Create  Edit  Diff  FrontPage  Index  Search  Changes  History  wikifarm  Login

36-484

ゲーム:ウィッチクエスト(WQ6本目)
レス数:8+1
 分割:前後編の後編。
エロ度:和姦。挿入なし。男同士注意。
    エロシーンの分量が、それ以外の分量未満である。


 ああ、そうか。天啓のように閃いて、僕は途端に冷静になる。
 魔法で男に化ければ――しかもこの僕に化ければ――僕のエッチなイタズラ
から逃れられる、とでも彼女は考えたに違いない。
 なるほど、ナイスなアイディアだ。かなりビックリさせてもらった。

 でも、……それだけだ。

 くどいようだが、僕にはこの森を守る務めがある。どんなに彼女が恋しくて
も、恋情を理由にして僕がそれを捨てることはない。
 そしてまた、彼女には彼女の生き方がある。どんなに彼女を愛していても、
愛情を理由にして僕が彼女からそれを奪うわけにはいかない。
 いつだって、僕は彼女が会いにきてくれるのを待つだけの男だ。ある日突然、
彼女が僕に愛想を尽かして、そのまま二度と訪ねてこなくなっても、それでも
僕は彼女を待ち続けることしかできない。
 だからこそ、こうして彼女と一緒にいるときぐらいは、僕が主導権を握って
おきたいのだ。そのためには、『たかがこんなこと』ぐらいで怯んでなどいられない。

 僕が混乱していたのは、ほんの数秒のことのはず。うりうり、とタコチュー
みたいに唇を寄せてくる“僕”を、くるりと前後反対にして一瞬で水着を引き
ずりおろし、生の尻を剥き出しにした。“僕”の声音で黄色い悲鳴が上がるの
を、彼女の声音に脳内変換しながら、
「男を相手に、優しくしてあげるつもりは毛頭ないよ」
 暴れる身体を、無理矢理に押さえつけた。
「さぁて、男同士なら、勿論こっちを使うよな?」
 そのまま中へ埋め込んでやってもいい、ぐらいの力加減で、“僕”の菊門に
親指を押し当てる。
「ダメーっ! 嫌ーっ! 絶対に嫌ーっ!」
 男に強姦されて“僕”がどんな表情をするものなのか、想像するとゾッとし
ない。が、それを直接は見なくても済むように、僕は“僕”の背中側から襲い
掛かったのだ。
「指じゃあ嫌かい? それなら、」
 次に拳を押し当てる。
「フィスト・ファックってやつの方が君のお好みかい?」
「もうっ!」
 あっという間に、彼女が元の姿に戻った。憤然と怒鳴る。……お尻まるだし
のままで。
「どうしたらそーゆーイジワルをやめてくれるのっ!?」
「んー、そうだなー……」

 水着をきちんと穿かせてやってから、僕は最愛の恋人をゆったりと抱き寄せ
た。意外と素直に、彼女は僕の腕の中。こういった温かなふれあいは、彼女も
望むところだからだ。よくわかっているくせに僕は、わざわざ彼女にエッチなイタズラをする。
 何故って、それはつまり、彼女のリアクションが楽しいからだ。
 要するに、彼女があまりにも可愛すぎるのが悪い。
「……来世までには考えておくよ」
「死んじゃえ、ばぁか」
 ぷにぷにの頬を僕の胸に添えて、彼女は不貞腐れたそぶりをしてみせた。

―〜―〜―

「好奇心から訊くんだけどさ」
 再び暖を取るために、川から岩へと二人で這い上がる。
「魔女の箒って、どのくらいのスピードが出るんだい?」
「さあ?」
 彼女は、何を訊かれたのかわからない、みたいなきょとんとした表情。
「ほうきには、自動車みたいにスピードメーターなんて付いてないもん」
 ちなみに、自動車のスピードメーターはタイヤの回転に基づいて車速を測る
ものだから、箒に搭載しても全く意味がない。
「じゃあさ、地上から静止軌道の通信衛星まで行くのに、何日ぐらい掛かる?」
 36000キロメートルを真っ直ぐ飛んだとしても、時速100キロなら不
眠不休で15日だ。
「あたしは行ったことないし、個人差があると思うけど、さっき言ってた友達
は、大体1時間ぐらいで着くそうよ」
 たったの1時間だって? 音速が時速1200キロメートル強だから……。
「マッハ30!?」
 人工衛星を打ち上げるのに必要なスピードは最低でもマッハ23だという。
つまり、魔女の箒はロケット並みの推進力を有する計算だ。
 僕があんまり仰天したせいだろう、逆に彼女が僕に質問した。
「マッハ30って、速い?」
 音速の30倍、と説明してもピンときてもらえないだろうから、僕は情緒的 に回答した。
「普通じゃ考えられないくらい速いよ!」
 彼女の表情がパッと明るくなった。
「すごいわ、あの子。流石はプロね」
「いやプロとかアマとかそーゆー問題じゃないだろ」
「《高く飛ぶ》のは得意だけど、《長時間飛ぶ》のは苦手な子だから、その分、
《速く飛ぶ》必要があるんだわ、きっと」

