出たな、と。その意味もよく考えないまま……ナーシアは心地よい気怠さに身を任せた。


「……やってしまった」
「やってしまったわね」
それからしばらくして―――行為後の疲労から回復した二人はいい加減に乾いた衣服を着こんで出立の準備をしていた。
ただし、アルはどことなく項垂れていて哀愁が漂っている。
そんな彼を見てナーシアは呆れ顔で溜息を吐いた。
「終わった事を悔やんでも得なんて一つも無いわよ」
「そりゃ、そうだが……けど流石に膣内で出したのはなあ……」
はあ、と重い溜息が漏れる。
こんな事が表沙汰になればただでは済まないだろう。
―――こっちの気も知らずに囃し立てるベネット。
―――なにやら思案顔で唸るナヴァール。
―――おそらく同情で涙を流しているアンソン。
―――なにやら身悶えているアキナ。
―――怖い笑顔でこちらを見ているエルザ。
―――止めとばかりに、絶対零度の殺意を伴ったフロストプリズム。
「殺意が……、殺意が来る……っ」
「何を震えているの貴方は」
アルがベルフトやテオドールと対峙した時に匹敵しかねない恐怖を感じる中、ナーシアは全くの普段通りだった。
それこそ、先程までの情事など初めから無かったかのように。
そんな彼女の様子を見ていれば一人で騒いでいるのも馬鹿らしくなってくる。
俺もこいつのように泰然自若としていれば何の問題も無いんじゃないだろうか、とすら思えてくる。
そう思った最中、ふとナーシアがクスリと笑った。
その微笑みにアルはなにやら不吉なものを感じて仕方がない。
「……なんだよ」
警戒しながらも微笑の意味を尋ねる。
すると、ナーシアはその微笑みのままにこう答えた。
「少し考えたのよ。私って一応メルトランドの次期女王なのよね」
「お、おう……」
ピンときた。
予感が確信に変わった。
聞きたくない。その先を聞いてしまうと更に面倒事を抱え込む事になる。
が、耳を塞ぐ事はできなかった。
それよりもまえに、爆弾が投下されたからだ。
「もし私が女王になって貴方との関係を公表したら―――さぞかし愉快な事になると思わない?」
「絶っっっっっっ対にならねえ!!!!! なってたまるかあ!!!!!」
それは貴方次第ね、と軽い調子でナーシアは焚火を消して歩き出す。
後ろから食って掛かる声が響くが気にしない。美味しいネタができたのだからしばらくはアル関連で退屈する事はなさそうなのだ。これを手放すのは勿体ない。
付き合いはまだまだ続くのだろうからとことん堪能させてもらわなければ。
だから早速ナーシアはアルをからかいに入る。
振り向き、小悪魔のような笑みを見せて雰囲気を作る。
「私とまたシたいのならいつでも言ってくれていいから。受け入れる用意はあるわよ」
「金ッ、輪ッ、際ッ、ご免だね!!!」
フンッ! とばかりにそっぽを向かれてしまう。
あら残念と呟いたのは果たして冗談かそれとも本心なのか―――その答えは彼女にしか分からない。
「ん……」
秘部から流れる白い液体にナーシアはアルに気付かれないくらい小さく股を震わせた。
初めてだというのに痛みが無ければ処女膜すら無かったのは普段から動いていたからだろう。運動中に剥離するなんていう話はナーシアも聞いたことがある。
ただ少し、思うことはあるのだ。
もしもきちんと痛みを感じて、処女膜もあったのなら―――もう少し年頃の少女が描くようなロマンチックな雰囲気で行為に及べたのだろうかと。
論じるのも意味のない過程であり既に事は終わっている。だからこれはただの妄想だ。
だけど、もしもそうならば……
「……ま、私たちにはこっちの方が似合いね」
「ん? 何か言ったか」
「何でもないわ。それよりも、さっさとこのダンジョンを抜けましょう」
「おう」
消える焚火を背に二人は暗闇の中へと姿を消す。
未だに燻り続ける火の粉は、ナーシアの胸中を現しているようにも見えた。

Last modified:2012/04/08 21:30:19
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