 なんだか、無駄に日常的な次元で、やたらと非日常な会話をしているような気がする。
「それだけ速けりゃ相当なGだろうし……」
「Gってゴキブリ?」
 違う。確かにそーゆー隠語はあるけれど、この文脈で、それはない。むしろ
あってたまるかと言いたい。
「マッハ2でも紙が燃えるほどの摩擦熱が生じるっていうから、マッハ30と
もなれば……」
「15倍の紙が燃えるの?」
 その発想はなかったわ。
 彼女の素っ頓狂な物の見方は、それだけにとどまらなかった。
「でも、平気なんじゃないかな? 《飛んでも(猫も)寒くない》ぐらいなんだもの」
「それは寒さしのぎの能力じゃなかったっけ?」
「だって温めるか冷やすかの違いだけでしょ? 逆さにすればいいのよ」
 何を逆さにするんだ、何を。
「よーく考えてごらん。冬は寒ければ服を何枚も着込めばいい」
「うん」
「だけど夏は服を脱いだだけじゃ暑さしのぎにならないんだよ。全裸より、綿
シャツを着ている方が、実は涼しいんだ」
 何故ならば、発汗を利用して体温を下げるためには、汗が気化し易い服を身
に着けている方が有利だからである。
「む〜」
 彼女は不満げに唸ったが、結局、黙り込んだ。
 僕は暫く待つ。彼女が何を考えているのか知らないけれど、その結論が出る
まで待ってあげてみる。
 ややあって。
 勢い込んで彼女が反論。
「でもほら、プラグを逆に差し込んだら熱いのが冷たくなるし!」

 訳がわからない。

 根気よく話を聞きだすと、どうやら彼女はペルチェ素子を使ったヒートポン
プのことが言いたいらしかった。携帯用の温冷庫なんかに利用されているやつ
で、もしも彼女が見知っている物が、電源コードを直流電源に繋いで駆動させ
るタイプなら、『発熱と吸熱とを切り替えるために、ペルチェ素子に印加すべ
き電流の向きを逆にする』作業が、単に『プラグ(のプラス側とマイナス側と)
を逆に差し込む』作業に見えたのかもしれない。
「あのね、それはね、」

 基本的に小学生程度の理科知識しかない彼女に、ペルチェ素子の原理を説明
するのは骨が折れた。
 ウィッチたちは、ロクに学校に行っていない者が大半なのだと聞く。ご多分
に漏れず、彼女も最終学歴は小学校だ。けれどそれは仕方のないことだろう、
13歳の若さで自活を始めるのがウィッチの習わしで、のみならず、大魔女と
かいう上役の命令が下れば折に触れてボランティアもこなさなくてはいけない。
となれば、生活に直接関係しない勉強をする時間なんてそうそう取れないはず
だし、それなりに興味が湧かない限り、自主的に勉強しようなんて気にもなら
ないだろう。
 ゆえに、曲がりなりにも大学を出た僕から見れば教養レベルの学識が、彼女
からはすっぽり欠け落ちていることはよくあることだ。
 そのためか、
「やっぱりすごいなぁ……」
 きらきらした表情で、彼女は僕を見つめる。
「色んなこと知ってて、本当にすごいなぁ……!」
 彼女からの尊敬の眼差し。それが少し面映ゆくて、とても心地がよくて。
「水泳が上手で、頭もいいなんて、ズルいよ」
「そんなことないよ」
「そんなことあるよー。ね、もっと面白い話をして?」
 こうして僕は、今日もまた衒学者になる。一般的なエアコンに利用されてい
る冷媒レヒート式ヒートポンプの説明をしながら、こんな会話を交わしている
ウォーロックとウィッチの恋人同士は世界に何組ぐらいいるのだろう、と埒も
ない思いを弄んでいた。
「……というわけ。わかった?」
 一連の講義の後、彼女の理解度を確認。
「うん、だから、逆さにすれば熱いのと冷たいのとが逆になるのよね」
 徒労感と共に僕は後悔した。そもそも熱とは何なのか、を彼女に教えるべき
だったんだ。ああ、僕の馬鹿。

―〜―〜―

 少しばかり日が傾いてきた。光陰矢の如し。楽しい時間はなおのこと。
 天然の日時計は、夕方にはまだまだ遠いことを示している。とはいえ暑さの
盛りを過ぎてしまえば、この界隈は早々に涼しくなる。彼女に風邪を引かせる
わけにはいかないから、川遊びはこれで切り上げて、家でのんびりするに越し
たことはない。
 そのとき、浮き輪と共に川面のクラゲと化していた彼女が、ふと空を見上げた。
「あ……」
 何を見つけたのか、小さな声を立てる。

「どうかした?」
 僕は彼女の傍に寄り、その視線を追った。が、ポッカリと白い雲が流れてい
く、至極普通の景色しか見えない。
「UFOでも飛んでた?」
 軽い冗談口。
 返事はなかった。
 その代わりのように、きゅ、と彼女が僕に抱きついてきた。浮き輪越しに、
精いっぱい腕を伸ばして。
「……どうしたんだい、急に」
 子供でも宥めるように僕は、彼女の背中をトントンと叩いてやる。 「合図が……あったの」
 訥々と、彼女が語る。
「お仕事、終わった、って。あたしも、そろそろ、行かなくちゃ……」
 明日までは、僕と一緒にいられるはずだった。それは、友人との待ち合わせ
が、明日の約束だったから。
 けれど、彼女の仲間のウィッチは、思いのほか早く人工衛星のメンテナンス
を済ませてしまったらしい。大体、ウィッチのボランティアは、困っている人
のお手伝いが主な内容だそうだから、一刻も早く現場に駆けつけた方がいいに
決まっている。
 それはそれとして、地上の彼女と大気圏外の友人とが、どういう手段で連絡
を取り合ったのか、僕には全くわからなかった。十中八九、ウィッチの魔法な
のだろうが……。
 もしも、それがこの森に直接的な危害を及ぼすようなものなら、魔法であれ
魔法以外であれ、僕は必ずそれを知覚する。けれども、僕に不都合を強いる程
度の――なにしろ、予想外に早く彼女と別れなければならない――ものを知覚
するような能力を、あいにく、僕は持ち合わせていない。
 もう少し時間的な余裕があるのなら、そのあたりのことも彼女に訊いてみた
かった。ウォーロックの僕がウィッチの魔法に興味を示すのが彼女にとっては
とても喜ばしいことのようで、そういった類いの問いには、いっそ誇らしげに
答えてくれるからだ。そんな彼女を間近で眺めることは、僕の喜びの一つでもある。
 ……でも。
 何も言わずに僕は、彼女の頬に掌を添えて、そっと顔を上げさせた。
 くちづけ。
 川水で濡れた唇を触れ合わせる。僅かに離れて、再び触れ合う。彼女の上唇
を、次は下唇を、僕の両唇で挟み、揉む。
 何度も何度も、繰り返し、くちづけ。
 最初の方こそ大人しく僕のキスを受けていた彼女は、やがて僕に釣られるよ
うにして、自分の方から、僕の唇を求め始めた。僕の上唇を、次は下唇を、彼
女の両唇で挟み、揉む。

 柔らかな感触が官能に火を点ける。身体の奥から燃えてくる。とはいえ状況
が状況だし、場所柄も場所柄、時間も時間だ。間違っても、今ここで理性のタ
ガを吹っ飛ばしてケダモノになるわけにはいかない。
 と、内心で自制している僕の努力を知る由もなく、彼女は僕とのキスに夢中
のようだった。珍しく、自分の方から僕の唇を割り、舌を差し入れてくる。
 彼女は僕の歯列をなぞり、歯茎を舐め、歯裏をつつき、上顎をくすぐり、下
顎へ唾液を伝わせ、尖らせた舌先で僕の舌先を擦り、広げた舌全体で僕の舌全
体を包み、……。
 その仕草は、まるで真珠でも磨くかの如き慎重さだったが、その手管は、僕
のそれにそっくりだった。他のやり方を知らないのか、それともこういうのが
僕の好みだと思っているのか。……僕は苦笑に似た幸福感を覚えた。  ――なら、こんなのはどうだい?
 いきなり僕は彼女の舌を、僕の喉の奥の方へと思いきり吸い込んだ。
「っ!?」
 驚きで身を固くする彼女の舌に歯を当てて、強弱を変えながら噛む、噛む、
噛む。
「んんーっ!」
 痛かったかな、と不安になって、僕は彼女を解放した。はぁっ、と荒い息を
吐く彼女は、……おや。ぽうっと赤くなって、意外ととろけた表情だ。
 またくちづけを交わして、今度は彼女の唇を、上下の前歯で甘く噛む。
「ヤ」
 軽い拒絶の言葉。少し僕から身を離す彼女。
「なんか、食べられちゃいそうで怖い」
「食べたいな」
 僕は少しだけ本音を漏らす。
「頭からバリバリ食べちゃいたいよ、君を」

 かつて、僕は彼女を忌避し、嫌悪していた。
 所詮、僕はウォーロックで、結局、彼女はウィッチなのだ。骨身に染みつい
た偏見は、そうそう拭い去れるものはない。
 彼女の姿を見るのも、彼女の声を聞くのも、非常に不愉快だった。

 でも、あるとき、気付いてしまった。僕が彼女を不愉快に思うのは、彼女を
好きになりたくないからだ、と。
 万が一、彼女を好きになってしまえば。彼女が欲しくなる。独占したくなる。
 僕と彼女が、二人一緒に、同じ“時間”を生きる。――そんな未来を望んでしまう。
 それがわかっていたから僕は、彼女を忌避していた。
 それができないとわかっていたから僕は、彼女を嫌悪していた。
 忌避し、嫌悪しようと努力していた。

 彼女を僕の“時間”に縛り付けることは、すなわち彼女からウィッチとして
の力を奪い去ることだと――彼女を、『彼女ではない彼女』に変えてしまうと、
わかっていたからこそ僕は。

 苦しかったなぁ。
 あの頃は、本当に苦しかった。

「いいよ。食べちゃっても」
 彼女が、僕の胸に顔を伏せた。
「頭からバリバリ食べちゃってもいいよ」
 ああ。それはなんと素敵な申し出だろう。
 もしも僕が君をすっかり食べてしまえば、君は真の意味で僕と“ひとつ”に
なってくれる。最早、二度と離れることはない。

「嘘だよ」
 僕は彼女の額にくちづける。
「そんなことするわけないだろう?」
 彼女は、どことなく拗ねたような眼差しで、僕を見上げた。
「じゃあ……今日はもう、えっちなこと、しないの……?」
 一瞬、僕は惚けて、…………ちょっと拍子抜けした。
 『食べる』。その言葉を彼女は、セックスの比喩だと受け取ったらしい。僕
が彼女を殺して、字義通り食するのだとは考えなかったのだ。
 まあ、当たり前といえば当たり前。それが常識的な解釈というものである。
「そうだよ」
 僕は、大人の態度を取り繕った。
「そろそろ出掛けなくちゃいけないんだろう?」
「う〜」
 彼女が唸る。
「う〜。う〜。う〜」
 唸りながら、グリグリと僕に頭を擦りつけてくる。
 ――やれやれ、この甘えっこさんめ。
 とても嬉しい気分で、僕は溜息をついた。

―〜―〜―

 彼女と一緒に旅ができたら――それは叶うことのない願い。
 彼女が僕と暮らしてくれたら――それは訪れることのない未来。
 ナンヨウスギは羽ばたかない。鳥は大地に根を張らない。そんなことはわか
りきっている。
 けれども。それでも。

 大空を自由に飛ぶ鳥が、敢えてナンヨウスギの木の枝で、ほんのひととき、
羽を休めるのならば。

 充分だ。
 それで充分だ、と僕は思う。

―〜―〜―

 日が没するのを待っていたかのように、突然の吹雪が森を見舞った。初冬か
ら真冬へ、いきなり切り替わったかの如き気温の低下。油断していた、流石に寒い。
 僕はフードを目深に被り直し、手にした杖の先に魔法の明かりを灯した。
 ――一旦、小屋へ戻ろう。先に夕食を取って、腹に何か温かいものを入れて
から、見回りに向かえばいい。
 むしろとっとと蒲団を被って寝たいくらいの気分だが、経験上、こんな夜に
は不慣れな旅人が風を避けようとして森へ迷い込み、却って遭難するものだ。
僕の守護すべき場所で、行き倒れを量産するわけにはいかない。
 口慰めを兼ねて、ポケットの中から飴玉を取り出す。ジンジャーキャンディ。
身体がポカポカするよ、という、菓子屋の主人の宣伝文句を思い出しながら、
甘さと辛さの塊を頬張る。
 ひょい、と彼女が現れた。ギョッとする暇もあらばこそ。
「えへへ〜、来ちゃった」
 数ヶ月ぶりの御無沙汰で僕に笑い掛ける彼女は、この寒空にますます寒そう
な白いユニフォーム。
「でも、ゴメンね、すぐ行かなくちゃ」
 箒から降りもせずに、きびすを返そうとする彼女を、
「待った!」
 僕は咄嗟に捕まえて、強引に唇を盗む。
 抗いは一瞬。すぐに彼女は大人しくなった。
 少しだけ口を開けるよう、僕は舌先で彼女を促す。それに彼女が応えたとき、
ころりん、と僕から彼女へ、生姜味の飴玉が転がり込んだ。
 彼女は目を丸くして、自分の口元を指で押さえる。
 今度は、僕が彼女に笑い掛ける番だ。
「身体がポカポカするだろ?」
「うん……でも、それは……」
 恥ずかしげに赤くなって、彼女は言葉を濁す。
 僕も身体がポカポカする。でも。
 それは、キャンディのせいじゃないよ。

Last modified:2011/12/23 21:34:11
Keyword(s):
References:[リスト/カテゴリ別/ウィッチクエスト]